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サ責に求められるもの

第4回 役割を意識した対応       2016/11/18

 サービス提供責任者(以下、サ責)には、「サ責」と「ヘルパー」の2つの役割が課せられていることは周知の事実です。しかし、サ責が抱える課題の1つとして、サ責業務とヘルパー業務のバランス問題が挙げられると私は考えています。実際、サ責の中には、「人材不足(ヘルパー不足)の影響で、思うようにサ責業務が行えない」といった悩みを抱えている人も多いようです。

 通常、サ責は頭の中で「これはヘルパーの仕事」「これはサ責の仕事」と整理して利用者と向き合うようにしていますが、役割を混在させた対応をうっかりとってしまうこともあります。立場を明確にしないこのサ責対応は、トラブルを引き起こす原因ともなるので注意が必要です。

 居宅支援で実際に起きたいくつかのトラブルを分析してみたところ、サ責が2つの役割をうまくコントロールできなかったことに起因するものがありました。具体的に例をご紹介すると、担当ヘルパーの代わりにサ責が訪問してサービスを提供した際、サ責として利用者に助言するも、利用者は「ヘルパーが余計なことを言った」と憤慨したケースです。

 このようなトラブル事例からも分かるように、利用者は目の前の人がヘルパーなのかサ責なのかを理解していない事実があります。つまり、支援場面における役割認識のズレがトラブル要因になっているのです。

 これらのトラブルを回避するには、自分の発言が1人のヘルパーとしてなのか、サ責としての立場で言っているのかを利用者に認識してもらうことです。発言の意図と自分の立場を明確にしたうえで利用者と向き合うことが、トラブルを回避する方法の1つであると考えます。ただし、理解力の低い利用者の場合は、ヘルパーの立場で利用者と向き合いましょう。サ責として感じた課題は、後日ケアマネージャーなどと共有や協議し合いながら課題解決を一緒に目指すとよいでしょう。

 サ責は2つの視点を持つ必要があり、つまり、役割を上手にコントロールすることが求められています。自分の役割を意識しながら利用者と向き合い、役割を意識しながらコミュニケーションを図ることが2つの責務を円滑に進めるポイントではないでしょうか。

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コラムニスト紹介

松井 奈美

植草学園短期大学 教授

プロフィール

東洋大学大学院福祉社会システム専攻修了。千葉県習志野市福祉課に入庁し、介護職員として勤務。浦和短期大学講師、新潟医療福祉大学講師、日本社会事業大学社会福祉学部講師、准教授、同実習教育研究・研修センター副センター長などを経て、平成25年4月より現職。 主な研究領域は在宅介護実践論、チームケアにおける連携、訪問介護サービスの質の向上に関する研究等。

『知っておきたい在宅ターミナルケア』(社福協)のほか、『改訂版サービス提供責任者の必須知識』(社福協)ではサービス提供責任者(サ責)における実務内容の項を執筆するなど著書、論文多数。

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