ご利用者さんとの関わり方
その方がどうしたいのかを尊重したケアが必要なんだと思います。
―『シルバーピア』での竹島さんの具体的な仕事内容について教えてください。ここは60世帯あると伺いました。そこで居住されているご利用者さん全ての情報を竹島さんが管理されているのですか?
そうですね。介護保険外の方、ケアマネのついている方・ついていない方、様々な方が居住されています。その時ケアしたヘルパーからあがってきた報告を常に確認し、必要であれば全てに指示を出すので、ご利用者さんそれぞれの背景であったり、ご家族との関係性にいたるまでの情報はきちんと把握するようにしています。1つ1つ独立した居住スペースではありますが24時間体制でサポートしているので、安心感はあるんじゃないですかね。受付のステーションは常に電気をつけているので、よくご利用者さんが相談しにいらっしゃったり・・・。たまに職員室っぽいなって思います(笑)。
入居者各階ごとにテーマカラーが違う。グリーン、イエロー、ピンク・・・。
―施設でもなく訪問介護でもなく、集合住宅って特殊なイメージがあるのですが、実際ここで働くスタッフに指導される際、何か注意されている点とかありますか?
「慣れてはダメ」と常に言いますね。ついつい自分の生活スタイルでケアしてしまいがち。コンコンとノックせず入室したり、布団のかけ方やカーテンの開け方1つとっても。「今のカーテンの開け方、寝ているご利用者さんに対してどうなの?」とか、気になったらすぐ注意します。他人のおうちの鍵を預かっている、という自覚を持つことはすごく大切ですね。あとは、その人らしさを忘れない生活をしてもらうことでしょうか。ご利用者さんには「5年後は人前に出さないでね」とおっしゃられる方もいるんですよ。私たちからしたら、みんながいるホールへ…と思うんですけれど、そうじゃないんですよね。こちらの都合を押し付けず、その方がどうしたいかを尊重するケアをしていかなければいけないんだな、とよく思います。
洗濯を干すスペースも広々。ここからも諏訪湖がキレイにみえます。
―どうしてもケアしていくうちにその方への情もわいてしまって、自分ならではの目線になってしまったりしますものね。
そうなんですよ。過去、癌のご利用者さんをみさせていただいたときに、急変でやむを得えず救急搬送したケースがありました。「嫌だ嫌だ」と病院を拒み続けられて「またここに帰りたいんだよ」と最後強く手を握られたんです。もう、その時のことは今でも忘れられません。その方は次の日病院で亡くなられたのですが、その出来事は職員に強い衝撃を与えました。「あのとき連れていかなければ」と情が強い職員ほど・・・ね。もちろんその気持ちはよく分かります。でもじゃあずっとついてみてあげられるのか?と問われれれば無理です。って。そこを納得し合うには時間がかかりました。それ以来、医療依存度の高い方をお受けする場合は、事前にある程度の予測をたてるようにしました。この方は、こうなって、最終的には救急車になる・・・だからこういう場合はすぐに連絡しよう、など道筋をたててそこに沿うようなケアをしていくんです。そうすることでヘルパーさんに安心感を与えてあげるのが私の役目かなと。それが、最終的にはご利用者さんに対しての責任にもつながるんだと思うんですよね。
編集後記
竹島さんがお話しする横で、所長の井上さんが静かに聞きながら時には突っ込みやフォローが入る、という3者面談のような取材だったのですが(笑)、お互いのことをよく理解し、認め合っていなければ出ないような発言も多々あり、お二方の間に流れる信頼関係の厚さを垣間見た気がします。一方、井上さんからは介護への様々な啓蒙活動や新規取り組み、今後の展望について伺うなかで、その穏やかな物腰に秘めたる情熱についつい引き込まれそうになる場面も(笑)。もうちょっと、もうちょっと・・・と前に進んでいく竹島さんの背中は、実はとても大きい背中なのでは?と思わせてくれた今回の取材でした。
今回、取材にご協力いただいた竹島美樹さん、所長の井上淳哉さんはじめ、『聖母の会福祉事業団株式会社』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。
「へるぱ!」運営委員会一同