へるぱ!

今回のヘルパーさん

第73回 宮下宏子さん

長野県小諸市御影新田にある『ことぶきの家 小諸・寿園介護ステーション』でサ責として働く、宮下宏子さんにお話しを伺いました。

介護の仕事に就いてみて

色々な方と出会い、お付き合いさせていただき、とても感慨深いです。

―宮下さんは、どんな経緯で介護職に就かれたのですか?

姑が倒れて右片麻痺になったのを機に、佐久で同居することが決まり、何か自分に出来ることがあればとヘルパー2級の資格をとったのが最初です。

―それまでは介護とは全然違うお仕事を?

はい。事務職でした。学校へは仕事のない週末を利用して半年かけて通いました。

―資格を取得したら介護職に就くことも視野に入れていましたか?

いえ、最初は姑の介護が目的だったので、そこまでは…。でも、実習の在宅同行研修で「自分にもできるかも」と思えたことは大きな気持ちの変化でした。当時は身体よりも家事援助が主だったので、料理や掃除、主婦の延長線のような仕事内容に「普段家でやっていることにそう変わりはないかも…」と思えて。何より、ご利用者さんから「来てくれてありがとう」「キレイにしてもらって良かったよ」と言っていただけたのが、とても嬉しかったんですよね。『介護って人の役に立つ仕事なんだな』と実感できたことで、より興味が湧いた感じです。

―そこからどんな経緯でお仕事に?

私の場合、資格修了間近に講師の方から「良ければ働いてみないか?」と仕事先を紹介していただいたことがきっかけです。背中を押されて、じゃあやってみようかなと。ただ、まだ子供が小さかったので、最初は準社員で。その後、1ヵ月経ち、この仕事を続ける自信が持てたのと家族の理解を得て夜勤もある社員に…という経緯です。

―介護職について、どんな印象を持たれましたか?

当時はとにかくがむしゃらでした。今みたいにカンファレンスやファイルから情報共有することが定着していない時代です。小刻みにシフトが組まれていたので、ご利用者さん宅に行って、サービス提供して…の繰り返し。また、先輩が厳しくて、「ご利用者さんの前でメモをとるなんて失礼だからやめなさい。プロなんだから!」と怒られたこともありました。自分で虎の巻みたいなものを作り、必死に頭に入れて…みたいな努力もしましたよ。大変でしたが、そうした経験が、ご利用者さんの些細な変化にも気付ける、観察力みたいなものを養うことにも繋がったのかな、と思います。

―では、年数を重ねるごとに、この仕事にやりがいをより感じられるように?

そうですね。この仕事をしていなければ出会わなかった方達とご家族も含めてのお付き合いをさせていただく、というのはとても感慨深いものです。人が好きなので、その一期一会を大切に、そして次に繋げていけるという部分では、とてもやりがいのある仕事だな、と思います。

―ご利用者さんにも色々なタイプがいらっしゃると思うのですが、その点で苦労された経験などは?

辛いことも多々ありますが、どこかでプラスマイナスになります。門前払いや私が悪い人のように対応されたりすることもありましたが、一方で、すごく感謝もされる。それで帳消しになっちゃうんですよ。また、病気をお持ちの方だと、明日急に「おはよう!」と言えなくなるこも。次に必ずしも元気な状態で会えるとは限らないという思いが念頭にあるので、不愉快な気分にさせたのであれば、「きちんと出来ていなかったですね。申し訳なかったです」と謝るなどして、その場で関係性が良くなるように努めます。

サ責として

円滑に進めるためにも、スタッフとのコミュニケーションが大切です。

―宮下さんは介護業界で働いて10年以上。今働いている『ことぶきの家 小諸・寿園介護ステーション』以外の事業所でもサ責経験あり、とのことですが、サ責として何か心がけていることってありますか?

介護って日進月歩で、新しい技術や用具の取り入れもあり、自分の考えに固執しすぎるのは良くないと常々感じています。情報収集して新しいことを実践していく柔軟性も必要。以前働いていた事業所では「介護は研修なきにしてあらず」と歴代の会長達がおっしゃっていました。研修に行けば、『ご利用者さんにとって負担が少なく、介助側の体も楽』といった介助方法や看取りについてなど、得られる情報もいっぱいです。色々な研修に積極的に参加し、より良い介護に繋がる情報や技術を得て、スタッフにも共有できるよう心がけていますね。

―スタッフを指導するという点ではどうですか?

過去、私はいくつか事業所を転々としてきたのですが、自分の介護に対する想いが、必ずしも働くスタッフみんなの想いとイコールではない、ということを学びました。自分の量りにかけて、ヘルパーやスタッフの技術を統一させようと必死になっていたんです。1人空回りし、結果スタッフを潰していたこともあったんでしょうね…。でも『ことぶきの家 小諸・寿園介護ステーション』に来て、部長に「底辺に合わせなさい」と言われてハッとしました。自分のレベルにスタッフを押し上げるのではなく、底辺に合わせてみんなのスキルを徐々に上げていけばいいんだと。焦らず、ゆっくりでいいのかも…と思えたのは、私にとって大きい変化。まずは人として信頼してもらえるよう、スタッフとのコミュニケーションを大事にしていきたいです。

―介護はチームワークですものね。

本当にそうです!円滑に進めるためにも、互いが気軽に声をかけやすい環境でなければいけません。最近はスタッフと食事をしている時に「最近どう?」なんて話しかけて、何気ない会話も楽しんだりしています。

―逆にチームとしての改善点などは?

先程のコミュニ―ケーションに通じる話しですが、スタッフ同士の声かけが少ないと感じています。他の用事をしていて、ステーションからスーッといなくなるスタッフもいたり。「この訪問に入るので、こっちのことをお任せしていいですか?」など、もっとお互いに声をかけ合っていくことが今後の課題かな、と思います。

「寿園介護ステーション」について

他部署と連携しながら対応できるのは、とても有り難いこと。

―こちらの『ことぶきの家 小諸・寿園介護ステーション』について少し詳しく教えてください。

ここは、住宅型老人ホーム『ことぶきの家 小諸』の施設内にあります。H25年4月にできて、比較的新しい施設です。訪問以外に、デイや訪看、福祉ショップ、介護タクシーなどがあり、1Fがデイ、2F&3Fが有料老人ホーム。46床、46床の全部で92床。私は3F担当になります。

―訪問は施設内だけですか? 外部は?

今2軒だけ外部訪問もしていますが、基本は施設内です。会社的には今後、外部も増やしていきたいようですが。

―宮下さんは外部訪問の経験もおありですが、施設内の訪問と違うなと感じることなどは?

外部はヘルパーが担う責任がより大きいです。ご自宅に伺ったら意識がなかったとかもありますし。事業所やご家族に連絡がとれるまで、あれこれ考えて不安になることもありました。でも施設内で困ったことがあれば、誰かがすぐにヘルプに入れます。ケアマネやナースが常駐しているので、身体的な相談もできますし、何かあれば、他部署と連携できる環境であることは、とても有り難いことだと感じています。

―連携がとれる点は強みですよね。他に何か“ここならではの良さ”って何かありますか?

あっ、『ことぶきパスポート』!

―『ことぶきパスポート』!?

そうです。会社の歴史や理念が書かれてある手帳のようなもので、全職員に配られます。仕事への反省点や目標などを各々書き込み、1年経ってそれが実践できたかなど振り返る機会が設けられています。一方で会社側はそれを回収して、その人の想いや考えを知ることも。他にも給料袋に紙が入っていて、改善点などを書いて会社上層部に伝えることもできます。自分の考えや想いを吐き出しやすい環境であることは、働いていてこちらも希望が持てますよね。

―会社全体で働きやすい環境になるよう努めているのですね。

『ご利用者さんもここに入居して良かった。スタッフもここに勤めて良かった。と言える施設にしたい』というのが会社トップの考えで、福利厚生も充実してきていますし、今後ますますいい方向に変化していくのでは?と期待しています。

―最後に、宮下さんの今後の展望をお聞かせください。

『信頼される自分になっていきたい』これが当面の目標です。ご利用者様、ご家族様、スタッフ、上司そして他事業所、色々な方と関わるなかで、「宮下に任せれば大丈夫」という存在になっていきたいです。

編集後記

新設されたばかりでとてもキレイな施設『ことぶきの家 小諸』。随所に木のぬくもりを感じ、大きな窓からは日光がさんさんと。とても気持ちのよい空間が広がっていたのが印象的。デイサービスのブッフェや施設内通貨など、面白い取り組みも多数あり、“ご利用者さんを楽しませたい”という会社&スタッフの意欲も感じられ、施設全体にはいい空気が流れていました。「スタッフとコミュニケーションをまめにとり、チームワーク向上に努めたい」とおっしゃった宮下さん。今まで以上に活気あふれるステーションへと進化していくであろう今後が楽しみです。

今回、取材にご協力いただいた宮下宏子さんをはじめ、『ことぶきの家 小諸・寿園介護ステーション』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。

「へるぱ!」運営委員会一同

事業所紹介

◆有料老人ホーム ことぶきの家 小諸
寿園介護ステーション

〒384-0808
長野県小諸市御影新田字池ノ上2090-1

TEL.0267-22-7711
FAX.0267-22-7712
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事業所紹介

宮下 宏子さん

有料老人ホーム ことぶきの家 小諸
寿園介護ステーション
サービス提供責任者

勤務年数:約2年/介護歴:約13年

趣味

ガーデニングやお菓子づくり。

今の時季であれば、クリスマス仕様にプランターで寄せ植えをするなど、家にグリーンは欠かさないようにしています。また、休日はお菓子やパン作りをしてリラックスしますね。

最近のマイブーム

サイフォンで入れたコーヒーとともに朝をゆっくり過ごすこと。

早起きして、お弁当作りや洗濯も終え、サイフォンでコポコポと入れたコーヒー片手に、手作りしたお菓子を食べる朝の時間は、私にとってホッとできる、幸せなひとときです。

 

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