へるぱ!

今回のヘルパーさん

第72回 前坂和美さん・森畑靖子さん

岐阜県高山市にある『高山市福祉サービス公社指定訪問介護事業所』でチームリーダー兼サ責として働く、前坂和美さん&森畑靖子さんにお話しを伺いました。

過去20年間、介護業界の変化について

3年おきぐらいに変わっていく、とても動きのある業界でびっくりしました!

―前坂さん、森畑さん、それぞれ、介護職に就いたきっかけを教えてください。

前坂-私は子供を保育園に預けるのを機に働こうと思い、たまたまチラシで募集があったこちらに応募したのがきっかけです。当初は9時~15時で働けるパート職を探していたのですが、こちらは正社員採用でフルタイム。いざ採用が決まった際には家族会議を開き、家族が「協力するよ」と言ってくれた一言で決意を固めた感じです。

森畑-私は介護職に就くまで色々な職を転々としていました。そんな時、「親から社会福祉協議会の用務員募集があるよ」という話をもらい、そのチラシを見に実家へ。そしたら介護職の募集も同時にしていて。自分が興味があるのは「老人介護の方だ!」という強い気持ちが芽生え、親の反対を押し切ってそちらを受けました。当時は競争率もすごかったので、どうせ落ちるだろう…ぐらいの気持ちでしたが、受かってしまって。…で今に至ります(笑)。

前坂-そうそう。その時代ってこの職が花形みたいな感じで、募集にすごい人が集まったんですよ。今では想像できないですが、私の時は採用倍率20倍でした。

―それはすごい! 現在の人材不足が嘘かのような話ですね。森畑さんは、そもそもなぜ、介護の方を強くやりたい!と?

前坂-私、幼なじみがお年寄りだったんです(笑)。子供の頃、「誰々さんの家に遊びに行ってくる」というのが、おじいちゃんちやおばあちゃんちで。祖母と同居していたこともあり、自然と遊び相手が年配者に。とても身近な存在でしたから、やるなら、老人介護をしたいと思いました。

―お二人とも介護歴は約20年ほどですが、介護保険が始まる前、措置の時代からということで、福祉の移り変わりを色々見られてきたのでは?

前坂-そうですね。すごく動きのある業界だったので入ってびっくりしました。約3年おきに色々なことが変わり、付いていくのにも必死。そうした国の大きな流れに自分が飲み込まれていること自体もすごいなあと思ったりしましたよね。

森畑-私は何も知らないままポンとこの業界に入ったので、とにかく見よう見まねで覚えて、現場で学ばせてもらった感じです。特に思い出深い出来事が入社して3年目の時。私はサ責になり、もう一人同期で入った看護師免許を持つ職員が、訪問看護を立ち上げた時期でもありました。そのタイミングで介護保険制度が変わり、『福祉と医療の線引きをしっかりしよう』という話になりまして。私なりに関連雑誌を立ち上げた同僚が机を並べて仕事をしていたので、都度話し合いながら色々決めていって…。
「ヘルパーはここまで出来ないらしい。これからは訪看を使ってもらおう」といったような話が出来たのもすごく大きくて。『医療と福祉は繋がっているけれど別物』とご利用者さんにしっかり伝えられたことは、今の仕事にもプラスに働いている気がします。

前坂-それに高山市が合併したことも私たちにとっては大きい出来事でした。町にある事業所がここに吸収・統合されたわけなので。それにあたり、色々な地域に住む方々を一手に担わなければいけなくなり…。高山市は日本一面積が大きい市とも言われていて、東京都と同じくらいの規模。山間部のご利用者さんであれば、車で1時間以上かけて行ったりしています。“広域をみる大変さ”というのもここならではかもしれません。

チームをまとめるサ責という立場

スタッフ同士、サ責同士、皆が協力し合ってこそ前に進んでいけます。

―介護領域が広範囲というのも『高山市福祉サービス公社・訪問介護事業所』ならではの特徴だと思うのですが、今、ご利用者さんってどれぐらいの人数ですか?

前坂-約500人です。その人数を7チームで分担しています。

―7チームも! チーム制ということですが、各々何名ぐらいの職員やスタッフさんが?

森畑-私のチームだと17人。各チーム15~20人で、そのうちサ責が2~3名。私と前坂はサ責兼チームリーダーでもあります。

―すごい大規模で驚きました。チーム全体をまとめていくのも大変そうですね…。

前坂-そうですね。チームの連携なくして成り立たないです。ケア前の情報伝達に漏れがないかどうか細心の注意を払いますし、予定の追加、変更、中止はしょっちゅうで、常に調整が必要です(苦笑)。今まで築きあげたご利用者さんとの信頼関係をちょっとしたミスで失わないよう、スタッフとの連絡はこまめにしています。

森畑-あと登録ヘルパーさんは直行直帰なので、週1、月1、年4回ある会議や内部研修でしっかり目的意識を共有するようにしています。以前は「個人が行けばそれでいい」といった雰囲気もあったのですが、今は集まった時に、誰かが「このご利用者さんって~」と話しはじめると全員が興味を示すようになりました。「もっとこうしたらいいんじゃない?」と活発な意見交換もあって、フォローし合える体制が出来てきたのはすごい有り難いことだなって。

―ご利用者さんはチーム内で担当制ですか?

前坂-いえ。同じヘルパーが、そのお宅にずっと行くというのはあえてしていません。1人の方に複数のスタッフが関わるようにしています。やはり1対1が長いと、ヘルパーとしてじゃない部分も膨らんできてしまうので。介護保険のなかで動くヘルパーとして慣れあいにならないよう、シフトを組む側が配慮しています。ご利用者さんにとっては、色々なスタッフが入ることで「刺激になる」と言っていただけたりもしますので、その点は前向きに捉えています。

森畑-とはいえ、入浴介助で「裸を色々な人に見られるのが嫌!」というご利用者さんもいらっしゃるので、その場合は3人ぐらいのスタッフをローテーションにしたりもしていますよね。その辺は臨機応変に対応しています。

―チームワークがものすごく大切な現場なのですね。

前坂-スタッフ同士、サ責同士、皆が協力し合ってこそ前に進んでいけると常々感じています。

森畑-信頼関係があってこそ!ですよね。

ご利用者さんとの関わり

ご利用者さんから助けてもらった経験の方が多いかもしれません。

―ご利用者さんとの関わりで、印象的な出来事って何かありましたか?

前坂-私は要介護5の方をご自宅で看取ったことでしょうか。施設などを選ばず「家で」という本人の希望が実現できた時は、本当に良かったなと思い、やりがいを感じた瞬間でもありました。訪問介護の最たる部分だなあと。あと、病気が進行していくご利用者さんとの筆談でのやり取りでは、何かを私に一生懸命伝えようとしてくれているその方の“かけがえのない瞬間”に立ち会えたことに、何だか感動してしまいました。色々なご利用者さんの大切な一瞬に出会えることが、一番のヘルパー冥利です。

森畑-私は、要介護5の方で「自分が死んだ時、夢枕に立って連れて行くから」と、ずっと言ってくれたご利用者さんのことが忘れられません。イチヘルパーにそんな言葉をかけてもらえるなんて。それだけ信用いただけていたのかなって。また、仕事で色々悩んでいた時期に、ご利用者さんから「何かあった?」と声かけいただいたことも。私としてはいつも通り振る舞っているつもりでしたが、「心の中が見えてしまっていたんだな」と反省し、「元気でいなくちゃ」と立ち直るきっかけにもなりました。そう考えると、ご利用者さんから助けてもらった経験の方が多いかもしれません。

―現場が一番ですか?

前坂森畑はい!

森畑-現場があるからこそ、やっていけるんだと思います。

前坂-介護って取り扱いが難しい題材だとは思います。よく、3Kと言われて、大変なイメージが強いですが、今私達が話したように、「この仕事っていいな。現場って楽しいな」と思える部分がもっともっと広まるといいなと常々思っています。

森畑-そうですよね。助けに行っているようで、助けてもらいに行っていると感じることもあるぐらいで。サ責になったことで、事務作業に追われてしまいがちですが、これからも現場優先でやっていきたいです。

編集後記

取材後、事務所を尋ねると、ちょうど昼食の時間でした。美味しそうな自家製弁当を各々に広げ、あちらこちらで楽しい会話が飛び交う風景に、チームワークの良さをうかがい知ることができました。

森畑さんが働く山王福祉センターと前坂さんが働く国府保険センター合わせて7チームとのことで、とても大所帯。人数が増えるほどに統制は難しいですが、そこは皆ベテラン。チームを飛び越えての会話も多く、互いのことを理解し合っている雰囲気も伝わってきましたよ。取材中では、お二人が声を合わせて、「訪問に行かないとやっていけん」とおっしゃられていたのがとても印象的です。現場が楽しくて続けていける、そんなリアルな声がもっと色々な人に届くといいな、と思います。

今回、取材にご協力いただいた前坂和美さん、森畑靖子さんをはじめ、『高山市福祉サービス公社指定訪問介護事業所』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。

「へるぱ!」運営委員会一同

事業所紹介

◆山王福祉センター 一般財団法人高山市福祉サービス公社 高山市福祉サービス公社指定訪問介護事業所

〒506-0823
岐阜県高山市森下町1-208

TEL.0577-36-2380
FAX.0577-36-2947
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事業所紹介

前坂 和美さん

国府保健センター/一般財団法人高山市福祉サービス公社
高山市福祉サービス公社指定訪問介護事業所サービス提供責任者/チームリーダー

勤務年数:約18年/介護歴:約18年

趣味

旅行

まとまった休みがあると、国内外問わず旅行へ行きます。最近では、御嶽山のロープウェイへ。2年前に行ったグランドキャニオンも良かったですね。今後も色々なところに行けたらいいな、と思います。

森畑 靖子さん

山王福祉センター/一般財団法人高山市福祉サービス公社
高山市福祉サービス公社指定訪問介護事業所サービス提供責任者/チームリーダー

勤務年数:約20年/介護歴:約20年

趣味

ソフトバレー

ソフトバレーをはじめて12年。自分のチームを持っていて、多い時は週に3回ほど練習があります。体を動かすのはいいリフレッシュになるんですよ。

 

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