へるぱ!

今回のヘルパーさん

第69回 本間 信子 さん

東武東上線の上板橋駅から徒歩10分ほどの場所にある『アップルケア株式会社』でサービス提供責任者をされている本間信子さんにお話しを伺いました。

介護の道に進んだきっかけ

祖父が回復していく過程を見て、自然と介護に興味が湧きました。

―本間さんが介護に興味を持ったきっかけは?

祖父の介護がきっかけです。両親と同居していた祖父が倒れ、目が離せない状況に。すでに実家から離れていた私も車で通える距離に住んでいたため、実家に頻繁に顔を出すようになりました。当初は介護というより、見舞う感じに近かったと思います。

―その後どうして介護の資格を取ろうと?

まず一番は、母がヘルパーになったことです。それを機に祖父の介護が本格化しました。そうした流れを見ながら、私にも何かできることがないだろうかと色々考えまして。調度、介護保険制度が変わるタイミングでもあったので、介護しやすい家のリフォーム(バリアフリーにする)を調べて、導入したり。またその頃、実家にはヘルパーさん、訪問診療の先生やリハビリの先生、訪看さんといった介護に関わる人たちが頻繁に出入りもしていました。そうした光景を目の当たりにしながら、自然と介護に興味が湧いたんだと思います。祖父の介護に役立つなら、しっかり勉強してみようかなって。でもなかなか行動に移せず、実際資格を取ったのは介護が始まって2~3年経ってからでしたね。

―資格を取ったら、それを活かして仕事をしようと思われていましたか?

いえ。当初は祖父の介護に役立つならぐらいの気持ちでした。でも周囲の献身的な介護のおかげか、祖父が少しずつ回復していく姿を見て、介護の力ってすごいなあと思ったんですよね。当初は寝たきりだったのが、最終的には自分でトイレに行けていたので。

―ご本人の努力はもちろん、その気持ちを引き出し、支える周囲の力も大きいですものね。ではその過程を見て、介護の仕事に魅力を覚えたわけですね!? 資格を取られて、いざ働くとなった際、お母様の働かれている事業所に?

いえ、違います。あえて全然知らない場所に飛び込みました。デイサービスも考えたのですが、子供がまだ小さかったので長時間働くことが厳しく、短時間でOKの訪問からスタートしてみようと。その事業所には約4年ほどいました。

―身近な人を介護するのと、仕事にするのとではまた違うと思うのですが、実際働いてみてどんな印象を受けましたか?

祖父の場合、家庭環境や性格が分かったうえで接していましたが、仕事だと、相手のことをよく知らないまま介護するので、最初は怖かったです。その方の背景を知らないまま介護するってこんなにも違うのか……と実感しまして。さらに、私より何十年と多く生きて来られた方々なので、尊敬の念も忘れてはいけませんし、そうした今までの介護とは違うギャップをすごく感じましたね。

―そうした怖さはどうやって解消を?

常にサ責に相談して、聞いてもらっていました。先輩ヘルパーもアドバイスをしてくださる方ばかりだったので、精神的にだいぶ助けられて。あとは、仕事を始めて1ヶ月目、初めての1人訪問でご利用者さんが亡くなられていた出来事があって。それを機に、この仕事をしていく覚悟を決めれたというか、腹をくくることができました。

―それはだいぶ衝撃的な出来事ですね。

仕事を始めて早々のことでしたから、余計にですよね。どう向き合ったらいいか分からず、しばらく頭が真っ白状態。立ち直るのにだいぶ時間もかかりました。でもその時も、先輩方が色々と話しをしてくださって『こういうことは今後もあり得ることなんだ』と自分なりに気付けたので、今こうして介護の仕事を続けているんだと思います。理解できたからこそ、その先に進めたんでしょうね。

訪問での4年間、デイサービスでの3年間、そしてまた訪問へ

ご利用者さんの生活環境を知ることで、見えてくるものがいっぱいあります。。

―腹をくくられて働かれた訪問での4年間。どうでしたか?

目の前のことをこなすのに必死な日々でした。訪問するお宅は一緒でも、毎回違うことが起きるので、慣れるということはなく。ひたすら一生懸命、そこに留まっていた気がします。ご利用者さんのことを考えて、その方に合った動きをするというのは、あまり出来ていなかったんじゃないかなあ。大変なことは多々ありましたが、また次回足が向いてしまう、そんな“何か”が介護にはあったんだと思います。

―なるほど。その“何か”が本間さんにとっての“やりがい”でもあったのでしょうね。訪問を経験された後は?

デイサービスに転職しました。その頃、介護福祉士も視野に入れていて、子供も大きくなり長時間働ける場所を、と探して見つけたのが、新規オープンのデイだったんです。そこでは常勤で3年ほど働きました。

―どんなデイサービスだったんですか?

そこは“男性向け”という、少し変わったコンセプトのデイで。デイにいらっしゃる男性って、周囲に溶け込めず、端っこの方でポツンとしている方も結構いらっしゃるんです。家に引きこもりがち、人とあまり打ち解けられない、そういった男性に焦点を当て、立ち上げられたデイでした。プログラムが囲碁や将棋、麻雀などがメインだったんですよ。

―それは面白いコンセプトの事業所ですね。デイのお仕事をされてどんな印象を?

短時間の訪問では分からなかったご利用者さんの色々な背景が見えてきて……。興味深かったです。「自分は家にいたいのに、何でここに来なきゃいけないんだ」というご利用者さんも中にはいらっしゃって。長時間一緒に関わるからこそ見えてくる、その方の生活環境や家庭環境を知ることで、提供するサービスの質や内容もいい方向に変えられるんじゃないかな、とも思ったりしました。 だんだん親しくなってくると、ご利用者さんも色々な話しをしてくれるのですが、聞くことはできても、内容によっては立ち入れないプライベートなこともあります。そこはきちんと線引きが必要だなということも学びました。最初のスタートは対一個人。大先輩を相手にするので、最低限のマナーというか、馴れ馴れしくしすぎないといったような部分は常に意識していましたね。

―親しき仲にも礼儀ありですね。訪問、デイと働かれて、今また訪問である『アップルケア』に転職されたのはなぜですか?

デイに来られているご利用者さんの中には、訪問を利用されている方も多くいます。その方達が、訪問サービスを受けている時に感じた不安や不満をよく話してくれていました。聞くと「その対応って違うのでは?」と思えるようなことも結構あって。自分も現場経験があるからこそ、今の訪問現場の実情みたいなものが気になってしまって。そこで勉強も兼ねて、自分の目で確かめてみようと、訪問でまた働くことにしました。

―今働かれているこちら、『アップルケア』を選ばれたのは、どういった経緯で?

介護福祉士と同時に福祉用具専門相談員の資格も取っていたので、それも合わせて勉強できたらいいなという想いがありました。調度、福祉用具を立ち上げる予定があるというこちらの募集を見つけて。でも実際は、まだ福祉用具の部門はないんですよ。まずはデイと訪問をしっかり、という方向性に変わったので。

―ということは新しい会社なのですか?

はい。2013年3月に立ち上がったので今年で2年目です。私が入社したのは昨年(2014年)の夏だったのですが、その頃はまだ体制が定まっていない状況で、色々と大変でした(苦笑)。また、入ってから3か月後にサ責のお話をいただき……。とても目まぐるしくこの1年が過ぎたという印象があります。

―サ責のお仕事はやられてみてどうですか?

『何でも屋さん』じゃないですけれど、本当に色々な仕事があって、正直、こんなに大変なのかと驚きました。その分、やりがいはあるのですが。当初、根をつめてやっていたせいか「潰れないでね」というお声がけもいただき、『これじゃいけない』と思いましたね。サ責をしている人が大変だ、大変だ、と言っていたら、誰もサ責をしたい、と言ってはくれなくなるだろう、と。『サ責になりたい!』と思ってもらえるような形を、自分が示していかなければと今は思っています。なので、出来る限りメリハリをつけて、『こういうやり方をすれば、ここは省ける』とか考えながら、スマートに仕事ができるよう心がけています。

サ責として自分に出来ること

スタッフの能力の底上げと働きやすい環境に整えていくことが今後の課題です。

―『アップルケア』の訪問スタイルはサ高住とお聞きしましたが…。

そうです。シノケンウェルネスというこちらの建物からアップルケアが委託を受け、サ高住の生活支援スタッフ、訪問、居宅が同じ建物内に入っています。スタッフのオフィスも建物の1階に。また、高島平に、もう1つ建物があって、そこにはデイサービスが併設されています。

―なるほど。ということは、基本こちらの住居ににいらっしゃる方への訪問がメインなのですね。

そうですね。私はサ責として、高島平にいるスタッフの方も統括して見ています。外部のお宅への訪問も今後は視野には入れているようですが、今はまだ出来ていません。そこまで手が回らないのが現状です。

―スタッフの方は何名で、何名のご利用者さんを見ていらっしゃるのですか? また、本間さんはサ責としてスタッフの皆さんをまとめていく立場でもありますが、今後、改善していきたいことって何かありますか?

今はご利用者さん約30名を9名のスタッフで見ています。今一番必要だと感じていることは、ヘルパーさんたちの意識をあげていく、ということですかね。未経験から入ってくるスタッフも多いので、現場で何か起こった時に自分で判断して動く力が弱くて。私の指示を仰がずとも行動できるよう、能力の底上げをしていきたい、というのが今後の課題でもあります。

―具体的に何か対策されていますか?

自分が研修で学んできたことを、スタッフに共有するようにしています。前回も『医療的行為』で研修(社福協主催)を受けさせてただき、持ち帰った後、すぐにスタッフに伝えて…。きちんと理解できてないと相手にも伝わらないので、私としてもいい復習の機会になります。そんな風に、スタッフと一緒にスキルアップできたらいいなあと思いますね。あとは、スタッフと話す機会をいっぱい持つこと! 1人で考えてしまうと支援に影響が出るので、自分の意見も大事にしつつ、同等に働くヘルパーさん達の意見もしっかり聞いて、お互いにアドバイスし合える職場にしていきたいな、と

―オフィス内、スタッフ同志の席も近くて話しかけやすい雰囲気だな、という印象を受けました。きっとそういうのもコミュニケーションの取りやすさに一役買っているのでしょうね。では最後に、本間さんがご利用者さんと接するうえで心がけていることって何かありますか?

以前、アルツハイマーの女性支援に入った際、その方が、「肩が痛い」と体の不調を訴えられました。薬を塗っても良くならず、どうしたらいいんだろう……と。でも、それは精神的なものからきていた痛みで、タオルを温めて肩にのせたらだいぶ緩和された、ということがありました。介護1つとっても、様々な角度から見なければ分からないことっていっぱいあるな、と実感したんですよね。高齢者の方は、メンタル的要素が体調に大きく影響したりもするので、そういう部分も注目できるサービスを提供できればいいなと思います。

―そういう目線もスタッフに伝えていきたいですよね!?

そうですね。先程の底上げの話に通じますが、そういう部分も見れる人材がそろう事業所に育てていく必要があると考えています。そのためにも、みんなが働きやすい職場にしていくことも大切で。その両方に今後は力を注いでいきたいです。それが今の私の仕事であり、やりがいにも繋がっていますね。

編集後記

質問に対して1つずつ熟考して、言葉を選びながら話してくださる姿が印象的だった本間さん。多くは語らないけれど、この仕事にとても愛情を持っていらっしゃることが伝わってきました。「介護以外の仕事は続かないと思う。好きかどうかは分からないけれど、自分に合っているんだろうなって。人が好きだから・・・」とおっしゃった言葉が何とも素直で、本間さんらしいコメントだなと感じたのは私だけでしょうか?

今回、取材にご協力いただいた本間信子さんをはじめ、『アップルケア株式会社』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。

「へるぱ!」運営委員会一同

事業所紹介

◆アップルケア株式会社

〒174-0074
東京都板橋区東新町1-33-5

TEL.03-5964-6811
FAX.03-5964-6813
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事業所紹介

本間 信子さん

アップルケア株式会社 サービス提供責任者/介護福祉士

勤務年数:1年/介護歴:8年

趣味

野球観戦

ジャイアンツファンです。特に阿部選手が好きで、仕事場でも阿部さんグッズを使用していますよ(笑)。東京ドームに、年に1、2回は観戦しに行っていますが、今はもっぱらテレビ観戦がメインです。

座右の銘

毎日一生懸命生きる

その日のうちに出来ることは、その日のうちに…がモットーです。明日でいいやと先延ばしにせず、1日を悔いなく終えられるよう全力でやりきるようにしています。