へるぱ!

今回のヘルパーさん

第67回 岩城 瞳 さん

三重県・津新町駅から徒歩15分ほどの場所にある『シルバーケア豊壽園 津中央ヘルパーステーション』でサービス提供責任者として働く、岩城瞳さんにお話しを伺いました。

介護の道に進んだきっかけ

施設で働く職員さん、ご利用者さんの笑顔が印象的でした。

―岩城さんが介護に興味を持ったきっかけは?

中学3年の時に生徒会活動の一貫で、ボランティアに参加したのがきっかけです。そこで初めて老人ホームへお邪魔しました。

―訪問してみてどんな印象を受けましたか?

ちょうど夏祭りの時に行かせていただいたのですが、施設の方とご利用者さんがものすごく笑顔で。その表情を見た時に「あっ。私が抱いていたイメージと違う」と思いました。

―というと、当初はどんなイメージを?

正直あまりいいイメージを持っていませんでした。身近にそういう人がいませんでしたし、祖父母と同居していたわけでもないので、何も分からなかったという方が正しいかもしれないです。でも、施設にいらっしゃる皆さんが笑顔なのが印象的で。そこで初めて「福祉ってどういう仕事なのかな?」と興味が湧いたんです。

―それをきっかけに福祉や介護の方面に進もうと?

いえ、その時はあくまでも一つの体験として捉えていました。でもいざ高校卒業後の進路を考える時に、ずっと「福祉」という言葉が頭に残っていることに気が付いて。将来の選択肢に介護の仕事もあるかも、と思い始めてから、改めてその分野に目を向けた感じです。元々、人の喜ぶ顔が直接見れる仕事、人と関わる仕事がしたくて、アミューズメントパークや動物園の飼育員さんも候補にあったのですが、まずは福祉や介護を学びたいと思えたので、介護福祉士がとれる大学に進学することに決めました。

―「人と関わる仕事」といえば介護もそうですものね。大学4年間で実際に学ばれてどうでしたか? 中学の体験で感じた印象から変化などは?

そうですね。自分の描いていた介護というのは、じっくりとご利用者さんと向き合うイメージだったのですが、実際はそうもいかないのかなと、実習時に感じたりもしました。私は実習生なので「ご利用者さんとコミュニケーションをとっててください」と言われ、お話する機会は多かったのですが、実際働いている方が同じように出来るかというと、バタバタしていて難しそうだなって。あと、学んでいて分かってはいても、認知症の方と接していくのはやはり大変だということも実感しました。それを自分が仕事にして、果たして続けていけるのか? という不安はありましたね。

―そうした不安を抱えつつ、介護の道に進もうと決意されたのはなぜでしょう?

実習は内部的なところまで見れないので。まずは働いてみないと分からないことも多いのではないかと思えたからです。それに、実習先の施設で指導してくださった職員の方が自分の理想というか、ご利用者さんにとても寄り添った介護をされていたので、こういう方のいるところで働きたいな、と思ったのが一番の理由かもしれません。

『シルバー豊壽園 津中央ヘルパーステーション』での日々

ご利用者さんの「ありがとう」の言葉に救われます。

―まずは介護の仕事に飛び込んでみよう! そう思われて、今働かれている『社会福祉法人 洗心福祉会 シルバーケア豊壽園』に就職されたんですよね!?

はい。大学の実習でいくつか行かせていただいた施設の最後が『シルバーケア豊壽園』でした。先程お話した「ステキだな」と思えた職員の方がここの方で、調度人員募集をしていて、申し込み、試験を受けて、こちらに決まりました。

―就職したかった会社に見事受かったわけですね。岩城さんは、勤務歴約4年とのことですが、最初からこちらの『シルバーケア豊壽園 津中央ヘルパーステーション』の配属に?

はい。施設がいい、デイがいい、といった希望が特になかったので、配属になったところで頑張ろうと思っていました。でもまさか、最初からヘルパーステーションだとは思っていなかったです。家に訪問して介護する、ぐらいしか知らなかったので、「ヘルパーって何するんだろう?」とそこからのスタートでした。

―実習などで体験した施設と配属になった訪問とでは、同じ介護といっても全然違うと思うのですが、実際働かれてみてどう感じましたか?

最初の1ヶ月ぐらいは、先輩職員の方に同行してもらいながらの支援だったのですが、入って数日目に、要介護5で寝たきりの方のお家に伺ったんです。食事も介助がないと食べられないし、意志疎通も難しい方。そういう方がご自宅で生活しているということに衝撃を受けて。自分の中でそういう方たちは、自宅で暮らすのは無理で、施設にいらっしゃるイメージだったので。このような身体状況でも家で暮らせるんだ、という驚きとともに「すごいな」とも感じました。

―岩城さんにとって、今までの概念を覆すような衝撃だったわけですね。そうした方たちが自宅で暮らせるよう支援するのがヘルパーの役割でもあると思うのですが、そういうことも含めて、この仕事のどんなところに魅力を感じていますか?

やはり、1対1でご利用者さんと関われるのが今も一番の魅力だと思っています。施設であれば、業務に追われて、そのご利用者さんだけを、というのはなかなか難しいですが、ヘルパーだとその方と自分しかいないので、そのなかで関われるのは何よりの強みでもありますね。でも最初は戸惑うことばかりでしたけれど…。

―というと、例えばどんな?

うちの事業所では認知症のご利用者さんも多くいらっしゃって…。先輩の同行が終了して、始めて一人で行かせてもらったお宅のご利用者さんから「ちゃんと勉強してきたんかー! お前なんか、はよ帰れー!」と怒鳴られたこともありました。新人なりに頑張ろうと、一人でドキドキしながら伺ったお宅での出来事だったので、とてもショックで。認知症だからそういうこともある、と分かってはいても、自分なりに受け止めるまでには時間がかかりましたね。

―そうした出来事は支援のなかでも色々あると思うのですが、どんな風に乗り越えたり、消化してこられましたか?

辛い時に一番助けてもらったのは、職場の先輩方です。色々アドバイスをしてもらったり、聞いてもらったり。とても温かい職場なので。あとは“気づき”を大切にしています。ご利用者さんが興味を持つような話をして、少しでもリラックスしていただけるよう心がけたり。この方はこのお話に興味があるんだな、という“気づき”がよりよい支援に繋がっていくと思うので。その怒鳴るご利用者さんも最後には「ありがとう」と言ってくださった方なんですよ。そうしたご利用者さんの言葉に「あーよかったな」ってすごく救われたりもします。ご利用者さんの笑顔や感謝の言葉が何よりの励みです。

サ責として、今後の自分。

緊張感をプラスに捉えて、寄り添う介護をしていきたいです。

―岩城さんは昨年の4月にサ責なられたそうで、もうすぐ1年。サ責になって感じることって何かありますか?

カンファレンスに参加させてもらうようになり、色々気づかされることも多いです。うちは、三重県内6市にまたがって「保育、障がい、医療、高齢者介護」と事業展開をしていて、様々な職種の方が働いています。カンファレンスでも、ケアマネさんをはじめ、普段関わることの少ない訪看さんや福祉用具の方たちなどが一同に介して意見交換をするので、とても勉強になるんですよ。「そういう見方もあるのか~」って新鮮な発見が都度あります。また、そこはヘルパーの想いを伝えられる場でもあるので、しっかり主張もできたらいいなとも思います。

―サ責になることで、事務作業が増えて現場に行く(訪問する)時間が減る、などの話を聞くのですが、岩城さんの所はどうですか?

うちのヘルパーステーションはサ責が9名いて、私含め、皆日中ほとんど現場に出ています。そのため、計画書やシフト作成は帰宅してからの作業に。でもサ責になったからといって、その事務作業が特別増えたという感覚はないですし、大変と思ったこともないです。一ヘルパーとして、色々な方から連絡を受け、ご利用者さんをどう支援していくかを考える作業は、サ責になる前からもしていたことなので。

―なるほど。では、登録ヘルパーさんなどを束ねていくことに関してはどうですか?

ヘルパーさんの中には、私よりも大先輩で、介護歴何十年という方がたくさんいらっしゃいます。そういう方たちに、経験歴の少ない私が説得力を持って話をするのはなかなか難しいのですが、やはり常勤として「そこは違うんじゃないかな」と思うことは、きちんと言える人でありたいです。あとはヘルパーさん達が悩んでいることを言いやすい環境にしていきたいですね。うちの職場はよく「忙しそう」って言わるのですが…(苦笑)。職員が絶えず動いているので、何となく声をかけづらくて、話せずに帰るヘルパーさんもいるのではないかと。情報共有できる連絡ノートなどはしっかりあるのですが、それにプラス、みんなが思ったことを気軽にすぐ話せる職場にしていこう、というのは今後の課題でもあります。

―介護ではちょっとした情報共有も大事ですものね。では最後に、岩城さんにとって、介護の仕事ってどういうものですか?

とても奥が深いなと思います。「これでいいのかな?」と今でも思い悩むこともありますし、ご利用者さんやご家族の様々な想いを受け止めることの大変さ、ご自宅に足を踏み入れて支援することの難しさも感じます。そういう意味では、当初の頃に感じた“緊張感”は変わらないんですよ。でも今ではその緊張感をプラスに捉えられるようになりました。昔は戸惑いばかりが先にたっていましたが、今はヘルパーだからこそ感じられる“緊張感”を心地よく感じます。また、“ご利用者さんに寄り添った支援をしたい”という気持ちはぶれずにあるので、そこは今後もこの職場でそれを追及していけたらなと思います。

【番外編】

今回は岩城さんの先輩であり、同じサ責としてご活躍されている高橋由美さんにも少しお話しを伺いました。

―岩城さんから、サ責の方は毎日現場に出られていると伺いましたが。

高橋さん-確かに毎日走り回っていますね。シフトも作りますし、事務仕事もあるのですが、外に出てご利用者さんに会わないと分からないことも多々あるので。登録ヘルパーさんから「今日、こんなんだったよ」というご利用者さんの状態を聞いて気になることがあれば、飛んで行きますし。事務所にいることは少ないと思います。

―サ責の方が9人と伺いましたが、皆さん連携し合って仕事を進めたり?

高橋さん-事務仕事が残ってくるとやはり大変で。そういう時はみんなで分担し合い、カバーしながらやっていっている感じです。人数の多いヘルパーステーションですが、まとまりはあるんですよ。トップである施設長の伊藤が協力体制のとれるチームを作ってくれているので、みんな働きやすく働けているのかな、って。うちはご利用者さんが400人、登録ヘルパーが50人ほどいるのですが、『一体、どこからどう覚えたらいんだろう?』とその膨大な人数と情報を目の前に当初困惑しました。ですが、施設長が全てのご利用者さんと登録さん、性格や動ける時間帯をきちんと把握しているので、何か尋ねても、即、答えがかえってきます。とても頼りにしていますね。

―施設長・伊藤さんへの信頼は絶大ですね。それにしてもそれだけの人数分の情報を共有し合うのもなかなか大変ですね。

高橋さん-そうですね。一回「体調が悪いよ」という連絡を登録さんからいただくと、関係各位ケアマネやデイだったりに連絡したり、事務仕事も一回何か起こると、すごい処理がありますしね。でもケースとして行ってなくても、その日にあった情報は必ず事務所内で共有しています。管理者(伊藤)に報告して、そこからみんなに連絡が行き渡るよう、また何かあっても答えられるよう、連絡ノートなりで把握するように皆努力しています。

―なるほど。皆さんの努力とチームワークで日々乗り切っていらっしゃるのですね。 最後に高橋さん、岩城さんお互いの印象を教えてください。

(高橋さん→岩城さん)
高橋さん-仕事中も慌てることがなく、すごく出来る人です。娘と同じぐらいの年齢なのに(苦笑)、分からないことも分かりやすく教えてくれて、本当に頼りにしています!

(岩城さん→高橋さん)
岩城さん-同行で一緒に行かせていただくと“気づき”が細かいところにまで行き渡っていてすごいなと思います。「ここに物があったらつまずくよね」といった危険な場所や、ご利用者さんの表情など、よく見られていて。それは事務所内でも同じで、「大丈夫?」「調子悪い?」と声をかけてくださるんですよ。人をすごい見ていらっしゃる方だな、という印象です。

編集後記

20代、30代、40代…と幅広い世代が揃うヘルパーステーション内、皆さん黙々と仕事に勤しみながらも、明るさと活気に満ちていました。質問一つ一つに対して丁寧に、言葉を選びながら喋る岩城さん。とても落ち着いていて、自分の中に秘めたる信念がちゃんとある方なのだろうな、と感じましたし、「伊藤さん(施設長)ファンなんです!」とチームワークの良さについて語っていただいた高橋さんは、優しくて温かい方です。また、スタッフからの信頼をしっかり掴んでいる施設長は、とてもチャーミングな方。個性が尊重される、ステキな職場だなあという印象を受けました。

今回、取材にご協力いただいた岩城瞳さんをはじめ、『シルバーケア豊壽園 津中央ヘルパーステーション』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。

「へるぱ!」運営委員会一同

事業所紹介

◆社会福祉法人 洗心福祉会
シルバーケア豊壽園 津中央ヘルパーステーション

〒514-0831
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TEL.059-221-2201
FAX.059-229-2030
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事業所紹介

岩城 瞳さん

社会福祉法人 洗心福祉会 シルバーケア豊壽園 津中央ヘルパーステーション
サービス提供責任者
介護福祉士

勤務年数:3年11か月/介護歴:3年11か月

趣味

旅行

休みがとれると、思いつきでパッと決めて、旅行に出かけることが多いです。もっぱら国内が多いですが、昨年は弾丸でディズニーランドに。職場の仲間とも休みが合うと一緒に出掛けたりしますね。

座右の銘

「笑顔」

座右の銘として特に意識したことはありませんが、笑顔でいたいなと常々思っています。「自分が笑っていると周りも笑う」と聞くので。

 

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