今回のヘルパーさん
第64回 米田 歩美 さん 横山 めぐみさん

鳥取県・倉吉駅から車で15分ほどの場所にある『医療法人 十字会 訪問介護ステーションのじま』でサービス提供責任者かつ、主任として働く、米田歩美さんと横山めぐみさんにお話しを伺いました。
介護の仕事に就いてみて
生活全体を見つつ、調理や家事を並行して進めるのは大変でした。
―米田さんがヘルパーのお仕事に就かれたのはどんなきっかけでしたか?
米田-子育てが一段落したので、何か仕事を始めようと職安へ。その時にヘルパー2級の資格が取れる、と書かれたポスターを見て、応募してみようかな、と思ったことがきっかけです。その時はヘルパーがどういう仕事かも分からずに。でもまずは“手に職”かな、と思いまして。
―で実際、その講習に参加されて、ヘルパーのお仕事に触れてみてどうでした?
米田-ずっと入院していた父がいて、その時私は何もしてあげられなかったけれど、もっと早くこの仕事の勉強をしていれば、何か出来たのかな、と色々考えさせられました。あとは、実習で施設やデイサービス、在宅それぞれに行く機会がありましたが、仕事をするなら在宅がいいな、と。
―それはなぜですか?
米田-自分の性格的に、1対1でご利用者さんとじっくり向き合う方が合っていると感じたからです。デイのように、大勢の前で弾けるような明るさをもてるタイプでもないですし、施設は流れ作業的な印象を受けたので。
―なるほど。それで資格を取られた後、すぐヘルパーに?
米田-はい。取得後にすぐ職安へ行き、『訪問介護ステーションのじま』の求人を見て応募。採用いただいてから、もうかれこれ10年です。
―10年ですか。長くここで働かれているのですね。横山さんはどんなきっかけでヘルパーに?
横山-そもそもは、同居していた祖母の介護に関わるようになったのがきっかけです。ちょうど私が前職を辞めた頃、進行性核上性麻痺という病気を患った祖母の状態が悪化し始めていて。体が動かしづらかったり、胃ろうの造設、たんの吸引も必要で。祖父がずっとメインで介護をしていたものの、私も仕事を辞めたことで手が空いたので、手伝うようになったんです。
―介護は、最初は見よう見まねで?
横山-そうですね。最初は祖父や母の介護する姿を観察して真似てみたり、あとはここ『訪問介護ステーションのじま』のヘルパーさんに来ていただいていたので、分からないことは相談しつつ、自分なりに勉強したり…。
―実際介護に関わるようになってどんな印象を受けました?
横山-よく世間では「介護は大変」と言うけれど、私の場合は、そうした先入観もなしに介護と向き合う現状が目の前にあったので、特に「大変」「辛い」と思うことはなかったです。私一人で介護をしていたら、そう思ったかもしれないですけれどね。
―介護する日々から、どうしてそれを仕事にしようと思われたのですか?
横山-介護に関わるようになって1年ぐらい経ってからでしょうか。もっと介護について知りたい、勉強したいと思うようになっていました。そんな時に、所長に「うちでヘルパーをやらない?」とお声をかけていただいて。その声に後押しされながら、資格を取り、そのままここで働かせてもらっている、という経緯です。何より『訪問介護ステーションのじま』で働くヘルパーさんの仕事ぶりは、間近で日々拝見しながらとても頼もしく、そこの信頼感は絶対的でしたから。
―お二人それぞれヘルパーになられた経緯は違うのですね。では、実際働かれてみてどうでしたか?
米田-働き始めた当初は、泣いてばかりでしたね(苦笑)。ご利用者さんにきついことを言われたり、先輩に叱られたり。でもたまにご利用者さんから言われる「待っとったよー」「ありがとう」という言葉が何よりの励みで…。あとは、厳しくも優しい先輩に相談にのっていただきながら、何とか乗り越えられた感じでしょうか。
横山-私は、身体介護は祖母の介護で何となくこんな感じかな、と理解していたのですが、家事援助は全く触れたことがなくて。最初、掃除や調理が全くできず大変でした。先輩のヘルパーさんに何度も付き添ってもらいなが、トイレ掃除一つにしてもイチから教わる感じで。同時に、生活全体をも見ていかなければいけないので、そこと並行しての調理や家事は、本当に慣れるまで苦労しましたよ。
―家事は自己流でもいいのかな、という印象がありますが、トイレ掃除にもやり方があるのですか?
米田-はい。やはり色々な職員が働くなかで、ご利用者さん側から見た時に、「このヘルパーさんはいいけれど、このヘルパーさんの掃除の仕方はちょっと…」といったような、個人間での差が出ては困ります。だからといって過剰なサービスもできないですし。制度に沿って、ある一定のレベルを職員全員がクリアするために、掃除一つにしても、きちんとマニュアルがあるんですよ。
横山-だから普通に家事をすればいい、というわけではなくて、「この人じゃないとダメ」と思われないよう、後のヘルパーに繋げることも考えて、それぞれが一人前にならないといけないんですよね。
サ責&主任としての責任感
本当に大丈夫、と思えるまでは何度でも先輩ヘルパーが同行します。
―先程マニュアルがある、とのことでしたが、それは共通のですか?
横山-もちろんそういうのもありますし、ご利用者さん各々のマニュアルもあります。例えば認知症の方だと、ちょっとした仕草がトラブルの原因にもなり兼ねないので、鞄の置き方から細かく記載されていたりします。
―お宅それぞれの性質になれるのも大変ですね?
米田-そうですね。でもうちは、育成システムがしっかりしているので、本当に一人で行っても大丈夫と思えるまでは何度でも先輩ヘルパーが付きます。そういう意味では安心感があるかと。新人ヘルパーには、中堅、主任が2段階でチェックします。例えば、同行訪問表というのがあるのですが、新人に同行した中堅ヘルパーが、仕事内容や気になった点を記載して主任に報告。主任が確認して「ここはできなかったからもう一回」と言うのもよくあります。実際、主任が現場を見て、個別に見極めて指導することもありますし。多い人だと10回以上付き添うことも。
横山-ですね。あとはそうしたクリアしにくい事柄や現場で起こりやすい問題は、毎月の研修議題にして、みんなで勉強する機会を設けています。今回は“ヒヤリハット”がテーマでした。
―議題というのは主任の皆さんが決めるのですか?そういえば、米田さんも横山さんもサ責でありながら、主任でもありますよね?
米田-主任は私たち含め3人いて、主任を先頭に3班に分かれているんですよ。月一の研修も班ごとに“テーマ決め、資料作成、発表、司会・進行”を担当するんです。だから今月は米田班が、来月は横山班がって。
横山-みんなで集まって、どんな研修をするのかを話し合わなければいけないので、チームワークも要求されます。みんな忙しくて時間を合わせるのも一苦労。これがなかなか大変なんです(苦笑)。
―でも何かを一緒にやり遂げることで『訪問介護ステーションのじま』としての連帯感が生まれることは、事業所としての強みにもつながりますよね。
米田-そうですね。まずはご利用者さんに怖い思いをさせないことが大前提。そのためにも私は、後輩たちをしっかり見届ける責任もありますし、普段の報告にはしっかり耳を傾け、研修会を通して互いに刺激を受けながら成長していかなくては、と思います。
「訪問介護ステーションのじま」の今後と各々の展望
医療ニーズの高いご利用者さんが増えるなかで、今まで以上の知識と対応力が問われます。
―『訪問介護ステーションのじま』は母体が野島病院ということで、ヘルパーステーションだけでなく、様々な分野が総合的に揃っているとお聞きしました。
横山-はい。まず訪問看護ステーションが同じフロアに。下の階には、ケアマネ、障がい者の支援センター、地域包括支援センターといった相談部門が入っています。また、デイと老人保健施設が病院と併設してあります。本当に幅広く網羅されています。
米田-10月から包括ケア病棟が出来るので、入院から退院を見越した、医療と介護の総合的なケア構築も始まります。それに伴い、重度者をはじめとした要介護高齢者の在宅生活を24時間支える“24H定期巡回型サービス”にも力を入れていかなくてはいけません。病院と繋がっていることで、今後はますます医療ニーズの高いご利用者さんが増えてくると思うんです。
横山-ですよね。だからこそ、それに対応できる知識と経験もより必要になります。すでに、病院や支援事業所との連携も多く、医療面で分からないことがあれば、訪問看護師さんにすぐ相談できるのも、ここならではの強みかもしれません。
―なるほど。今後ますます医療との連携が問われる、ということですよね。現在もわりとご利用者さんは重度の方が多いですか?
米田-はい。介護度4、5の方が3割を占めます。第一号研修、第三号研修を受け、喀痰吸引、経管栄養が出来る職員が8名おり、ALSの方にも対応しています。病院からの受け入れ、ターミナルなども総合的に見ていかないといけない現場が多々あります。
―だからこそ、先程横山さんがおっしゃった色々な現場に対応できる人材育成が必要なわけですね。では、今後お二人が思い描く、それぞれの展望をお聞かせください。
横山-私は今、サ責になって1年ぐらいなんですけれど、経験不足をものすごく感じています。指導する立場としてもまだまだだなあ、と。人生経験豊富な年配の方が多いなかで、自分もそこを補っていかなければいけないプレッシャーも感じつつ、でも逆にアドバイスを一杯していただける環境であることをプラスに考えて、今後も一つずつ経験を積み重ねていけたらいいですね。あとは初心忘れず! 介護は『手を抜くところがない仕事』だと思うんですよ。慣れが生じてくると、ついいい加減にもなりがち。それは絶対避けたくて、細かい部分にまで目が行き届き、常に心配りのできる人でありたいです。
米田-やはり今後の医療連携に対応できる力を自分自身が身に着けることですかね。そのための人材育成も大事です。ターミナルの方もいるので、何かあった時の対応に間違いがあったらダメですから。そこはどんどん厳しくなっていきますし、まずは自分でしっかり勉強しておかないと、他のヘルパーにも指導ができません。例えば、病名や薬の種類について。この薬を飲まないとどうなるのか、薬の内容や飲み合わせについても知識が必要です。そんな風に、担当のご利用者さんのために“出来ること”を考えて今後も行動していきたいです。
編集後記
今回はサ責&主任として活躍するお二人、そして所長も交えての取材となりました。各々、仕事に対する気持ちがとても真摯で、長年続けていても、決して奢らずに、ひたむきな気持ちを持続できるのはすごいな、と感じました。また、病院との連携が問われるなかで、ますますの向上を目指して努力を重ねられている様子。今後の発展が期待されます。とても緊張している、とおっしゃっていたお二人。穏やかでほわっとした空気感が漂い、癒されました。きっとご利用者さんも同じ気持ちを抱かれているのでは?とも。
今回、取材にご協力いただいた米田歩美さん、横山めぐみさんをはじめ、『医療法人 十字会 訪問介護ステーションのじま』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。
「へるぱ!」運営委員会一同
事業所紹介
米田 歩美さん
医療法人 十字会
訪問介護ステーションのじま
サービス提供責任者
主任
勤務年数:約10年/介護歴:約10年
趣味
ドライブ
娘と二人の孫と一緒に、倉敷にあるショッピングモールへドライブするのが休日の楽しみになっています。一人でゆっくりしたいな、と思いつつも、まだまだ幼い孫にねだられて出かけて行くのは嬉しくて。今はそれが何よりのリフレッシュですね。
横山 めぐみさん
医療法人 十字会
訪問介護ステーションのじま
サービス提供責任者
主任
勤務年数:約5年/介護歴:約5年
趣味
雑貨屋巡り
この仕事を通して、家事や掃除が好きになりました。家でも積極的にするようになり、部屋の模様替えもよくするように…。そのため、部屋に合わせたインテリアや雑貨を探すのが楽しみになりました。また、料理では調味料もこだわるようになり、今まで使ったことのない調味料を購入しては、色々試しています。