へるぱ!

今回のヘルパーさん

第62回 外崎 敦子 さん

西国立駅から徒歩5分ほどの場所にある『一般社団法人 介護グループふれあい』でサービス提供責任者として働く、外崎敦子さんにお話しを伺いました。

介護の仕事を始めるきっかけ

介護の仕事を手伝うのがごく自然の流れでした。

―外崎さんは、23歳という若さですでに介護歴13年と伺いました。現在、お母様が立ち上げた事業所『介護グループふれあい』で働かれているそうですが、そもそも介護を始められたきっかけとは?

小学校5年の時に、以前から障がい者運動や介護方面に関わってきた母の影響で、脳性麻痺の方の介護ボランティアをはじめました。それが一番最初の介護経験です。また同時期に、母が新設の事業所代表となり、より介護の存在が身近になりました。学校が終われば、自宅に帰らず母がいる事業所に行き、職員の方に遊んでもらいながらみんなの働く姿を間近で見ていましたね。そのうちヘルパーさんにくっついてご利用者さん宅へも行き、お仕事を手伝うようにもなって…。そんな風に、介護の仕事を手伝うのが当たり前、というか、ごく自然な環境で育ったんです。

―ということは、それからずっと介護一筋で今まで?

いえ、そんなことはありません。福祉を本職に選ぶまでには色々葛藤もありましたよ。別の仕事に就いていた時期もありますし…。介護は家業でもあるので、人が足りなければいつでも手伝い、常につかず離れずの関係性ではありました。でも「やっぱり介護が楽しい!」と再確認できたのは、他の職種を経験したからこそ。断面的な部分を切り取る職業が多いなかで、介護のようにゼロから仕上げまで全てを受け持つ仕事って、そうはないと思うんです。だからこそ得られる達成感もまた格別で。何より「自分じゃなきゃダメ」と思えるのが介護なんだと気づき、今ではこの仕事に誇りを持っています。

―なるほど。改めて介護職の魅力に気づかれたわけですね。では、ここでの外崎さんのお仕事内容は?最近、サ責になられたと伺いましたが?

そうなんです。以前からご利用者さんとヘルパーさんとのマッチングやスケジュール管理など、サ責業務に近いことはしてはいたものの、サ責になったのはつい最近のことです。ヘルパーとして訪問にも行きますしし、事業所の舵取りみたいな部分にも関わらせてもらっています。この事業所をより良くしていくためには、ということを考えながら行動するようにしています。

―先程「マッチング」という言葉が出ましたが、実際それぞれの本質を見極めて適切な人材配置をするのって難しいと思うのですが、そのへんどうですか?

そうですね…。例えば、ヘルパーがご利用者Aさん、Bさん、Cさんまで大丈夫でも、Dさんと出会った時に突然、化学反応のように、その方の持つ悪いクセみたいなものがでてしまうケースがあります。ご利用者さんと向き合おうとするほど反発し合って収拾がつかなくなるケースも。その時はその方の性格や本質を理解しきれていなかった自分への責任をすごく感じますよね。ご利用者さんに納得してもらえるような説明が噛み砕いてできるほどまでに、介護者のことを分かっていないとダメなんだな、ってよく思います。

―では、相手を理解するために外崎さん自身が心がけていることって何かありますか?

本当は雑談の機会を設けるのが一番なんでしょうけれど、現状そうした時間をあまり作れていません。たわいもない会話からその方の本質が透けて見えることもあるので、これからはもっとヘルパーさん達と話す時間を増やしていきたいです。それが今後の目標でもありますね!

介護職が抱える問題

若い子の居場所がなくなると感じる瞬間があります。

―外崎さんの事業所では、ヘルパーさんが200人ほどいらっしゃるとのことで、人手不足が騒がれる介護業界のなかでは、人員の多い方だと感じましたが、その点どうですか?

うちの事業所は重度訪問介護がメイン事業なので、困難事例も多く、実はこれでも足りないぐらいなんです。

―というと実際に稼働している人はもっと少ない?

そうですね。実稼働しているのはその人数の1/3もいないぐらいでしょうか。それにアルバイトの場合、3年以内に辞めてしまう方がほとんどです。もう少し定着してほしいとは思うんですけれど、なかなか難しい問題です。

―辞めてしまう人が多いのは何が原因だと思いますか?

一つは、介護が人材不足の業界と分かっていて、いつでも働ける最終手段の場所として捉えている人が多いことでしょうか。腰掛け程度の気持ちだったり、お金稼ぎの手段として選んでいる人も少なくありません。あとはセクハラ問題もありますね。

―セクハラですか!

介護は女性が多い職場。特に若いヘルパーに対して、水商売との見境がつかない感覚で、セクハラまがいの要求をしてくるご利用者さんもなかにはいらっしゃいます。自分であれば、今までの経験値からうまく受け流せても、この職業に就いたばかりの人だと、うまく対応できず、受けるショックも大きい。そういうことがあって、辞めたくなる気持ちも分かるんですよね。介護職に若い子が必要だって言われる反面、若い子の居場所がなくなる時があると実感するのはそういう瞬間でもあります。私としては、そうした事態が起きないように、最善の注意を図るのはもちろん、起きてしまった時のフォローは徹底していきたいなと思います。

―なるほど。外崎さんの事業所に限らず、離職などは介護職全体が抱える問題でもあるわけですものね。では、今後どうしていけばこうした問題が改善していくと思いますか?

まずは、自分の個性とうまく合致するご利用者さんと出会った時には、本当に楽しい職場なんだということを伝えていきたいです。あと先にも話したように、介護はそのご利用者さんにとって「自分しかダメ」なので、そこに「やりがい」を持ってもらえるよう、会社として努力していくことが必要ですね。また、介護者の健康管理について、もっと突っ込んで見ていく必要もあると思います。長く働いてもらうためには、健康な体があってこそ。この仕事は肉体労働でもあるので、体のメンテナンスは必須です。ジムに通って鍛えるなど、本人の努力はもちろん、事業所側での配慮も今まで以上に必要だと感じています。

これからの夢

みんながトップと思えるようなプロの集団をつくっていきたいです。

―『介護グループふれあい』にて、障がいを持つご利用者さんと多く接してきて、外崎さんなりのケアする際のポリシーみたいなのはありますか?

そうですねぇ…。介護者の経験から失敗すると分かっている事でも、利用者さんが本当に望んだ事は何でも実践し、一緒に失敗を積み重ねるのも介護者の大切な役割の一つだと思っています。

―というと?

例えば、難病の方であるほど、安全な生活を優先しすぎて本人のやりたいことが出来ていないケースも多いんです。保護者の方とご利用者さんの意見が食い違うパターンですね。そんな時は、出来る限りご利用者さんの意思を尊重して、失敗すると分かっていながらも、要望に合わせた行動をとることがあります。結果、保護者からお叱りを受けることもしばしばですが(苦笑)、ご利用者さん本人がやって良かったと思えるのであれば、OKなのでは?と思うんです。自立を目指した支援をさせていただいているわけですから、何でも安全第一で、出来ないと諦めてしまうのはちょっと違うんじゃないかなって。失敗することも人生の醍醐味。そう思って自分にあまりストッパーをかけすぎないようにしています。

―なるほど。ご利用者さん目線に立って行動する、とてもステキな考え方ですね。では、今後の夢やライフプランってどんな風にお考えですか?

まずはもっとオシャレにしていきたいです。どうしても福祉には「くさい、汚い」といったイメージもあるそうなので、そうした印象を変えていくためにも、服装や見た目も大事なんじゃないかな、と。基本ご利用者さんが大丈夫であれば、どんな服装でもOKなわけなので、一生の大半をスーツで過ごして肩を凝らせた方々に、福祉はこんなに自由だよ~とアピールしつつ、少しでも興味をもってもらうきっかけになればいいな、と。あとは事業所として、居心地よい連帯感を高めていきつつ、「みんながトップ」ぐらいの意識を持てる集団になれればいいなと思います。訪問介護の現場は1対1じゃないですか。そこには上下関係もなく、その人の判断力によるところが大きい。だからこそ、全体像を把握しながら、残存能力を活かした生活提案が求められるわけです。そうした、適切な判断ができる介護のプロをもっと増やしていきたいです。

―思い描く夢は大きいですね。最後に、外崎さんにとって介護という仕事の醍醐味って?

「大変だからこその楽しさ」それが大前提です。その方の人生を見るという仕事は、1日たりとも同じ日なんてありません。波にもまれながらの毎日にやりがいを感じられるか、だと思います。また、障がい者の方は逆境に立つからこそ、自分の生き方がよく分かってもいるんです。明確な課題を目の前に掲げ、必死に壁を乗り越えようと努力する姿を見ると、応援したい気持ちとともに、自分ももっと頑張らなければと励まされます。そうした人生の生き方を考えるきっかけを与えてくれるのも、この仕事の醍醐味かもしれません。

編集後記

キラキラ輝いてい眩しい!それが外崎さんの第一印象です。弾けるような笑顔に、若さあふれるフレッシュさ、そしてとっても美人さん。お話を伺うと、23歳とは思えないほどしっかりしていらっしゃって、介護界の現実と今後を見据えた意見や考えに、こちらも刺激を受けました。障がい者の方や地域の人が自然と集まって交流を持てるカフェみたいな場所を作りたい、その第一歩が、7月にオープンしたワークスペース『hinata』だそうです。外崎さんのような流行に敏感でこれからの未来を担う若い世代ならではの価値観で見いだされるものが、介護とミックスされて今後どんな変化を遂げていくのか、とても楽しみです。

今回、取材にご協力いただいた外崎敦子さんをはじめ、『一般社団法人 介護グループふれあい』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。

「へるぱ!」運営委員会一同

事業所紹介

◆一般社団法人 介護グループふれあい

〒190-0021
東京都立川市羽衣町2-41-1

TEL.042-843-0582(障がい)
FAX.042-595-6621
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事業所紹介

外崎 敦子さん

一般社団法人
介護グループふれあい
コーディネーター
サービス提供責任者

勤務年数:9年/介護歴:13年

趣味

スポーツ観戦、美術鑑賞

中学の時にソフトボール部に入るなど、昔からスポーツはプレイするのも観賞するのも大好き。今はフットサルをやっている友人がいるので、時間が空いた時には参加して体を動かしています。また、六本木美術館の年間パスポートを持っていて、気になるアーティストの展示の時には六本木までお出かけ。夜景もキレイだし、いい気分転換になっておすすめ!

座右の銘

介護はスポーツ

スポーツ選手は、試合でいい結果を残すために自主練を裏でしっかり積んでいる。介護もそれと同じで、肉体的にもメンタル的にもハードな職業だから、普段の生活で自分のことをケアしていく(=自主練する)必要があると思っています。それに、ご利用者さんのケアの方法をスポーツに例えると、案外新しいヘルパーさんに理解してもらいやすいんですよ。例えば、野球好きな人なら、サードの守備みたいに腰を落としてとか。ダンスをやっている人に対してよく言う事は、踊りの振付を覚えるみたいに、まず介助内容を覚えて下さい。そこから先にあなたの感性が試される仕事がはじまりますからきっと楽しめますよ、とかですね。そういう風な捉え方をすると、また介護に対する見方も変わってくると思います。

 

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