へるぱ!

今回のヘルパーさん

第61回 中原 瞳 さん

九州自動車道、熊本ICから車で約10分の場所にある『社会福祉法人 白富会 サンライフ長嶺訪問介護事業所』。そこで、訪問ヘルパーとして働く、中原瞳さんにお話を伺いました。

介護の仕事を始めるきっかけ

職業訓練校で出会った、恩師の存在が大きいです。

―中原さんが介護のお仕事につくきっかけって?

以前は、工場や夜のバーなどで働いていました。お店を持ちたいなどの目的があって働いていたわけでもなく、特に目標がないまま日々働くなかで「このままでいいのかな?」と、ふと将来に不安を感じたんです。ちょうど25歳という人生の分岐点にも立ち、〝自分が変わるきっかけ”を求めていた時期でもありました。そんな時、たまたま友人に付き添って行ったハローワークで、ヘルパーの職業訓練募集を見つけまして。そこで、何か変わるきっかけになるかも…と、応募してみたのが当初のきっかけです。

―ということは、介護に興味を持っていたから応募したわけではなく?

そうですね。本当に最初は変わるきっかけ欲しさに、でした。でも応募者70人中20人の受講者に選ばれて、これも何かのご縁だと思い、気合いを入れて通うことを決意しまして。それから半年間、毎日猛勉強。たぶんあの時が一番頑張ったんじゃないかな。昼は訓練校に通い、夜はバーで働き、精神的にも肉体的にもかなりハードな生活でしたが、「自分もやればできるんだな」っていう大きな自信にもつながりました。

―そうだったのですね。実際学校に通われてみて、介護に対してどんな印象を受けました?

その時は本当に大変なお仕事だな、と思いました。でも、レクリエーションが好きだったので、デイサービスなら私にもできるんじゃないか、とも。それでもその時点では「介護をやりたい!」という確証には至らず…。そんななか、この仕事に就いた理由は、そこで出会った恩師の存在が一番大きいです。

―その方はどんな方だったのですか?

職業訓練校の校長先生で、すごく情に厚い方でした。自分のことを思って、厳しいことも言ってくれましたし、褒めてもくださった。校長先生に出会って、人生色々考えさせられましたね。心に残るステキな言葉もたくさんいただいて。それにかつて、農業高校の先生もされていたようで、花植えを各地無償でなさっているのも聞いて、見返りを求めず人のために何かできるってすごいな、と人としてもすごく尊敬していました。

―その方との出会いが介護の道に進む強いきっかけに?

はい。半年間の講座を終え、じゃあ次どうする?となった時、真っ先に考えたのはこの方に恩返しできることは何だろう、ということでした。それはやはり、ここで学んだことを仕事に活かして「頑張っているよ」と先生に胸を張って言えることかな、と。それで介護の仕事をやってみようと決断できたのもありますね。だから恩師であるその方が、私の変わるきっかけでもあります。

仕事と夢

自分の好きな仕事をしながら、同時に夢も追いかけられる!

―介護の仕事で最初に就かれたのがここですか?また、実際働かれてみてどうでした?

いえ、最初はここではなく、デイサービスに就職しました。初めての環境で慣れないなか、ご利用者さん、スタッフ同士の人間関係に何回も心が折れそうになる瞬間がありました。ご利用者さんにとって私はお孫さんぐらいの年齢なので「本当にこの子で大丈夫?」と不安がられていることもすごく感じ、身動きがとれなくなる自分もいたり…。くじけそうな時は、校長先生に電話をして、よく相談をしました。すると「誰でもきついことはあるし、嫌な人だっている。それを乗り越えて一人前になれるんだから、我慢も必要」と諭され、そのたびに逃げるのは簡単だけれど、踏ん張らなければと励まされたりもしました。そんななか、日々のちょっとした出来事に嬉しい瞬間も増えていき、仕事を続けるモチベーションも徐々にアップしていったように思います。例えば、なかなかお風呂に入ってくれないご利用者さんが私の声かけで入り、「気持ちよかった」と言ってくださったり。その時は、もう最高~!ってなりますよね。ご利用者さんの「ありがとう」、その言葉が一番嬉しいです。

―中原さんにとって先生の存在が本当に大きかったことを感じるエピソードですね。デイサービスからその後、『白富会 サンライフ長嶺訪問介護事業所』に転職された経緯はどのような?

デイサービスに勤めている時から、実はアメリカに行きたい、という夢がありました。デイで働きながらこつこつとお金をため、いざ行くと決めた数か月前に退職をしました。ところが辞めてみると、アメリカに行くまでの数か月、何か仕事をしたいなあと思うようになって。できれば介護の仕事で、登録で1日数時間がOKなところ…と考えた時、やっぱり訪問かなと。

―ということは、ここ『白富会 サンライフ長嶺訪問介護事業所』はその数か月間だけ働くつもりで?

実はそうなんです(苦笑)。ところが、働くうちに職場が楽しいと感じるようになり、辞めたくないなって思ってしまって。でも、すでにチケットはとっているしどうしよう…と。そこで、上司に正直にお話ししたところ「1ヶ月なら大丈夫だから行っておいで」と言っていただきました。それでアメリカに1ヶ月行き、戻ってまたここで働き、今で2年と数か月が経ちました。

―「行っていいよ」と言ってもらえるなんて、それは働く環境にも恵まれましたね。

本当にそうですよね。和気あいあいとしていて、ここはとても働きやすい職場です。

―ところで、アメリカに行って何か心境の変化があったり?

フレンドリーで自由で前向き、そんな人たちの言動にすごく刺激を受けました。次はもっと長く行きたい!と思いましたね。だから今はそれが新たな夢でもあります。仕事は私にとって夢を追いかけるための手段でもありますが、だからといって何でもいいわけではありません。やるなら好きな仕事のほうがいいし、意味がないよりも意味のあることの方がいい。ご利用者さんに喜んでもらえる仕事をしながら自分の夢も追える。今は毎日がワクワクです。

―仕事が生活そのものになってしまって、日々それで過ぎてしまう人もいるなかで、夢を追いながら仕事も同時に楽しむ、その中原さんなりのスタンスは、とても貴重な意見ですね。ちなみに介護の仕事でも何か夢があったりしますか?

介護の仕事では、介護福祉士やケアマネージャーといった資格をとって、今後もステップアップしていけたらなと思っています。

ご利用者さんとの関わり

日頃のケアを通して、新たな発見がいっぱいあります。

―改めて『サンライフ長嶺訪問介護事業所』での中原さんのお仕事内容を教えてください。

入浴介助、掃除や洗濯などの家事援助がメインです。あとは、ご利用者さんと散歩に行ったり。訪問といっても、うちの施設内(高齢者対象のケアハウス)に暮らしているご利用者さんを対象としているので、外出して車でご自宅に訪問するといったことはほとんどありません。

―ではあまり重度の方はいらっしゃらない?

そうですね。一人で生活するには不自由があるけれど、一緒に何かできる方が多いです。

―先程、中原さんの訪問中の様子を拝見させていただいたのですが、お風呂の準備で、タオル1つ出すのも「タオルを出してくださいね」と声かけをし、ご利用者さんがなかなか見つけられないでいると「たぶんここにあると思いますよ」と引き出しを開けていらっしゃいましたよね?中原さんが出してあげることはせず、なるべく本人にやってもらうようにしているのかな、と感じたのですが。

はい。確かに自分でやってしまった方が早い、というのは誰もが思うことですよね。でも機能を低下させないためにも待つことはすごく大事です。今後、国が在宅を増やしていこうとするなかで、自立支援は常に念頭に置いています。それにさっきの方、私がケア中に掃除機を取り出してその場を少し離れて戻ってみたら、いつの間にかご本人が掃除機をかけていらっしゃって。その姿に「えっ!?」って、思わず笑いが出てしまいました。

―その方の意外な一面を見た!という感じで?

そうです、そうです。ご利用者さんも毎回同じなんてことはないじゃないですか。想像もつかない行動をご利用者さんがされているのを垣間見ると、何だか愛しく思えて、つい笑顔になってしまいますよね。それに今日、その方が実はコーヒーが好きだということを知りまして。年配の方だからお茶が好き、と勝手に思っていたら大間違いでした。日頃のコミュニケーションを通して、新たに発見できることっていっぱいあるなと思います。だから私は、ケア中もできる限り、ご利用者さんと会話をするようにしていますね。

―なるほど。ご利用者さんに対して話しかけることの他に何か心がけていることってありますか?

いつも明るく元気で、太陽みたいな存在でいるように心がけています。

―では、訪問の仕事で今まで辛かったことや悩んだことなどありますか?

あったとしても、上司である富永さんに相談して引きずらないようにしています。以前、私がご利用者さんに「こういうことで怒られました」と相談した時、「怒られたのは、ご利用者さんとの間に信頼関係ができてきた証拠じゃない」って言ってくださったんです。「あなたがこうだから怒られたんでしょ」ではなくて「信頼関係がないと怒られることもないから、やっとその関係性ができてきたんじゃない?」って。そういう風に言ってくださったことで心も軽くなり、ご利用者さんとの向き合い方も今までと変わった気がします。なので、今ではちょっとしたことでもすぐ報告・相談しています。また逆に、ご利用者さんから私のことで何か注意されることがあれば、すぐに言ってください、とも言ってありますね。

―上司の方ともいい関係性を築かれているのですね。では最後に、訪問という仕事の楽しさってどこだと思いますか?

ここは施設なのでご自宅とはまた少し違うかもしれませんが、それでもその方の家にお邪魔するわけですよね。その方の生活に入り、マンツーマンでゆっくりケアすることで見えてくる、その時にしか見せないご利用者さんの一面というのがあります。それがすごく貴重で楽しいです。今日みたいに掃除機をかけだしたり、他にも雑巾を間違ってタオルにしていたり…。「えっ、そこーー!?」って思えるような発見があるのが、この仕事の面白さだと私は感じています。

編集後記

幅広い年齢層が働く介護業界のなかで、中原さんのような20代という若さ溢れる存在はとても貴重だと思います。介護との出会いは、自分が変わるきっかけ欲しさ、という中原さんでしたが、そうした何気ない行動が新たな自分発見につながるのだと今回の取材を通して感じたことです。まずは何事も行動してみる!ですね。これからの将来に向けて確固たる目標を携え、パワーにあふれた毎日を送る中原さんにとても刺激を受けました。

今回、取材にご協力いただいた中原瞳さんをはじめ、『社会福祉法人 白富会 サンライフ長嶺訪問介護事業所』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。

「へるぱ!」運営委員会一同

事業所紹介

◆社会福祉法人 白富会
サンライフ長嶺訪問介護事業所

〒861-8038
熊本県熊本市東区長嶺東3丁目-3-66

TEL.096-380-6166
FAX.096-380-1060
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事業所紹介

中原 瞳さん

社会福祉法人 白富会
サンライフ長嶺訪問介護事業所
ヘルパー

勤務年数:2年7か月/介護歴:3年7か月

趣味

海外旅行

アメリカへ行ったのを機に、海外旅行の楽しさを再実感。週末の休みを利用して短期間でも行きます!今一番旅行してみたい国はメキシコ。世界一周をしている女性のブログを見ては、モチベーションをあげています(笑)。

座右の銘

有言実行

目標を持って、それを実行に移せるよう日々努力しています。本当に好きなことのためなら頑張れます!

 

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