へるぱ!

季刊へるぱ!インタビュー

安藤 なつ(あんどう なつ)

メイプル超合金

体験しないとわからない介護の楽しさ
誇りをもって働いてほしい
人気お笑い芸人コンビの「メイプル超合金」。一度見たら忘れられないインパクトのあるビジュアルとは裏腹に、安定感のあるトークと存在感で多くのバラエティ番組等で活躍している。
コンビのうちの一人、紫の衣装がおなじみの安藤なつさんは、昨年11月に介護職の一般男性と結婚。自身もヘルパーの資格を持ち、介護歴25年以上の大ベテランである。そんな安藤さんに、介護職に携っていた当時のエピソードと、介護にかける想いを聞いた。

介護のボランティアをして過ごした幼少期

――介護の仕事に携わられたのはいつごろからですか?

 33年前ですね。小学校1年生のときに、親戚が障がい者のグループホームを始めたんです。当時は制度がなかったので、お年寄りから若い人まで幅広い年齢の人がいて、小規模、少人数でやっていました。
 親戚の家に遊びに行くような感覚でしょっちゅう顔を出していて、中学校に入ってからは毎週末ボランティアとして手伝いに行っていたんです。今だったらできないのかもしれませんが、お風呂のお手伝いや衣類の着脱、食事の介助や、寝る支度など……。
 高校生になってからも、ほかのアルバイトがないときは手伝いに行っていました。単純に楽しくて通っていましたね。

――ヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)の資格もお持ちですね。

 ちょうど二十歳になるときに介護保険制度が始まって、ヘルパーの資格を取りました。それで23歳くらいまで訪問介護のヘルパーをしていました。
 夜間専従だったので、1日に15~20軒のお宅を先輩と2人で回って、おむつ交換などをしていましたね。医療ニーズの高い方が多かったので、身体介護が中心でした。

――芸能活動とはどのように両立されていましたか?

 訪問介護の仕事は23歳で辞め、それからは、ほかのアルバイトをかけ持ちしていましたが、26歳のときに家を出て都心で生活することになり、生活費を稼ぐため、親戚の施設でアルバイトをさせてもらうようになりました。
 最初は日勤だったのですが、相方とのネタ作りに集中するため、夜10時から翌朝6時までの夜勤に変えてもらいました。そのころは、昼間はお笑いのライブに出て、終わると施設の夜勤に行く、といった生活でした。今考えると結構ハードでしたね。
 ブレイクするまでの6年間は再び親戚のところでお世話になっていましたが、お笑いも介護も、好きなことを仕事にしていたので、大変だと思ったことはなかったです。

相手の立場に立つことそれが質の良い介護につながる

――介護現場で働かれていた際、印象に残ったエピソードはありますか?

 訪問介護のヘルパーをしていたとき、コミュニケーションを取るのが難しい利用者さんがいました。夜間の訪問時は皆さん寝ているので、会話をする機会は多くないのですが、その方は朝方に目が覚めてしまうみたいで。眠れない様子だったので、その場で鶴を折ってプレゼントしたことがあったんですね。
 そうしたら、次に訪問した際、その方がご自分で折ってくださった鶴とご家族からの感謝のメッセージを受け取ったんです。今だったらあまり良くない対応なのかもしれませんが、不安を少しでも和らげることができたのかなと、うれしく感じました。
 そもそも、「介護されたい」と思っている人なんていないと思うんですよ。例えばですが、トイレに行くのに人の手を借りるのは嫌じゃないですか。「質の良い介護」って、そういった気持ちを汲み取って、相手の立場に立つことだと思います。
 親戚の施設では、自閉症の方や、精神疾患のある方など、障がいのある方をケアすることが多かったので、どうやったらそういった方々が生活しやすくなるかを常に考えながらやっていました。
 その人に合わせたコミュニケーション方法を工夫しながら介護をして、一瞬でも同じ方向を向くことができたり、同じ感情を共有することができたと感じるときはやっぱりうれしいですね。ケアを通してその人との関係性を築くことができる、そこに介護の楽しさがあるんじゃないかなと思います。

――介護業界は、常に人手不足と言われています。

 昔からずっと人手不足ですよね。今でも親戚から「戻ってきてほしい」とよく言われます。やはり人が集まらないのは、悪いイメージが先行しているからかなと。
 私は、小さいころからお年寄りや障がいのある方とかかわってきたので、介護がつらいと思ったことがないのですが、大人になってから初めて経験しようと思うとためらってしまうのかもしれないですね。よく理解されないまま、誤解されていることが多いと思います。
 ただ、ヘルパーが働きやすい環境は整えていく必要はあると思います。施設だったら介護リフトなどを導入して、力任せに持ち上げることがないようにしないと。自分は中学生のときにぎっくり腰になりました。一時期プロレスもやっていましたので、こういう体型であることもあるのですが、腰に関しては終わっています(笑)。働いている人が腰痛にならないように、介護現場にもっとロボットやテクノロジーを入れてほしいですね。

――最後に、コロナ禍で尽力されている介護現場の方にメッセージをお願いします。

 よく医療現場がクローズアップされていますが、病院、施設をはじめ訪問介護などさまざまなところで介護職がいるからこそ、生活が守られていると思います。皆さんに、感謝の気持ちを伝えたいです。魅力ある、素晴らしい仕事だと思うので、誇りをもって、頑張っていただきたいですね。

安藤 なつ

メイプル超合金

1981年1月31日生まれ、東京都出身。メイプル超合金のツッコミとして、2015年の「M-1グランプリ」決勝戦をきっかけにバラエティなど多くのテレビ番組やライブに出演するように。
CBC「メイプル超音楽」 やニッポン放送「ザ・ラジオショー」にパートナー(水曜日)としてレギュラー出演中。

 

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