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第11回 医療・福祉サービス改革プラン       2019/10/24

 今回のコラムでは、2019年4月10日、政府の経済財政諮問会議(議長=安倍晋三首相)において根本匠厚生労働大臣が説明した、「医療・福祉サービス改革プラン」について触れていきたいと思います。
「医療・福祉サービス改革プラン」とは、今後ますます顕著に表れるであろう医療・介護人材不足に対して、より少ない人手で回る医療・福祉の現場を実現するための改革プランです。

 「医療・福祉サービス改革プラン」の基本的方向性は、以下の4つの主要施策を通じて、医療・福祉サービス改革による生産性の向上を図ることにあります。
①ロボット・AI・ICT 等の実用化推進、データヘルス改革
②タスクシフティング、シニア人材の活用推進
③組織マネジメント改革
④経営の大規模化・協働化
 これらの改革により、2040 年時点において、医療・福祉分野の「単位時間サービス提供量」について5%以上の改善を目指すこと掲げております。

 「主要施策① ロボット・AI・ICT 等の実用化推進、データヘルス改革」について、特に介護分野では2018 年度の「介護現場革新会議」において整理した方向性をもとに、全国数ヵ所において以下のパイロット事業を実施いたします。
a.業務仕分け
b.元気高齢者の活躍
c.ロボット・センサー・ICTの活用
d.介護業界のイメージ改善
 これらのパイロット事業で得られた結果を踏まえ、介護現場の業務改善や介護業界のイメージ改善について、先進的な取組を全国に普及・展開していくことになります。

 まず、「a.業務仕分け」については、介護専門職は利用者の直接的なケアなどの業務により重点化し、ベッドメイキング、 食事の配膳、ケア記録などの間接業務については、元気高齢者に担っていただく事をイメージしているようです。
 「b.元気高齢者の活躍」については、「a.業務仕分け」における間接業務だけでなく、地域医療介護総合確保基金において都道府県が取り組みを進めている「介護に関する入門的研修」を更に進めるとともに、保育体制強化事業による保育支援者の活用を推進していきます。福祉・医療分野未経験者のシニア層を対象に、福祉・医療分野への参画のきっかけを目的とした研修の創設や就労先とのマッチング支援等の方策を検討していきます。 今後は地域の元気高齢者の活用事例等を分析・整理していくことになるでしょう。このあたりは「主要施策② タスクシフティング・シニア人材の活用推進」と連動していると思います。
 「c.ロボット・センサー・ICT の 活用」については、現時点では、夜勤業務・記録入力の効率化等を掲げており、業務負担の重いイメージのある介護業務に対して、業界イメージの刷新を図る狙いがあります。
 「d.介護業界のイメージ改善」については、業務負担の重いイメージのある介護業務に対して、業界イメージの刷新を図るだけでなく、職場体験等の実施、やりがいの発信等を積極的に進めていくようです。

 「主要施策③ 組織マネジメント改革」については、 福祉分野の生産性向上ガイドラインの作成・普及・改善事業において、介護事業所における作成文書の見直し、ICT 化、職員配置の見直し、業務プロセスの構築、介護ロボットの活用等の取組みを推進するためのガイドラインを作成し、優良事例などを事業者団体の協力も得ながら積極的に横展開していくようです。

 文書量削減に向けた取組については、2020 年代初頭までに介護の文書量半減し、報酬改定対応コストの削減を次期報酬改定に向けて検討するとのことです。
 介護サービス事業所に対して国及び自治体が求める文書や、事業所が独自に作成する文書の見直しを進め、文書量の削減に取り組むことも明言しております。 自治体毎に様式や記載内容の差異がある等の課題について、検討・見直しを進めていくとのことです。 障害福祉サービス事業所に対しても国及び自治体が求める文書や、事業所が独自に作成する文書の見直しを進め、文書量の削減に取り組み、保育所においても保育士等が作成する書類の見直しに取り組むとのことです。

 「医療・福祉サービス改革プラン」の全体的な私の印象としては、生産性向上ガイドライン以外については、それほど目新しい案は無いように感じます。生産性向上ガイドラインについては、各事業所でもご一読いただき、ご自身の事業所で取り入れられそうなところは是非取り入れていっていただきたいと思います。

 ちなみに、5%改善目標の「単位時間当たりのサービス提供量」については、以下の数式で算出するとのことです。

サービス受給者数(介護保険事業状況報告)÷常勤換算従事者数(介護サービス施設・事業所調査) (補足指標:残業時間数(介護労働実態調査))

 共通部分(全類型における生産性向上) は、「居宅サービス事業所における業務効率(ペーパーレス)化促進モデル事業」(平成28 年度)において、ICT導入により、記録時間や介護報酬請求にかかる時間が効率化されたという結果を踏まえ、総労働時間に対し、全体では3.3%の生産性向上を達成可能として試算。
 上乗せ部分(施設・居住系サービスにおける特性に応じた生産性向上) は共通部分に加え、特養、老健といった施設・居住系サービスについて、既に、ロボット・ ICTの活用等により、効率的に介護サービスを提供している特養があることから、この水準に基づく介護サービス提供を可能とすることで、さらに1.9%の生産性向上を達成可能として試算。 共通部分と上乗せ部分で計5.1%の効率化を目指す、とのことです。

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コラムニスト紹介

吉澤 努

よしざわ社労士・社会福祉士事務所、特定社会保険労務士

プロフィール

社会保険労務士として独立するまでに、介護老人保健施設、通所リハビリ、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター等を経営する医療法人に約12年在籍し、法人全体の人事・労務管理に携わる。

平成26年に現事務所を開業。現場を直接見てきたという経験に、労働法・社会保険制度・助成金制度の専門家である社会保険労務士という法的な観点をミックスさせた「実践型介護特化社会保険労務士」として活動中。

<保有資格等>
特定社会保険労務士/社会福祉士/第1種衛生管理者/八王子市社会福祉審議会 高齢者福祉分科会委員/東京都介護労働安定センター 雇用管理アドバイザー/医療福祉接遇マナーインストラクター

著書・出版

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