へるぱ!

今なら語れる「障害を越えて」

第41回 現代版「蜘蛛の糸」2022/2/14

 今日もお釈迦様は蓮の池を覗き「Mさん」の話を聞き、感心され下界に下りることを決めました。

 新型コロナウイルス流行により、学校や会社に行く時間がなくなり、家庭で待機、それぞれ家族での時間つぶしが「テレビかスマホゲ-ム」となりました。

 新型コロナウイルスの流行防止のため、外出に制限がかかりました。これまで通り近所の公園までの散歩は続けていますが、この運動だけでは体力・筋力が落ちるため、高齢者の体力保持を目的とした「リハビリデイ」を利用しています。送迎があり、コロナ対策としては、日々の体温計測、マスク着用、新型コロナウイルスワクチン接種などを実行しているため、こちらも安心して参加しています。私は、介護保険の要介護認定で「要介護1」です。利用できる回数は週1回。それを有効活用し、朝9時~12時の半日、週に1回通っています。同じ地区で送迎を利用している人数は3人。私を含む3人のうちの1人「Mさん」は、私が利用開始した1年目の3月から送迎を利用しています。

 送迎途中には、「Mさん」の87歳に至るまでの苦労話を聞いたり、現代の高齢者についての話題になったり色々な会話が繰り広げられます。自分の年齢を理解していない高齢者が多いから、最期(ターミナル)にむけて何をすべきか、終活についても改めて確認が必要だ、といった話は印象的でした。

 また「Sさん」は、図書館で「最近、物忘れをして困る」と話し掛けられたそうで、それに対しては「高齢者の証拠ですよ」と答えたそうです。

 私達3人は「現代の高齢者は、“自分は高齢者ではない”と思っている」「まだまだ長生きをするつもりだから身の回りの整理をしていない」などといった話題で盛り上がり、まったくその通りだと私も感心していました。

 特に参考になった話といえば、「Mさん」が、息子や娘との遺産相続時期については良く考えてすべきだ、と「Sさん」にアドバイスしたことです。それを聞いて私は、そうした遺産相続のお話を「息子から一言、娘から一言」として一冊の本にまとめてみると面白いかもしれませんよと「Mさん」に話しました。

 また、視覚障害者である私に、「施設の見分け方や決定する際のポイント」などを親切に話してくださり、自分の今の立ち位置を再認識することができたのも「Mさん」のおかげです。感謝、感謝の「Mさん」からは、現代の高齢者が自分の処置をどうしたいかを決めていないことについて毎週送迎車内で講義を受けました。3ヶ月が経過した頃、「Mさん」がいなかったので運転手のAさんに「Mさんお休みですか?」と尋ねたのですが、「そんな方知りません」との回答。他の2人の運転手に尋ねても同じ回答が。会話に参加していた「Sさん」からも「知りません」との回答。

 3ヶ月間、私は夢を見ていたのだろうか…

 この話はバカにされるので他言しないことにしました。きっと、無知な私に、現代版「蜘蛛の糸」でお釈迦様が老後の生き方を講義するために、講師「Mさん」を届けてくれたのでしょう。

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コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

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