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今なら語れる「障害を越えて」

第35回 恐怖は同じ (2)      2021/4/26

 新型コロナウイルスも一年前は中国型、次に欧州型が第2波であり、第3波はウイルスが変異して、より感染力が強いものに変化しているとの報道がされています。

 命を奪われるかもしれないことに、ウイルスに感染した本人が最も恐怖を感じていることでしょう。その患者のご家族も恐怖でしょう。私が視覚障害者になり、これから先どのような生活になるのか、日常生活が送れるのか、不安と恐怖でいっぱいだったことを思い出します。

 まだ恐れている間は恐怖の入口であり、実際に感染し、新型コロナウイルス患者になった時の恐怖は想像では計り知れません。患者として高熱にうなされて、生きるか死ぬかをさまよう恐ろしさは想像しただけでつらく、当時、光を失う生活が決定した時と、患者になった人を心配している肉親家族の恐怖は同じかも知れません。

 これから先も、新型コロナウイルスが強力に変異してくるかと思われますが、二度と体験したくない恐怖なので、マスク、手洗い、うがいをして、ヘルパーさんとの信頼関係を作ることが大切であると考えます。同時に医療関係に携わる人達に感謝の気持ちを持つことがどれほど心の癒しになったか、当時眼科に入院して治療を受けていたことを思い出しました。

 一番恐怖を感じているのは患者本人とそのご家族の皆様でしょう。一日も早い回復を御祈り申し上げます。

 これまで一般の方から優しい理解者が増えてきていましたが、今回のウイルス騒動で声かけが少なくなりましたと以前のコラムでお伝えしました。先日は地下鉄のホームからの転落事故がありました。原因を正せばいつも同じです。優しい一言がいつも抜けているのです。今回の事故はホームドアが設置されていましたが、使用開始までの点検が終わっていないため、完成するまでホームドアを開けたままにしていたことが原因でした。被害者が自分がいるホームの反対側のホームに入ってきた電車の音を聞き、自分が乗る電車だと思い、開いていたホームドアから落ちて亡くなられたのです。

 運輸大臣が事故現場を視察されて厳重な注意をされたようですが、これまでいつも同じ原因の繰り返しです。同じ視覚障害者としては、またしても犠牲者がでたと悲しくなります。見えていない人になって考えていただきたい。まさかまさかの事故原因ですが、思いがけない手助けが事故を未然に防ぐこともあります。神の手にもすがりたい新型コロナウイルスのワクチンを求めるのと同じく、視覚障害者は優しい理解者からの声かけを求めているのです。

 ワンマン運転されている電車に誘導案内をすることは不可能かも知れません。せめて場内放送で「業務案内放送、視覚障害者1名車両前方より乗車」と電車内に運転手1名しかいなくても、アナウンスして頂ければ事故件数も少なくなると思いますし、視覚障害者も安心して乗車できると思いますが…いかがでしょうか。ご提案いたします。

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コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

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