へるぱ!

今なら語れる「障害を越えて」

第32回 新型コロナウイルス (1)      2020/10/12

 新型コロナウイルスが中国大陸から全世界へと猛威を振るっております。

 発生原因は不明。これまで世界中で問題視されてきた地球汚染での温暖化をはじめ、このウイルスについても今後どう取り組んでいくのか、世界の関心は高まるばかりです。問題が発生した結果、いつの時代も弱い人が2倍3倍と被害を受けるのは世の常なのでしょうか。今回は障害者だけでなく、細々とその日暮らしする人、親からの仕送りでなんとか暮らしている人、就職決定の通知を受けるも数日間で採用取消しとなった大学卒業したての人など様々です。

 私が視覚障害者に突然なり、「何で私だけが…。私が何か悪いことでもしましたか?」と理由も分からず、納得もできず、思い悩んだあの日の出来事を瞬間的に思い出しました。世の中自宅待機で、パソコンで仕事をこなす体験をした企業は、これを機に働き方改革と称して、今まで会社でしていた仕事は自宅で、と合理化へと大幅に変更していくことでしょう。この体験を通じ、より改善を加えた合理化に進むならば、やっと仕事に慣れた…という弱者にとっては大きな負担になると予測されます。

 同行援護の取扱いについても今後大幅な変更があるかもしれません。例えば利用者は相手に触れることで情報を得ており、触れないで情報を得ることは逆に難しいです。それも今後はどうなるか分かりません。また視覚障害者である私は、ソーシャルディスタンスと言っても、どの程度人と人との間に距離をとっているのか見えないので分かりません。

 先日コンビニでの会計時、前の人との距離感や、支払い時のキャッシュカードの差しこみ口など諸々手間取っていたら、後ろの人からクレームを受けました。これまでは、弱者に対してやさしい理解者の声かけもありましたが、感染を恐れてか今は少ないです。長い間外出を禁止され、閉じこもりでストレスも溜まり、世の中全体がピリピリしているのを感じます。

 今回の新型コロナウイルスは障害者だけが弱者ではなく、毎日健康で生活していた人にも色々な障害をもたらしました。視覚障害者の私に至っては、「物に触れる」、「声をかけてもらう」ことで成り立っていた生活環境が大幅に変化し、今後もこうした変化に対応していく必要があるのだと痛感しています。

 次回は視覚障害者の立場からみた、体験事例や対応策について考えてみます。

一覧へ戻る

コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

トップページへ