へるぱ!

今なら語れる「障害を越えて」

第29回 やさしい理解者を…(1)       2020/4/17

 私は今新宿にある大学病院の眼科に月に一度通院をしています。 その医大は、昨年11月に新しい建物になりました。旧建物に比べてベッド数も増え、出入りする人の多さは都内の大型デパート並みです。新築となった院内は壁も床も白一色で、視覚障害者の私には区別がつきません。さらに言えば、3階にある眼科診察室までの誘導点字ブロックがないため、今までは1人で行けた診察窓口もこれまでと勝手が違い、なかなかたどり着けず新館内で迷子となりました。

 院内をキョロ、キョロする自分を見かねてか、ある患者さんが親切に声をかけてくださり、総合案内窓口まで連れていってくださいました。窓口では、視覚障害者にとってこの新館が不親切な設備であること、また、何度も白い壁に突き当たり苦労した、と伝えました。すると、私のクレームに対しての返答はこうです。「総合案内窓口にお尋ねいただければ、案内できるエスコート担当者をお付けして案内致します。まずは窓口の係員に利用目的をお話しください」

 なるほど。

 また、診察待機時間の解消施策か分かりませんが、院内のあらゆる手続き、カルテ書類や記録情報類などといった全てのデーターが伝達システムになっていました。診察料の支払いに関して言えば、診察券を投入して表示金額を現金投入口に入れるだけです。ですが、視覚障害者には診察券の受け入れ口がまず分かりません。さらに料金表示も見えないため、やはりここでも手助けが必要です。これは視覚障害者だけに言えることではありません。通院患者の多くが高齢者なので、やはりエスコートする係員は必要です。とはいえ、最近の高齢者には息子や娘、孫など若い人が同伴するケースも多いようなので、このような最新システムでも何とか対応できているように思います。

 私は、人手不足解消やスピーディーな情報処理のためのスマホアプリ導入には全く喜べません。なぜなら、音声での説明がないからです。今後の新築においては、通院患者の現状を理解した「エスコート設置」であれば大いに歓迎です。情報機械化にメリットがある一方で、デメリットを受けて苦労している人がいることも忘れないでほしいです。同時にやさしい理解者が増え、機械以上に血の通った人々の活躍があることを期待しています。

一覧へ戻る

コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

トップページへ