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今なら語れる「障害を越えて」

第26回 中途視覚障害者としての体験談 (3)

 外出は公道に出るため、自分の住居とは異なり、他人に迷惑をかける心配があります。まずは生活居住区の市役所にある福祉課窓口で、身体障害者手帳取得の手続方法と福祉用具である白い杖の購入方法について相談してみましょう。これらは視覚障害者になってから始めて経験することのひとつです。健常時に事前準備できるものでもありません。ですので、疑問に思うことは職員に何でも相談してみることが大切です。

 今回のコラムは“外出するためのススメ”です。まずは、杖の長さや重量など自分に合った白い杖を取り寄せたら、1日も早く、自分の行動に合った杖の使い方に慣れることが先決です。道路交通法で「視覚障害者は白い杖を携帯する」と定められており、白い杖が目印となります。危険から身を守り、運転者や歩行者に注意を促すための用具なので外出時は忘れず携帯してください。

 杖には正式な使用方法があるとは思いますが、どこかで指導や講習を受けても、身体の一部と思えるほどには時間がかかります。外出時は必ず持ち歩き、慣れるまで使う回数を増やすよう努力しましょう。「習うより慣れろ」が私のモットーであり、中途視覚障害者であるから時間が残されていないこともそう考える理由のひとつです。

 杖を手にしたらまずは、住居内で練習をしましょう。杖が当たる音や杖を通して触れる感触を実感します。こうした実感は言葉で説明できるものではなく、やはり「習うより慣れろ」なのです。そして、次のステップは近くの公園に行って同様の体感をすること。家の中とはまた違った感触を覚えるはずです。

 一方、ガイドヘルパーさんによる同行援助の時は、白い杖の携帯はするものの1人歩きではありません。まして、ガイドヘルパーさんが危険な場所へ誘導することもないため、信頼して外出を楽しんでください。また、遠出時になるとこれまでの経験が通用しない目的地に行くことも多いはずです。そういう時は1人での外出は危険です。ガイドヘルパーさんによる同行援護をおすすめします。

 また、外出先が健常者だった時に通勤していた経路や慣れ親しんだ場所であるならば、ガイドヘルパーさんに今はどんな感じか、街やその場所の様子を質問してみてください。散歩風景の今や変化が聞けると楽しい気分にもなり、自分の記憶を再更新することもできます。そういう意味でも、外出はとても大切なのです。

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コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

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