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今なら語れる「障害を越えて」

第7回 日本の「おもてなし」に期待

 テレビのニュースで「地下鉄ホームから視覚障害者の転落事故発生」の報道がされていました。

 それは8月15日、東京メトロ銀座線「青山一丁目」駅での事故で、またも地下鉄です。監視カメラの記録によると、一部幅が狭くなったホームながら、本人が日常的に利用していた駅でその日も盲導犬を同行して歩行。この時、本来は盲導犬が線路側を歩くのが基本の同行姿勢ですが、その日に限って本人が線路側を歩いていたとのこと。駅員が目撃した際、危険だと気付いて駅構内放送をしたそうですが、その直後にホームから転落したと伝えられています。ホームドアの設置は、国会中継での国土交通大臣の答弁を聞いていて、どうやら時間がかかりそうだと感じています。設置されるまでの間、もし皆さまがこのような危ない場面を見かけることがあれば、ぜひともお声がけいただけるとありがたいです。

 私は白い杖を使用していますが、視覚障害者になった当初、「白い杖を携帯・使用すること=視覚障害者」と見られることに抵抗があり、外出も控えていた時期があります。ですが、白い杖は視覚障害者を守り、他人に自分が視覚障害者であることを知らせ、注意を促す役割もあります。道路交通法でも「目が見えない者は、道路を通行するとき、政令で定める杖を携える」ことを義務付けています。自分だけでなく、他の人に迷惑をかけないために杖の携帯は必須。最近では、白い杖を使用して歩いていると親切な声かけも多くなり、魔法の杖として力を発揮しています。

 一般的な風潮として、盲導犬同行で歩いていると「白い杖を使う人より安全で危険度が少ない」と思われがちですが、視覚障害者であり、見えていないという点は同じです。ホーム転落事故防止において、ホームドアの設置は急務ながら、先に述べたように時間はまだまだかかりそうです。であれば、今できる防止策として声かけが一番有効です。駅・交差点・横断歩道などで、視覚障害者に出会い、少しでも危険と感じた時は、現状を知らせる声かけを日本国民一人一人が「おもてなし」として実行してみてください。ホームドアより一番の防止対策になるかもしれません。

 2020年の東京オリンピックは、競技種目会場を1箇所に集中させたコンパクト型オリンピックをイメージし、「経費削減・東日本大震災からの復興」を世界の皆さまにお見せする約束で、誘致合戦からの勝利を掴み取ったと把握しています。ところが、最近の報道では、当時の予算より大幅にアップ、コンパクトな開催は夢遠くなり、約束は何処へ…です。目的達成のために予算削減の被害を受けるのは弱き者というのが通例で、このままパラリンピックの予算が削減されないことを祈るばかりです。

 テレビのニュースでは、リオパラリンピックで、街の障害物がどのように工夫・改善され、『障害者にとって優しいブラジルになっているか』を参考にするため、日本から多くの視察隊が出かけていると報道されていました。「おもてなし」から始まった東京オリンピック誘致。弱者が犠牲にならないよう、視察隊の皆さんの建設的な報告を期待しています。

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コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

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