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今なら語れる「障害を越えて」

第5回 進化の落とし穴 (2)

 若者の必需品に「携帯電話(スマホ)」があります。これをうまく使いこなし友達と会話することがステータスで、今や小学生までが携帯を所持しているのが現状です。親が子供に携帯電話の所持を許しているのも、登下校、熟を始め習い事など子供だけで出かけることが多くて、途中危険との遭遇も頻繁にあるからでしょう。

 現代の大人にとっても携帯電話を外出時に忘れるのは重大なことであり、極端に話せば携帯がないと露頭に迷うも同然、個人情報が全て記憶されているので、連絡手段がなくなり、まして相手の電話番号が分らないのでお手上げ。遅刻承知で家に引き返すことが当り前だという話しも聞きます。

 最近のニュースで、中学1年生が不審者に誘拐拉致され、2年間も犯人の部屋に監禁されていた事件がありました。彼女は監禁中に偶然犯人の部屋で拾った500円硬貨を親と連絡する時の電話代、自分を証明出来る品として生徒手帳を大切に保管していたそうです。

 やっとそのチャンスが訪れ、500円硬貨を10円硬貨に両替えして公衆電話から親に電話し、警察には保護依頼をして無事に親元に帰る事が出来ました。彼女が助かった要因の一つは、落着いて電話を掛けて助けを呼べたことで、本人は恐怖の中で何時も手順を繰り返していたのだそうです。

 この事件後、公衆電話の利用方法について、都内で小中学生に問いかけをしているラジオ番組がありました。街中にある電話ボックスの存在、利用の手順、料金、相手先の電話番号が記憶出来ているかなど、質問に対して回答出来ない生徒達が多くいる放送を聞き、驚きました。

 小学生、中学1,2年生は公衆電話の使い方が分らないほど急速な時代の流れの中、生まれた時から携帯電話が存在し、公衆電話の利用など、まずリアルタイムでは経験しないでしょう。

 私も時代遅れの年寄りで、その上、視覚障害者になり、世の中急速に流行る新商品にはとてもとてもついてはいけないと落ち込んでおりましたが、先端を走っていると思われた若者も、実は同じ境遇に立たされているのだと始めて知りました。

 この事件から、子供達の防犯対策として公衆電話の使用手順を学習させることは、急速な時代変化に取残されない為にも、アナログ時代へ立ち返り見直しをする意味でも必要なのかもしれません。

 例えば、電化時代の停電でも、明かりを求めてロウソクを使用する場合、これはクリスマスキャンドルや誕生日ケーキで使用していますが、はたしてマッチのすり方は?マッチ箱は見たことがある?エレベーターの停止中、とっさに非常階段が頭に浮かぶ?など、落とし穴はたくさんありそうです。

 そうそう私は何時も「ホイッスル(笛)」を携帯して助けを呼べるようにしておくことを忘れません。非常時対策は自立防衛に少しは役立つかも知れません。

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コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

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