へるぱ!

今なら語れる「障害を越えて」

第4回 進化の落とし穴

前回のコラムにて、社会の合理化に苦言を申しましたが、またしても4月4日の午後3時頃、東京メトロ地下鉄半蔵門線の九段下駅で、電車ドアにベビーカーが挟まったまま発車し、引きずられたベビーカーがホーム先端の柵に衝突して大破するという事故が起きました。幸いにして赤ん坊は母親に抱っこされ乗車していたため、最悪の事態はまぬがれたものの、一つ間違えば人身を伴う大事故につながっていたかもしれません。

先日の私同様、乗務員の安全確認ミスを認めた東京メトロ・奥義光社長が自ら出向き、石井国土交通大臣に謝罪するテレビ放映がありました。やや離れた取手での私の事故はそれに比べるとだいぶお粗末な扱いだったことが実感できます。命こそ保たれた人身事故でありながら、鉄道会社の担当課長が我が家へ謝罪に訪れて「終わり」、とはいかがなものでしょうか。都心ではなく地方の出来事とはいえ、同じく危険にさらされた命。取扱いの格差に私の折れた腕が一層痛む思いがしました。

こうした報道により、全国で同様の鉄道事故が起きていながら、公表されずに担当者の謝罪で済まされているケースも多いのかもしれないという疑問が湧いてきました。またそうした事実が、同様の事故を繰り返す、撲滅できない要因の1つだとも私は考えるのです。いつだって改善策のお決まり文句は「安全確認を徹底させ、今後同様の事故を防止する」というのもどうなのでしょう。

繰り返される交通事故に「安全第一」を旗印にしながら、安全管理の面で、乗務員が適正に人員配置されているのか甚だ疑問です。命を預かる職業として合理化を強調しすぎた促進反動を感じずにはいられません。どこかに落とし穴があり、見直しを余儀なくされる時期も近いことでしょう。

今回は確認ミスに加え、緊急対応信号を発しているにも関かわらず、対応しなかった二重ミスによる事故。危機管理マニュアルがあるにもかかわらず、肝心な時に適正に取り扱われていなかったわけです。原因を調査すればするほど、人的ミスが大半であることが明らか。このままでは障害者に限らず、健常者の安全ハードルも高まる一方です。

『自立生活』を目標に努力している人達がこの社会にも生活していることを忘れず、会社の合理化を進化させていってほしいと願うばかりです。ぜひともお願いします。

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コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

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