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気になる!介護の問題

第10回 「キャリアパスモデル」の考え方(1)

介護職員処遇改善交付金には、長期的に介護職員を確保・定着させるため、平成22年10月からは新たにキャリアパスなどの要件が設けられます。このため、早めにキャリアパス要件を整備する必要があると同時に、8月までに取り組んだ処遇改善を具体的に示し、そのかかった費用も提出しなければなりません。キャリアパスモデルについては、すでに厚生労働省のホームページにも公表されていますが、今回は試案をご紹介したいと思います。

現在、要支援や要介護と認定された方々に共通していえることは、きっかけや原因が様々であれ、どの方も生活が不活発である悪循環の連鎖に陥っている、ということです。介護保険は、色々なサービスを設置して、その方々の生活を建て直すことを支援する制度。訪問介護は、そのサービスの中でも最も日々の暮らしに密着したサービスなのです。
とはいえ、生活を建て直すことは容易ではありません。一度悪循環の流れができてしまうと「仕方がない」とあきらめが先に立ち、意欲もわかず、なかなか脱出できないこともあります。しかし「もっと悪くなりたい・・・」と自分で不自由の倍加を願う人はいないでしょう。意欲や願いは隠れている事が多いのです。
直接、生活の中に入ってあれこれと暮らしを手伝う訪問介護は、その方の本当の願いや想い、口惜しさや力強さに触れる場面に多く接します。その方のもつ想いや願いを実現する可能性はないか、潜在能力を引き出すことはできないか、などと気づく立場にあります。暮らしの場面場面でこれらを発見し、報告することが訪問介護の大切な役割です。他サービス導入のきっかけや調整の指標ともなるものです。そのため、力量も求められ、人材育成が事業運営の鍵となっています。

介護労働安定センターから毎年発表される「介護労働実態調査」によれば、正社員比率がもっとも低い事業は訪問介護事業所です。平成20年度の数字では(正社員16.6%、非正社員81.0%、不明2.4%)となっています。
一方で、離職率は他の形態では見られない現象がおきています。平成20年度調査によると、社員の離職率が訪問介護では正社員22.1%、非正社員13.1%となっており、非正社員の離職率を大きく上回っています。(図1参照)この傾向は、平成19年度調査(図2参照)に比べ一段と強まっているのが大変気になるところです。平成19年の離職率、正社員18.2%、非正社員16.6%からは正社員が4ポイント上がっており、非正社員が3ポイント強下がっています。

訪問介護員の離職率

訪問介護では正社員の大半がサービス提供責任者であると推測されることから、経験を積む登録型ヘルパーと経験の浅いサービス提供責任者との図式が増えていると考えられます。利用者にもっとも近い専門職と位置付けられ、訪問介護の要であるサービス提供責任者の熟練度を如何に高めるかが、今後の大きな課題といえるでしょう。キャリアパスを考える時、この課題をクリアする仕組みが求められるのです。役割をきちんと果たせる人材育成にかかっています。これらを踏まえた具体的な試案を次回ご提示したいと思います。

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コラムニスト紹介

田中 典子

NPO法人東京ケアネットワーク・けあねっと研修室長。
介護福祉士、介護支援専門員指導者、介護技術講習会主任指導者。

プロフィール

1970年から2000年まで約30年間、東京都葛飾区役所にてホームヘルパー職として勤務。

2000年 退職後『ohashi式』発案者の故大橋佳子氏と「NPO法人東京ケアネットワーク」設立に参加し、理事として介護相談および研修事業に携わる。

ヘルパー研修の他、訪問介護計画書の作成演習など多数の研修講師を担当し、ヘルパー業務支援の為の研修にも携わる。

田中典子先生は平成28年7月12日、享年77歳にてご逝去されました。
心より哀悼の意を表するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

著書・出版

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