へるぱ!

学ぼう!「医療」と「介護」

第2回 天網恢恢、疎にして漏らさず

介護の世界が大揺れに揺れています。
グッドウィルグループの傘下にある介護事業所は、施設介護事業、居宅介護事業とも全部、ニチイ学館その他に委譲される事が決定しました。

青森県で平成18年7月4日に、兵庫県で18年12月7日にコムスンの不正が発生しましたが、新規制では事件後5年間は同じ役員が事業を指定したり更新したりすることができません。そのため、グッドウィルグループは実際的に事業を継続することは困難となり、事実上すべての介護サービス事業から撤退を余儀なくされたことになります。

コムスンの事件が「介護に対する信頼全般」に与えた不安は大きく、介護に従事している人たちのショックも大きかったと思います。「このような事件はコムスンだけでしょうか」、「これからもこういった事件は起こるのでしょうか」と私に聞きにこられる方もいまだに後を絶ちません。また、会社の示す営業方針や個人ノルマなどの厳しい条件と利用者との板ばさみに苦しむヘルパーさんたちの声もよく耳にします。日ごろからまじめに、地道に時間をかけて利用者との信頼関係を築いてきた介護従事者にとっては、今回の件によって利用者との信頼関係が音を立てて崩れていく気がして不安なのでしょう。

不正による事業所取り消し数を調べると、介護事業所がトップで、次に居宅介護支援事業所です。
平成18年の介護保険法改正によって、介護保険適正化事業が確立しつつあります。従来は見逃されていたかもしれないことが、これからは見逃されないようになる、その意味でコムスン事件は象徴的な出来事であったということができます。

「天網恢恢、疎にして漏らさず」という言葉があります。悪事をなしたものは必ず罰を受ける。悪いことがいつまでも続くはずがありません。まじめに王道を歩いているものが評価される、そんな当たり前のことを期待していきたいですね。

◆天網恢恢、疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず : 「老子」73章)

天の張る網は、広くて一見目が粗いようであるが、悪人を網の目から漏らすことはない。
悪事を行えば必ず捕らえられ、天罰をこうむるということ。
「天網」とは、天が世の理非を正すために張った網のこと。「恢恢」とは、広く、ゆったりとしているさま。

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コラムニスト紹介

式 恵美子

兵庫大学 健康科学部看護学科教授

プロフィール

【資格】
日本赤十字短大、東洋大学大学院(福祉社会システム専攻)修了。看護師、社会福祉士、介護支援専門員、認知症ケア専門士、福祉住環境コーディネーターの資格を持つ。

【職歴】
日本赤十字医療センター等の病院にて看護職(婦長、看護部長)約20年、看護学教育約20年、介護福祉士教育5年を経験。杏林大学高齢者看護学講師、国際医療福祉大学助教授、創造学園大学教授を経て2007年4月より現職。訪問看護、介護支援専門員の経験あり。

【社会活動】
NPO日本介護予防協会理事、介護実技国家試験委員、東京都福祉サービス第三者評価機構評価委員。高齢者の看護・介護、在宅ケアを研究領域とし、特に「介護予防」に焦点を当てて活動中。

著書・出版

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