介護を受けるプロ
第30回 真っ赤な花のように咲かせたい 2018/4/25
最近、私のところに来てくださっているヘルパーさんは、60歳前後の人が増えてきています。私も同時に歳をとってきているので話がよく合います。67歳のヘルパーさんが「介護ロボットができて、小山内さんを立たせることができたなら、私、95歳まで働きに来ますよ」とたくましいことを言ってくださいました。
スウェーデンには福祉研究所があり、ケアを受ける障がい者と、機械をつくる専門家と、美しいものをつくるデザイナーの三者を雇い、さまざまな障がい者の意見を聞きながら、その人に合った福祉機器をつくっています。年間何百億円という予算があり、そこで働く障がい者も多いといいます。障がいがあるからこそ、どういう器具が欲しいのかが分かるので、意見を伝えながらつくっていました。
障がいのある人の家の天井にはレールがついていて、リフトをぶら下げると簡単に障がい者を立たせることができ、また、抱き上げることも容易です。日本にもああいうシステムができたならば、歳をとったヘルパーさんでもケアができるのではないかと思いました。私のマンションは天井がコンクリートなので、レールをつけられますが、一般のアパートだと天井が弱いのでつけられないかもしれません。ケアしやすい器具を真剣に考えて、元気な高齢者と障がい者が助け合いながら生きることが大切なのではないかと思うのです。
私の家の窓際には、真っ赤なビロード色のゼラニウムが満開に咲いています。この花をいただいたときは枯れそうでした。しかし、土を足し、栄養をたくさんあげ、太陽のあたるところに置いたところ、素晴らしく元気になりました。ヘルパーさんたちの心にも太陽と栄養をあげると、手の花がぱっと咲くのではないかと考えています。太陽と栄養は何なのかは考え中です。ケアを受けている人たちの優しさかもしれません。
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小山内 美智子
障害者自立生活センター 札幌いちご会 理事長
前社会福祉法人アンビシャス施設長
プロフィール
1953年生まれ。
障害者自立生活センター 札幌いちご会 理事長。前社会福祉法人アンビシャス施設長。
自身、脳性麻痺で「ケアを受けるプロ」を自認。
2008年 悪性リンパ腫を発病したが、半年の闘病生活を経て、社会復帰を果たす。
北海道大学医学部作業療法学科で教鞭をとるなど、介護教育に力を入れている。
また、著書『わたし、生きるからね』(岩波書店)などほか多数あり。