へるぱ!

介護を受けるプロ

第29回 ヘルパーという職業に就いてほしい       2017/12/12

最近、毛糸で編んだネックレスが流行っているようだ。黒柳徹子さんが青とグレーの葉っぱの形をした毛糸のネックレスをしていた。私は心が動いた。

小学校3年生のとき、友達がかぎ針で編み物をしていた。私も足指でできるかもしれないと思い、道具を借りてやってみた。くさり編みはすぐにできた。細編みや長編みは時間がかかったがマスターしたので、母に毛糸とかぎ針を買ってきてほしいと頼んだところ、「あなた何言うのよ、編み物なんてできないでしょう」と言われた。でも私はしつこく買ってきてほしいと頼み、母は根負けして私の望みのものを買ってきてくれた。

足指に毛糸を巻きつけ編んでみせた。母は私の足を握りながら「あなたには負けたよ」と言い、私の足の甲には涙が流れてきた。それから母は足を使うことを許してくれたのである。マフラーやショールやパッチワークをたくさん作り、ベッドカバーまで手作りした。心が動いたそのネックレスがあの時代に流行っていたならば、私はもっとたくさん編んで、お金も儲かったかもしれない。そう思うと悔しくてならない。

私は地域で生きるために障がい者運動を行った。その資金を集めるために毛糸で針刺を編んだ。針がさびないように、中には人の髪の毛を美容室でもらってきて入れた。今も1個だけ残っている。それは私の青春時代の宝物である。

「ネックレス編みたいな。でも、もう昔のように左足が動かなくなってしまった。悔しいな」と一人で何度もつぶやいている。

いくら夢があってもある程度のお金がなければ、夢は実現できないことを嫌というほど知った。原稿を書いているときも、この原稿の1行が1円になるか、10円になるかと考えて書いている。そうして資金を運動に使っていたからだ。お金に困っている仲間たち、毛糸でネックレスを編んでください。デザインが素敵なら高く売れますよ。

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コラムニスト紹介

小山内 美智子

障害者自立生活センター 札幌いちご会 理事長
前社会福祉法人アンビシャス施設長

プロフィール

1953年生まれ。
障害者自立生活センター 札幌いちご会 理事長。前社会福祉法人アンビシャス施設長。
自身、脳性麻痺で「ケアを受けるプロ」を自認。

2008年 悪性リンパ腫を発病したが、半年の闘病生活を経て、社会復帰を果たす。
北海道大学医学部作業療法学科で教鞭をとるなど、介護教育に力を入れている。

また、著書『わたし、生きるからね』(岩波書店)などほか多数あり。

著書・出版

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