へるぱ!

介護を受けるプロ

第22回 キッチンにあったスマートフォン       2016/1/6

昨日の夕食は豆腐とエビと長ネギの炒め物であった。とてもおいしく、ウイスキーに合った。しかし、これをどうやって作ったのか、と私は考えた。料理の得意なヘルパーさんだったので、全部おまかせしていた。インスタントのたれでないことは間違いない。味付けの仕方がわからないまま食べてもよいのか考えた。これは自立生活ではないと思った。あまりにもおいしかったので、ヘルパーさんに味付けを聞いた。しかし一度では覚えきれず「今度レシピを書いてくださいね」と言うと「わかりました」と答えてくださった。

このおいしさを他のヘルパーさんにも覚えていただくのが、私の本当の生活だろう。 若いヘルパーさんは、スマートフォンをキッチンの壁に置き、レシピを見ながら料理を作る。シャレた風景に、私も手が使えたらあのように料理をしてみたいなと思った。

テレビではたくさんの料理レシピが出る。1回で暗記できたときは、やってみることにしている。カレーライスやシチューにはじゃがいもを入れず、キャベツをドサッと多く入れる。ヘルシーでとてもおいしい。ヘルパーさんがそれを見て「おいしそうね。私もやってみようかしら」と言ってくださる。私のヘルパーさんたちは、自分の家でもキャベツカレーを作るようになった。

今年は梅干しを作ってみようかと考えると、心が燃える。しかし、梅を漬けておき、裏表を乾かさなければいけないとレシピにあった。途方もなく時間がかかりそうだ。昼間働いている私には無理かなと半分あきらめている。

新しい料理をヘルパーさんと一緒にチャレンジすることは、関係性が豊かになり楽しい思い出づくりにもなる。ヘルパーの仕事は大変だ、とばかりも言っていられない。ケアを受ける側が一緒に楽しめることを提供するのも、ヘルパー人材を1人でも多く増やすテクニックかもしれないと最近強く思う。

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コラムニスト紹介

小山内 美智子

障害者自立生活センター 札幌いちご会 理事長
前社会福祉法人アンビシャス施設長

プロフィール

1953年生まれ。
障害者自立生活センター 札幌いちご会 理事長。前社会福祉法人アンビシャス施設長。
自身、脳性麻痺で「ケアを受けるプロ」を自認。

2008年 悪性リンパ腫を発病したが、半年の闘病生活を経て、社会復帰を果たす。
北海道大学医学部作業療法学科で教鞭をとるなど、介護教育に力を入れている。

また、著書『わたし、生きるからね』(岩波書店)などほか多数あり。

著書・出版

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