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第5回 淘汰の嵐をどう乗り切るか!利用者本位の訪問介護サービスへ

昨年2月、本コラムの開始にあたり、訪問介護サービス事業の事業環境(ライフステージ)について「幼年期を終えた児童が、いきなり高学年課程コースの競争環境にさらされることで、休学・退学者が多数でてくる」と予想しましたが、この1年を振りかえると残念ながらこの予想は現実のものとなりました。

改正3年目を迎えようとするなか、この1月16日開催の『全国厚生労働関係部局長会議』で示された老健局の2008(H20)年度の重点事項及び開示資料をみると、老健局は2008年度を介護給付費用抑制を狙いとする今回改正の総仕上げの年と位置づけていることがうかがわれ、介護保険給付費用の抑制継続 (国庫負担分は前年比マイナス予算)、給付適正化運動の継続、指導・監査体制の強化など、事業者また利用者にとっても厳しい環境が続くと予想されます。加えて08年度は改正介護福祉士制度の施行、介護職員養成基礎研修制度の本格化など人材育成・確保面でも事業者にとって大きな課題が控えています。

一方、今回改正後の介護サービス事業全般の状況については、低い賃金、将来への不安、燃え尽きなどによる介護職人材の枯渇が介護保険制度の維持・存続を揺るがしかねない問題と意識され、多くの識者、関係団体などから賃金引上げなど介護従事者の就業環境改善の必要性が叫ばれ、コムスン問題に端を発した介護サービス事業規制のあり方に関連し恣意的な指導・監督及びサービスの利用制限、療養型医療施設の廃止、第二老健施設の新設などが問題点として取り上げられています。

これらは一言で言えば、厚労省・行政は給付費用抑制の名のもとに「利用者本位のサービス」、「サービス供給体制の整備」をないがしろにしているのではないか、という声に集約され、介護保険制度は開始10年目を前に、早くも医療制度と同じように「給付費用抑制⇒サービス供給体制の衰弱・疲弊」というに問題に直面しつつあるともいえます。

老健局は『介護事業運営適正化有識者会議』、『介護サービス事業実態把握W.T』の報告を受け、次のことに着手する模様です。

■事業規制の見直し/更新手続き、連座制の適応範囲等、
■指導・監査の標準化
■サービス利用規制の標準化
■サービス業務手順の簡素化/事務作業の軽減等・・・など

しかし報酬改定、介護従事者の待遇改善、人材確保などの抜本的な課題解決に踏み込むことまでは考えていないようです。

08年度の介護保険給付サービス事業の環境は事業者また利用者にとっても引き続き厳しいものが予想されますが、マスコミまた政治課題として介護保険制度の改善を巡る議論が活発に行われることを期待したいところです。

また、本コラムの開始にあたり訪問介護事業者の課題として「利用者ニーズを汲み上げた事業者からの提案能力が試される」と記しましたが、今や「多種多様なニーズを持つ訪問介護サービス利用者を守るのはサービス事業者」しかいないという状況にあるといえます。

「給付適正化」の名のもとで訪問介護給付サービスの利用が制限されるなか、事業者は利用者本位の立場に立って「保険外サービスを含めたより良い訪問介護の提供」を前提に、そのなかでの介護保険給付サービスを如何に有効に活用するか、といった視点で取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。

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コラムニスト紹介

小田 正夫

ヘルスケアビジネスコンサルタント

プロフィール

1947年福岡県生まれ。北海道大学経済学部卒。

1979年窶ヮG誌編集・取材記者を経て、コンサルテイングファーム、民間シンクタンクにて経営コンサルテンング業務に従事。
医療、介護関係をはじめとする各種企業、団体をクライアントにマーケテイングリサーチ、ケーススタデイをもとにした事業展開への提言、助言を行う。

2006年窶茀(財)医療経済研究・社会保険福祉協会 客員研究員としてヘルスケアビジネスの調査・研究をもとに介護サービス事業者への経営情報の提供、助言を行っている。

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