へるぱ!

必見!介護のツボ

第1回 状況を把握し、一番いい方法を考えることができる人になろう

「明日はだれが来てくれるの?本当に来てくれるの?」
「はい、ヘルパーの佐藤がお伺いしますので、どうぞ安心してください」

一人暮らしの水越さん(仮名)からケア・センターやわらぎ(以下「やわらぎ」)に8回目の電話があった。
「昨日は13回あったから、まだかかってきますね」―不安な水越さんは夕方になると事務所へ電話をしてくる。
なんとか安心できる状況を作らなければと、ミーティングを開催した。

通常行なう、要因の洗いだし、その解決方法を皆で考えるというパターンで始めたら、すでに話し合いはしていて、策は考えられないという。
いやそんなことはないはずだと、言いだしっぺの私としてはもう一度洗い出してみようと呼びかけた。
解決できていないことが1点だけあった。

水越さんはヘルパーが帰る時に、りんごやらパンやら家にある食べ物をヘルパーさんに持っていってと、毎度懇願する。
けれど、やわらぎは物やお金を頂く事を厳禁しているので、ヘルパーは頂くことはできないと、頑なに固辞してきた。
私は「ああ、これだ!」と直感した。

「明日からは頂くことにしよう。ありがとうと言って頂いてください」と決めた。
そして、なにを頂いたか、事務所に報告してくださいと取り決めた。
1日、1日とだんだんに電話が減り、1ヶ月にはまったく無くなった。

どんな仕事も基本があって応用がある。
しかし、介護現場はすべて一人一人の違いが当たり前。
それでも基本や約束事はキチンとしていなければならないし、すべて特別事例として扱うことはリスクが高すぎることになる。

そこで試されるのが、私たちの判断能力なのだ。
基本はキチンと踏まえた上で、応用をどのように決めていくかということである。
ケースバイケースという言葉と意味があるが、これとはすこし異なる考えで、すべてをケースバイケースということではない。
ここを間違えずに理解することがポイントである。

一覧へ戻る

コラムニスト紹介

石川 治江

社会福祉法人にんじんの会理事長
NPO法人ケア・センターやわらぎ代表理事

プロフィール

外資系組織にて秘書を務める。
その後、居酒屋、喫茶店などを経て、障害者施設を訪れたのを機に1981年障害者と共に立川駅にエレベーター設置運動をはじめ福祉の道に。

1987年窶・ァ川市に「ケア・センターやわらぎ」を設立し、日本ではじめて24時間365日の在宅福祉サービスを開始。
長期にわたる介護にはシステムが必要と「ケース管理業務支援情報システム」を開発する。

1997年窶ヮミ会福祉法人にんじんの会を設立。2000年には、「ケア・センターやわらぎ」をNPO法人に。

2001年窶ラ諟・TービスではじめてISO9001を訪問介護、訪問看護、通所介護、居宅介護支援の4事業で取得、やわらぎのシステムが介護保険制度の土台となったほか、各種審議会などでも発言している。
立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科の講師も勤める。

著書・出版

トップページへ