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第25回 実地指導の見直し (運用見直しについて自治体へ通知)~ 確認項目を絞っての指導の標準化・効率化 ~       2019/7/10

 今回のコラムは、実地指導の際に求められる文書が自治体によって異なる“ローカルルール”の解消などに向け、厚生労働省がまとめた運用指針の話題です。

 厚生労働省は、多くの事業所への指導対応ができるような効率化(訪問介護では、確認項目数が平成17年度以前の約90項目に比べ、半数以下の40項目程度に)を、そして、指導内容においても全国的な標準化と文書の軽減による事務量軽減化が図れるよう「実地指導の標準化・効率運用指針(介護保険指導室長より各都道府県等の介護保険施設等指導監査担当課長宛令和元年5月29日通知)」を定めました。
 これは、事業所数やサービス種類の増加で現指導内容を維持し対応していくことが難しくなったこと、そして、自治体間において指導内容や確認項目・確認文書等に差異が見られる状況を踏まえたものです。
 “運用指針の概要”並びに“訪問介護における標準確認項目と標準確認文書”は下記のとおりです。

 今後は、指導監督通知や当該指針を踏まえた実地指導が行われることになります。指定事業者は、常に、法令遵守業務を求められていますが、実地指導対策面を考えると、(実地指導における)“標準確認項目”や“標準確認文書”に該当する業務について、特に、意識を持ってしっかりと対処できるかがポイントとなります。さらに付け加えるとすれば、“標準確認項目”等に該当する法令が何を規定し、何を運用上事業者(従事者)に求めているかについて再確認したうえで、日々の業務等にあたることが、有効的かつ効率的な実地指導対策となると思います。
 また、「介護保険施設等実地指導マニュアル(平成22年3月改訂版)」についても、今後の当該指針による指導実施状況や課題等を踏まえ、見直す予定のようです。

【運用指針の概要】

背 景 介護サービス事業所の増加         自治体間の確認項目や実施状況に差異
標準化・効率化が必要
運用指針
の内容
「標準確認項目」「標準確認文書」の設定 ・原則として「標準確認項目」以外の項目の確認は行わず、「標準確認文書」以外の文書は求めない
実地指導の所要時間の短縮 ・「標準確認項目」を踏まえて実地指導を行うことで、一の事業所当たりの所要時間の 短縮を図る
実地指導の頻度 ・事業所の指定有効期間内(6年間)に1回実施することを基本とし、過去の実地指導等において問題がないと認められる事業所は、集団指導のみとすることも可能とする
同一所在地等の実地指導の同時実施 ・同一所在地や近隣の事業所に対しては、できるだけ同日又は連続した日程で実施する
関連する法律に基づく指導・監査の同時実施 ・老人福祉法等に基づく指導・監査等との合同実施については、同日又は連続した日程での実施を一層推進する
運用の標準化 ・実施通知は原則として実施の1ヶ月前までに通知するとともに、当日の概ねの流れも示すものとする
・利用者の記録等の確認は原則3名(居宅介護支援は、介護支援専門員1人当たり1~2名)までとする
実地指導における文書の効率的活用 ・確認する文書は、原則として実地指導の前年度から直近の実績までの書類とする
・事前又は当日の提出文書は1部とし、自治体が既に保有している文書の再提出は不要とする
より多くの事業所を指導
効 果 サービスの質の確保
利用者保護

【訪問介護における標準確認項目と標準確認文書】

人 員 訪問介護員等の員数
(第5条)
・利用者に対し、職員数は適切であるか
・必要な資格を有しているか
・勤務実績表/タイムカード
・勤務体制一覧表
・従業員の資格証
管理者
(第6条)
・管理者は常勤専従か、他の職務を兼務している場合、兼務体制は適切か ・管理者の雇用形態が分かる文書
・管理者の勤務実績表/タイムカード
運 営 内容及び手続の説明及び同意
(第8条)
・利用者又はその家族への説明と同意の手続きを取っているか
・重要事項説明書の内容に不備はないか
・重要事項説明書
・利用契約書(利用者又は家族の署名、捺印)
受給資格等の確認
(第11条)
・被保険者資格、要介護認定の有無、要介護認定の有効期限を確認しているか ・介護保険番号、有効期限等を確認している記録等
心身の状況等の把握
(第13条)
・サービス担当者会議等に参加し、利用者の心身の状況把握に努めているか ・サービス担当者会議の記録
居宅介護支援事業者等との連携
(第14条)
・サービス担当者会議を通じて介護支援専門員や他サービスと連携しているか ・サービス担当者会議の記録
居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
(第16条)
・居宅サービス計画に沿ったサービスが提供されているか ・居宅サービス計画
サービス提供の記録
(第19条)
・訪問介護計画にある目標を達成するための具体的なサービス内容が記載されているか
・日々のサービスについて、具体的な内容や利用者の心身の状況等を記しているか
・サービス提供記録
利用料等の受領
(第20条)
・利用者からの費用徴収は適切に行われているか
・領収書を発行しているか
・医療費控除の記載は適切か
・請求書
・領収書
訪問介護計画の作成
(第24条)
・居宅サービス計画に基づいて訪問介護計画が立てられているか
・利用者の心身の状況、希望および環境を踏まえて訪問介護計画が立てられているか
・サービスの具体的内容、時間、日程等が明らかになっているか
・利用者又はその家族への説明・同意・交付は行われているか
・目標の達成状況は記載されているか
・達成状況に基づき、新たな訪問介護計画が立てられているか
・居宅サービス計画
・訪問介護計画(利用者又は家 族の署名、捺印)
・アセスメントシート
・モニタリングシート
緊急時等の対応
(第27条)
・緊急時対応マニュアル等が整備されているか
・緊急事態が発生した場合、速やかに主治の医師に連絡しているか
・緊急時対応マニュアル
・サービス提供記録
運営規程
(第29条)
・運営における以下の重要事項について定めているか
 1.事業の目的及び運営の方針
 2.従業者の職種、員数及び職務の内容
 3.営業日及び営業時間
 4.指定訪問介護の内容及び利用料その他の費用の額
 5.通常の事業の実施地域
 6.緊急時等における対応方法
 7.その他運営に関する重要事項
・運営規程
・重要事項説明書
勤務体制の確保等
(第30条)
・サービス提供は事業所の従業員によって行われているか
・資質向上のために研修の機会を確保しているか
・雇用の形態(常勤・非常勤)がわかる文書・研修計画、 実施記録
秘密保持
(第33条)
・個人情報の利用に当たり、利用者及び家族から同意を得ているか
・退職者を含む、従業員が利用者の秘密を保持することを誓約しているか
・個人情報同意書
・従業員の秘密保持誓約書
広告
(第34条)
・広告は虚偽又は誇大となっていないか ・パンフレット/チラシ
苦情処理
(第36条)
・苦情受付の窓口があるか
・苦情の受付、内容等を記録、保管しているか
・苦情内容を踏まえたサービスの質の向上の取組を行っているか
・苦情の受付簿
・苦情者への対応記録
・苦情対応マニュアル
事故発生時の対応
(第37条)
・事故が発生した場合の対応方法は定まっているか
・市町村、家族、介護支援専門員に報告しているか
・事故状況、対応経過が記録されているか
・損害賠償すべき事故が発生した場合に、速やかに賠償を行うための対策を講じているか
・再発防止のための取組を行っているか
・事故対応マニュアル
・市町村、家族、介護支援専門員への報告記録
・再発防止策の検討の記録
・ヒアリハットの記録

注)( )は指定居宅サービス等の事業の人員、設備および運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)の当該条項

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コラムニスト紹介

堀口 直孝

シルバーケア・サービス豊住 顧問
経営コンサルタント

プロフィール

看護婦家政婦紹介所の上部団体である(社)日本臨床看護家政協会の管理者として家政婦の職場確保を支援するための事業の開発推進にあたる。

平成6年 健康保険法の改正により病院の付き添い介護が廃止されたため、家政婦たちの職場を在宅へシフトするためのモデル事業の実施会社を同協会内に設立。同社において在宅介護サービスを立ち上げ、東京都11区よりホームヘルプ事業を受託、介護保険制度施行後、指定事業者として管理、運営を行う。

平成14年 (株)ふれんどりーホームサービスを設立し、東京都千代田区を中心に訪問介護、居宅介護支援事業を実施するかたわら、同事業のコンサルタントも行う。平成30年より現職。

著書・出版

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