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第18回 訪問介護における実地指導への対応ポイント(5)       2015/8/11

実践的な検証ポイント!!
~ サービス付き高齢者向け住宅に併設している事業所に関すること ~

 第17回に引き続いて、実地指導への対応ポイントについて掲載いたしました。そして今回はサービス付き高齢者向け住宅に併設事業所に関する具体的な検証ポイントについてです。
 高齢者のニーズにあった住宅の提供を基本とし、安心・安全・健康を確保するための医療・介護・福祉等が日常生活圏で提供される「地域包括ケアシステム」の実現に向けた「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の改正が行われるなど、高齢者住宅等の需給はますます増えるものと思われます。しかし一方で、併設している介護事業所の過剰介護等による多額の報酬返戻や指定取消の事例が後を絶たないことも事実です。
 訪問介護は、サービス付き高齢者向け住宅でサービス提供を行ったとしても、居宅サービスで施設サービスではありません。居宅サービスとしての指定訪問介護の取扱いについて、法令に照らしながらしっかりと運営面でも介護報酬面でも適切に行うことが何よりも求められます。

検証事項
【指摘事例の主な発生要因】
◆法令の理解不足による
◆(介護保険関係法令・労働法規等)法令遵守を軽視した事業運営による
 ※ 家賃や管理費を抑えるため、介護保険の売上を収入源とする介護保険依存型の経営によるもの
【訪問介護などの居宅サービスの提供の要件】
≪平成14年3月19日「厚生労働省老健局介護保険課・振興課
  ⇒ 各都道府県」事務連絡(居宅サービスと実質的な「施設」との関係について)≫
◆ 居宅サービスは、居宅と厚生労働省で定める施設(養護老人ホーム・軽費老人ホーム・有料老人ホーム)において行われることとされ、これらにおいて指定居宅サービスを受けた費用について保険給付が行われる
◆ しかし、“どのような空間か”“どのような者を対象としているか”“どのようにサービスが提供されているか”などといった観点を踏まえつつ総合的に判断して“施設”として実態を有する場合は、居宅サービスにあたらず居宅介護サービス費の支払対象外となる
※【施設と判断される可能性のある例】
  ケア付き住宅等と称しながら、一室に多数の高齢者を収容していたり、極めて狭い個室に収容したりした上でサービス提供が行われる場合
  身体介護を複数の入居者に、同時に又は短時間でさみだれ式(ひとりのサービスが終えれば次の人と何度も繰り返しやるやり方)に行なわれるサービスの場合
  → 居宅サービス(指定訪問介護)ではなく施設的なサービスと判断される可能性あり
1.指定基準(人員基準・設備基準・運営基準)並びに労働法規関係等について
◆ 適切なアセスメント等に基づく個別援助計画(自立支援に向けた内容)に沿って、サービス提供がされていますか
◆ プラン内容が特定な(併設されている事業所からの)サービスに偏っていないか
◆区分支給限度額いっぱい利用するプランとなっていないか
◆ サービス事業者の選択権が利用者にありますか(利用者による選択が可能となっているか)
◆ 入居時に、施設側が運営している事業所のサービスに限定(抱え込み)したような利用説明(入居契約やパンフレット内容が強要するようなものになっている)を行なっていないか
◆ 介護保険サービスと高齢者住宅が行なうサービスの区分が明確になっていますか
◆ 介護事業所の訪問介護と高齢者住宅の業務を兼務している職員は、勤務表に従って適切に各々の業務が行われていますか
  → 職員もしっかりと区分けができておらず、勤務が混然一体となっていていませんか
◆ 専ら訪問介護業務に従事しなければならない常勤のサービス提供責任者が、勤務時間中に高齢者住宅の業務を行なっていないですか
2.介護報酬算定基準における検証ポイント
◆ 身体介護は、1人の利用者に対して訪問介護員等1対1で行うものですが、1人の訪問介護員が1度に複数の利用者に身体介護を行なったとして、それぞれの所定単位数を請求していることはありませんか
 ※ 当該住宅で行われるサービス提供だけをもって、特別な事情(利用者個々の身体状況や生活実態により、所定単位数を利用者数で除したそれぞれの単位数を算定できる場合)とはならない
◆ サービス提供実績ありきで後付けによる報酬請求となっていないか
 ※ 指定訪問介護は、居宅サービス計画(訪問介護計画)に沿って提供されなければならない
◆ 主が安否確認や健康チェックであるものを、若干の身体介護又は生活援助をやったとして訪問介護費を請求していませんか
 ※ 主として単なる安否確認や健康チェックで、それに伴い若干の身体介護や生活援助を行なった場合は、訪問介護費は算定されない
3.自治体が指摘する問題事例
≪囲い込み≫
□ 住宅と同一法人が経営する介護事業所のサービス利用を強要していた
□ 契約時に、区分支給限度額いっぱいの併設事業所のサービス利用を入居条件としていた
□ 入居者のほぼ全員が併設の介護事業所のサービスを利用していた
≪過剰サービス≫
□ 月末になると(区分支給限度額ギリギリまで)不自然にサービス利用量が増える
□ 自力でトイレに行ける利用者に、訪問介護による排泄介助(おむつ交換)を毎日実施したことになっていた     など
4.指定取消し事例
□ 訪問介護員と住宅管理職員等と兼務し、住宅におけるサービスと指定訪問介護が混同して行われ、虚偽のサービス提供記録をもって、不正に介護報酬を請求していた
□ 常勤のサービス提供責任者が配置されていないという人員基準違反をしていた
□ 訪問介護計画が適切に作成されていないなど、著しい運営基準違反をしていた
□ 無資格者によるサービス提供分を介護報酬請求していた      など

✐ 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会が実施する研修セミナーでは、指摘事例も取りあげながら詳細に解説しております。

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コラムニスト紹介

堀口 直孝

シルバーケア・サービス豊住 顧問
経営コンサルタント

プロフィール

看護婦家政婦紹介所の上部団体である(社)日本臨床看護家政協会の管理者として家政婦の職場確保を支援するための事業の開発推進にあたる。

平成6年 健康保険法の改正により病院の付き添い介護が廃止されたため、家政婦たちの職場を在宅へシフトするためのモデル事業の実施会社を同協会内に設立。同社において在宅介護サービスを立ち上げ、東京都11区よりホームヘルプ事業を受託、介護保険制度施行後、指定事業者として管理、運営を行う。

平成14年 (株)ふれんどりーホームサービスを設立し、東京都千代田区を中心に訪問介護、居宅介護支援事業を実施するかたわら、同事業のコンサルタントも行う。平成30年より現職。

著書・出版

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