知って得する薬の話!
第20回 出荷調整(薬がもらえないの?)2025/02/25
インフルエンザなのか?花粉症なのか?
発熱・鼻水や咳などの症状で、受診する患者が急増しています。
セルフメディケーションと言って、自分自身の健康に責任を持ち、軽微な風邪や胃腸炎などの症状は、医療機関を受診せずに一般用医薬品で治しましょうと、言われて久しくなります。
しかし、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザウイルス感染症などの大流行に伴い、医療機関を受診する患者が急増しています。
ウイルス感染症では、検査による早期確定診断・早期治療が原則となります。
周囲への感染拡大を考慮すると、早めの受診が必要です。
治療薬も発病と同時に服薬すると完治までの期間を短縮できます。
薬物療法には、下記の3つの考え方があります。
・原因療法:ウイルスや細菌などの疾病の原因を取り除
例)新型コロナウイルス感染症(ラゲブリオ・ゾコーバ)・細菌感染(ペニシリン)
・対症療法:熱や咳・下痢などの辛い症状を抑え、治療を助ける
例)発熱(アセトアミノフェン)・咳(メジコン)・下痢(ロペミン)
・予防療法:感染症を予防するための薬を投与する
例)新型コロナワクチン・インフルエンザワクチン・ロタウイルスワクチン
などです。
しかし、2021年ごろより、メーカーの出荷調整の影響で、大切な原因・対症療法薬を処方して貰えない、短期間分しか処方して貰えない、などの問題が生じています。
医療機関より薬が貰えなければ、“頑張って、自力で治して下さい”、ということになります。
患者にとっては、どの薬物療法にしても薬がもらえなければ、辛い症状が長く続くことになります。
出荷調整とは、ある薬の製造量に対して、需要が上回ると予測された場合に、メーカーが自主的に出荷を調整し、今後の薬が供給できなくなるのを防ぐための方策を言います。
治療薬の約2割が供給不足に陥っています。
出荷調整の影響で、多くの在宅・外来患者が、治療薬を処方してもらえず、疾病を治すことが出来ません。出荷調整がいつまで続くのか?予測が立っていません。
きっかけは、2020年のあるジェネリックメーカーの不祥事に遡りますが、患者も、医療従事者も、一日も早い解決策を切望しています。
このような事象が起こり、薬の大切さを改めて思い知らされました。
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藤澤 節子
NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長
NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス運営委員
プロフィール
薬剤師。北里大学薬学部薬学科卒。調剤薬局を経営するかたわら、訪問薬剤師として在宅医療に従事。現在、NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長、NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス運営委員を務める。