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知って得する薬の話!

第16回 老人性掻痒症      2022/12/6

 そろそろ、初雪の便りが聞こえてくる季節となりました。
 私どもは、武蔵野市(東京都)のいきいきサロン事業に平成28年の開始と同時に参加しております。足掛け4年となります。体操をしたり、折り紙をしたり、お習字をしたり、朗読をしたり、塗り絵をしたり、楽しい一時を過ごします。
 時々骨折で入院したので、ガンの手術をしたので、ということでお休みする方はいますが、参加者7名のほとんどの方が、皆勤賞を差し上げたい位、毎週土曜の午後に元気に参加して下さいます。
第1回目の武蔵野市のケアリンピックで朗読の発表をした時の写真です。

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 アンパンマンの作家で有名なやなせたかし先生が書いて下さった、ルンルンちゃんの前掛けをしています。みなさん、大変お元気ですが、冬になると心配になるのが、血圧と皮膚の乾燥による痒みです。
 この季節になると、外来でも、在宅でもそうですが、皆様の悩みは皮膚の乾燥による痒みと肌荒れです。高齢者の皮膚疾患には、褥瘡・老人性皮膚掻痒症・疥癬・帯状疱疹などが考えられます。
 高齢者の痒みの原因には、湿疹などの皮膚病、糖尿病・肝臓病・腎臓病・悪性腫瘍などの病気から、そして薬や食物などからのアレルギーも考えられます。
 高齢者の皮膚は角層細胞間脂質(セラミド)や天然保湿因子が低下しているために乾燥状態となり、角質層はバリアの機能を失います。

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 皮膚疾患は、栄養状態の低下、おむつなどの汚染、不衛生な住環境によるものもあります。支援者は、それらにも、気をくばらなければなりません。

・褥瘡:持続的圧迫により皮膚が潰瘍になり、重症化すると皮膚が壊死する皮膚の疾患です。寝たきりや知覚障害、車椅子使用の高齢者にできやすく、身体の汚染・栄養状態などが原因です。好発部位は踵骨(かかと)・仙骨・肘頭・肩甲骨・後頭部などです。

・老人性皮膚掻痒症:かゆみは高齢者にとって非常につらい症状です。掻痒症は皮膚に発疹などの異常がないのにかゆみだけがでる症状です。老人性乾皮症、糖尿病、アトピー性皮膚炎などが原因となります。

・疥癬:ヒゼンダニが皮膚表面に寄生しておこる疾患です。激しいかゆみを伴います。疥癬とノルウェー疥癬の2タイプがあります。

・白癬:高齢者の皮膚病の中で、一番よく見られるかゆみのおこる疾病です。皮膚にカビの一種の白癬菌が感染することによりおきます。足にできる白癬、つまり足白癬は俗に水虫といわれます。爪にできる白癬は爪白癬と言われ、爪が肥厚したり、変色したりいろいろな症状を呈します。

皮膚病の治療薬の特徴

 まず、皮膚病の治療には塗り薬が主となります。
 種類としては、抗ウイルス薬、化学療法薬、化膿性皮膚疾患用薬、ステロイド薬、非ステロイド系消炎薬、褥瘡治療薬、外用抗ヒスタミン薬、鎮痛薬などなどです。

抗ウイルス薬 アラセナ‐A軟膏
その他の化学療法薬 アスタットクリーム
ラミシールクリーム
マイコスポール液
化膿性皮膚疾患用薬 ゲンタシン軟膏
テラジアパスタ
フシジンレオ軟膏
ステロイド薬
(副腎皮質ホルモン薬)
ダイアコートクリーム
マイザー軟膏
リンデロンV軟膏
フルコートクリーム
フルコート軟膏
キンダーベート軟膏
テラ・コートリル軟膏
リンデロンVG軟膏
リンデロンVGローション
オイラックスH軟膏
非ステロイド系消炎薬 アズノール軟膏
皮膚軟化薬 ウレパールクリーム
ウレパールローション
血液凝固阻止薬 ヒルドイド
ヒルドイドクリーム・ヒルドイドソフト軟膏
抗ヒスタミン薬 レスタミンコーワクリーム
その他 フェノール・亜鉛華リニメント
白色ワセリン
亜鉛華軟膏
褥瘡治療薬 ゲーベンクリーム
プロスタンディン軟膏
ユーパスタコーワ軟膏
アクトシン軟膏
鎮痛薬 イドメシンコーワゲル
インテバンクリーム
スチックゼノール
モビラート軟膏
ボルタレンゲル

軟膏の使い方

単純塗布法:軟膏を指の腹にとり、べとつかない程度に患部に薄くのばします。

重層法:患部に軟膏を塗った上に、ガ-ゼやリント布に薄くのばしたワセリンや亜鉛華軟膏などで被います。単純塗布法より治療効果を発揮します。

塗り薬のいろいろ

 塗り薬には、軟膏・クリーム・ローションなどの剤型があります。
 種類や効果を間違えてしまうと症状を悪化させてしまいますので、患部の状態により使いわけます。
 使用前にお薬についている説明をよく読み、医療職の説明を聞いてから介助する必要があります。

支援のポイント

 かゆみは痛みより辛いという方がいらっしゃいます。
 日常の注意としては、高齢者の場合は、皮膚の脂肪が少なくなっているので、入浴の時に、石鹸でゴシゴシ洗うのはよくありませんし、熱い湯のお風呂に入るのもスキントラブルの原因となります。入浴剤も肌に合わないときはやめます。尿や便やおむつで汚染された時は、その都度シャワーや清拭できれいにしておきます。
 暖房を使う時は、加湿器を置いて湿度を50%以上にするように気をつけます。
 かかっている病気、飲んでいる薬、食事の内容からの影響も考えてみる必要があります。
 軟膏とクリームでは、薬の皮膚へのしみ込み方が違います。
 軟膏はジュクジュクと患部が浸潤している場合に、クリームはカサカサと患部が乾燥している場合に、ローションは頭皮に使います。クリームの方が強く・速くしみ込みます。一般的には、皮膚の状態にあわせて、部位を水から遮断する場合等には軟膏を使い、水で洗い流しやすくする場合等ではクリームを使うことが多いです。
 塗り方は、皮膚のしわに沿って塗り、入浴後10分前後がより効果が上がるといわれています。

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軟膏剤、クリーム剤の保存方法

・ 軟膏剤、クリーム剤の使用期限は、3~5年と長いです。
・ 軟膏壺に小分けされたものは、約1ヶ月。
・ チューブ入りのものでも、開封後は3ヶ月。
・ ユベラ軟膏のように温度管理の必要な薬もあります。
・ 火気・高温を避けて保存します。

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平成17年7月26日、厚生労働省医政局長から出された通知において、原則として医療行為ではないと考えられるものが明記されました。皮膚への軟膏の塗布もその中に入っています。
・ 皮膚への軟膏の塗布は、次の条件を満たしていれば、原則ヘルパーさんに許された行為です。
 1. 入院治療の必要がなく容態が安定している。
 2. 医師や看護職員による連続的な容態の経過観察の必要がない。
 3. 薬の使用法に専門性の必要がない。
制度と薬の内容を理解して支援しましょう。

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コラムニスト紹介

藤澤 節子

NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長
NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事

プロフィール

薬剤師。北里大学薬学部薬学科卒。調剤薬局を経営するかたわら、訪問薬剤師として在宅医療に従事。現在、NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長、NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事を務める。

著書・出版

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