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第15回 喘息      2022/10/12

 在宅に訪問すると、ゼーゼーと息苦しさを感じながら生活している患者さんに出会います。
 そのような患者さんは、 暑い夏が過ぎて台風の季節になると、気圧の変化を気にし始めます。喘息は、季節の変わり目や台風の季節、また秋や春のブタクサ・スギなどの花粉が飛び始める頃に頻回に発作を起こすようになります。
 喘息は気管支の炎症が慢性化することによって気道が過敏となり、気道が細くなることにより発作的な喘鳴、咳などを起こす症状です。喘息の発作時はこれらの症状が激しく現れ、死(喘息死)に至ることもあります。
 コロナ禍で、独居や高齢者世帯では、緊急時の対応が難しいため、日頃からの喘息の薬によるコントロールが必須です。喘息が原因の突然死は薬によるコントロールで年々減少していますが、それでも地球上で、年間25万人の方が亡くなっています。

喘息の原因

 高齢者の喘息人口が増え続ける高齢化社会で、支援者は喘息の薬の理解を深め、高齢者の支援にあたることが重要です。

喘息の症状

 気管支喘息は、急に呼吸、とくに吐く息が苦しくなり、ゼーゼー・ヒューヒューという発作性の呼吸困難が主な症状です。
きちんと対応できないと気管支の粘膜にむくみが生じ、粘膜からの分泌物がたまり、ますます空気の通りが悪くなり、喘鳴や呼吸困難を起こします。
 さらに大発作が続くと、意識を失い、場合によっては窒息死を招くこともあります。発作は、夜中から明け方にかけて起こることが多く、唇や爪が紫色に、顔色は蒼白になり、ゼーゼーと喘息特有の喘鳴と呼吸困難が起きます。発作は30分から長時間続くこともありますが、薬の吸入により収まります。

喘息の原因

 発作の原因は、患者のアレルギー体質による場合、環境因子、精神的要因による場合があります。
環境刺激因子には、寒気、運動、ストレスなどがあります。その他の環境因子は、埃・ダニ(虫体、糞)・花粉・カビ・食物・薬物・大気汚染・アルコール、気圧変化などです。それに加えて精神的要因などのさまざま要因が重なる場合もあります。
 喘息治療薬を日々きちんと服用することが大切です。

喘息の原因

治療法

 喘息は、喘息の元のアレルゲンが体内に入ると、肥満細胞(マスト細胞)や好酸球が関与し、ヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症物質を放出します。それにより、気道に慢性的な炎症が起きます。
 治療は、気道の炎症を抑えることを主に考えます。
 慢性喘息にはガイドラインが発表されています。
 重症度は自覚症状とピークフローメーターの測定値によって4段階に分類されています。ピークフローメーターとは、気管支のせまさを測定するための医療機器です。

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 (ピークフローメーター) 

 喘息に使われる薬は、「長期管理薬(コントローラー)」と「発作治療薬(リリーバー)」に大きく分けられます。
 治療の基本は、気道の炎症を抑え、発作が起こらないようにコントロールすることです。
 喘息治療薬では、全身に効果のある経口投与より、気管支に直接薬剤を送る吸入するタイプのほうが安全性に優れています。
  長期管理薬である、強力な抗炎症作用を持つ吸入ステロイド薬を中心に、気道を広げる薬やアレルギーを抑える薬を組み合わせて治療計画を立てます。
 しかし、認知症であったり、片麻痺であったり、吸入に工夫を加えなければ上手に吸入することのできない高齢者がいます。また、吸入ステロイド剤は口腔や咽頭カンジダ症、嗄声、咽頭刺激による咳嗽などの副作用があるため、吸入後のうがいの指導が必要です。吸入が難しい高齢者には、経口ステロイド薬を用いることもあります。
 薬剤噴霧式の吸入剤は、きちんと吸入するため吸入補助器具(スペーサー)を用いる必要がありますが、上手に使うことは高齢者の場合難しいです。

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 (スペーサー) 

 飲み薬には、気管支を収縮させる作用に深く関係しているロイコトリエンという化学伝達物質をブロックする働きを持つ抗ロイコトリエン薬や気管支を広げる気管支拡張薬(テオフィリン製剤)や抗アレルギー薬があります。

薬の上手な使い方

 気管支喘息治療薬は、
・毎日使う薬:「長期管理薬」(コントローラー)と
・発作の時に使う薬:「発作治療薬」(リリーバー)にわけられます。
 毎日使う薬は、発作が起きないように予防的に長期管理薬を使用します。
 発作の時に使う薬は、急性発作が起きた時に発作を止めるために、発作治療薬を使用します。

種類 代表的商品名
抗アレルギー薬 アレジオン(飲み薬)/インタール(吸入薬)
抗ロイコトリエン薬 オノン/シングレア(飲み薬)
気管支拡張薬
 (β刺激薬)
ベネトリン(吸入薬)
ホクナリン(テープ)
メプチン(飲み薬)(吸入薬)
セレベント(吸入薬)
スピロペント(飲み薬)
気管支拡張薬
(キサンチン系)
テオドール/テオロング(飲み薬)
ユニフィル(飲み薬)
去痰薬 ムコダイン/ムコソルバン(飲み薬)
ステロイド薬 プレドニン/リンデロン(飲み薬)
フルタイド/キュバール/アドエア(吸入薬)
抗コリン薬 スピリーバレスピマット(吸入薬)
漢方薬 小青竜湯(飲み薬)

その他の予防法

 気管支喘息の発作を予防し症状を悪化させないためには、まず気道を刺激する物質やアレルゲンを特定し、身の回りから除去します。ハウスダストやダニを除去するために、こまめに掃除をして部屋の中を清潔に保ち、蚊取り線香や香水、殺虫剤、衣類の防虫剤などのニオイも発作を起こす原因となりますのでなるべく使用を控えます。
 喘息体操や乾布摩擦で体力づくりをする患者さんもいます。
 精神的要因が発作を起こす直接的な引き金となる場合は、精神安定剤や心理療法が有効な場合もあります。
・明け方の冷え込みに気を配る
 夜寝た時間に比べて明け方は平均的には5~6度温度が下がるといわれています。特に朝4時から5時にかけて急激に気温が低下し、それが原因で発作が起こるということになります。

喘息の原因

・発作の多い時期に気を配る
 一番多いのは9月末~10月末の秋です。また、春はアレルギー性鼻炎などが出てくる時期から梅雨どきにかけてです。いわゆる季節の変わり目などの気象の関係です。台風がやってくる前など、強い風が吹いてきて気温の変化が激しく、気温が急激に低下するようなときに発作が起こりやすいです。梅雨どき、あるいは秋の台風シーズンというのは温度の変化が激しいために体調を崩し、風邪をひきやすいということも多く、この風邪が発作の誘因ともなります。
 この季節の健康管理に介護職は気を配る必要があります。
 薬以外での対応はきめ細かな介護ということになります。そして、精神的安定を図っていくことは必須となります。

喘息の原因

 吸入ステロイド剤は、カンジダ症・嗄声・咽頭刺激などの副作用があるため、吸入後のうがいを忘れずに!

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コラムニスト紹介

藤澤 節子

NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長
NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事

プロフィール

薬剤師。北里大学薬学部薬学科卒。調剤薬局を経営するかたわら、訪問薬剤師として在宅医療に従事。現在、NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長、NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事を務める。

著書・出版

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