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知って得する薬の話!

第10回 脂質異常症      2020/10/26

 美味しいものを、美味しく食べたい!しかし、時が過ぎると体脂肪計で結果が表示されます。血液検査の結果、中性脂肪が危険値に達していますよ!と、若い医師に叱られる始末・・・・・・
 血液中にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸などの脂質があります。コレステロールは細胞膜やホルモンの材料、胆汁の原料、脂肪の消化・吸収を助けます。中性脂肪は皮下や内臓に蓄えられ、エネルギー源として利用される働きを持ちます。脂質異常症とは、血液中の脂質の濃度が高くなる病気で、動脈硬化の原因となります。

介護コラム

 脂質はタンパク質と結合し「リポ蛋白」という形で血液中を流れています。凝固した血液を遠心分離にかけると、血清の上の方にLDLコレステロール、下の方にHDLコレステロールが分離されます。善玉コレステロール(HDL)は余分なコレステロールを回収し、悪玉コレステロール(LDL)は体全体にコレステロールを運びます。脂質異常症のサイレントキラーと言われ、知らないうちにリスクを背負っていくことになります。要因の一番は生活習慣ですが、遺伝的要因・他の疾患からによるものもあります。また、脂質異常症のタイプにはコレステロールが多い・中性脂肪が多い・コレステロールも中性脂肪も両方が多いに分けられます。

(脂質異常症の判断基準)空腹時採血で、ひとつでも該当した場合

① LDLコレステロール値:140㎎/dl以上
② HDLコレステロール値: 40㎎/dl未満
③ 中性脂肪値:150㎎/dl以上

 食事療法、運動療法を試みても改善が見られない場合、高血圧・糖尿病・喫煙などのリスクを検討して薬物療法を開始します。

 治療薬には、コレステロールと中性脂肪を下げる薬があります。
1.コレステロールを下げる

・スタチン系 ・・・・・クレストール、メバロチン、リピトール、リポバス

肝臓に働いて、肝臓の酵素に働きかけて、血液中のLDLコレステロールを取り込ませて、LDLコレステロールを下げます。

・陰イオン交換樹脂(レジン)製剤・・・・・コレバイン

食物中のコレステロールが体内に吸収される量を減らし、体の中のコレステロールを糞便中に排出します。

・プロブコール製剤・・・・・シンレスタール

プロブコールはLDLコレステロールとHDLコレステロールの両方の値を下げ、LDLコレステロールの酸化を防ぐ効果もあります。

・小腸コレステロールトランスポータ阻害薬・・・・・ゼチーア

腸管からのコレステロールの吸収を阻害します。

・植物ステロール・・・・・ハイゼット

コレステロールの消化吸収を抑えます。

2.中性脂肪(トリグリセライド)を下げる

・フィブラート系製剤・・・・・ベザトールSR、パルモディア

肝臓に働いて中性脂肪などの合成を減らし、中性脂肪分解酵素を増加させるなどして、血液中の中性脂肪を低下させます。LDLコレステロールを低下させ、HDLコレステロールを増加させます。

・ニコチン酸誘導体製剤・・・・・ペリシット

脂肪組織からの脂肪の分解を抑制し、HDLコレステロールを増加させます。

・EPA製剤・・・・・エパデール

青魚(イワシ)に含まれる油です。中性脂肪を低下させます。主な副作用は、横紋筋融解症です。手足・肩・腰などの筋肉の痛み、手足がしびれる、全身がだるい、手足に力が入らないなどの症状が出ます。進行すると血尿や腎症になることがあります。服薬後1ヶ月で発現しやすいので、支援者の観察は欠かさないようにします。

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コラムニスト紹介

藤澤 節子

NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長
NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事

プロフィール

薬剤師。北里大学薬学部薬学科卒。調剤薬局を経営するかたわら、訪問薬剤師として在宅医療に従事。現在、NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長、NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事を務める。

著書・出版

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