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知って得する薬の話!

第8回 糖尿病       2020/3/30

 どの高齢者も病気には罹りたくないと健康を気遣っていると思います。しかし長い間、偏った食習慣・飲酒・喫煙・運動不足やストレスなどの生活を続けていると、生活習慣病と言われる疾患に罹患します。生活習慣病には高血圧・脂質異常症・糖尿病などがあります。今回お話しする糖尿病も高齢者がよくかかる生活習慣病です。

 世界の糖尿病人口は爆発的に増え続けており、2019年現在で糖尿病有病者数は4億6,300万人に上り、2017年から3,800万人増えました。糖尿病は、その成因により、1 型・2型・特定の機序、疾患による・妊娠糖尿病の4つに分類されます。
 2型糖尿病の患者で、透析予備軍の高齢者も増え続け、認知症を発症した上にインスリン対応となった患者を医療介護の連携でどのようにサポートしていくかが課題です。

 食事をすると小腸から、栄養の一部であるブドウ糖が吸収され、血液中のブドウ糖が増えます。糖尿病とは、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの不足によって、糖代謝に異常が起こり、ブドウ糖が肝臓や筋肉、脂肪組織などの細胞に取り込まれず、血液の中のブドウ糖が高まることにより、尿の中にもブドウ糖が排泄され、尿が甘くなるため糖尿病と、名前が付けられました。軽症の場合は自覚症状もなく病気が進行していきます。

 糖尿病が進行した場合の典型的な自覚症状として、血液が濃厚になることによって、水分が必要となり「喉の渇き」を訴え、糖に引き寄せられて水分も排泄されるので「頻尿」が起き、ブドウ糖をエネルギーとして利用できず、脂肪やタンパク質をエネルギーとして使うため「体重」が減ります。
 未治療の糖尿病が続くと、高血糖によって血管が傷つき全身にさまざまな合併症が起こってきます。心臓では心筋梗塞、脳では脳卒中、腎臓では腎症、目では網膜炎、末梢血管では壊疽などのさまざまな合併症を引き起こします。

 糖尿病であるかを知るには、血液検査が必要です。血液検査は、糖の量を直接計る(血糖値)と、過去1〜2ヶ月の血糖の状態を計る(ヘモグロビンA1c)があります。

(糖尿病の判断基準)
 ① 空腹時血糖値 126mg/dl以上
 ② ブドウ糖負荷試験 2時間値200mg/dl以上
 ③ 随時血糖値 200mg/dl以上
 ④ HbA1c 6.5%以上
食事の内容を見直す食事療法や運動療法を、1ヶ月間行っても効果がない場合に薬物療法となります。

 薬物治療は、膵臓からのインスリンの分泌を促進する薬を第一選択薬にします。

・SU薬・・・・・アマリール、グリミクロン
膵臓を刺激してインスリンの分泌を増やします。アマリールは、インスリン感受性改善効果も併せ持っています。血糖降下作用は最も強力。

・速攻型食後血糖降下薬・・・・・スターシス、グルファスト
膵臓を刺激してインスリンの分泌を増やしますが、SU剤に比べて速やかに吸収され、インスリンの分泌を速やかに促進します。食直前に服用し、1時間後に薬の効果がピークとなり、早期インスリン分泌がおこり食後血糖の上昇を抑えます。効果は2時間ほどで元に戻ります。

・ビグアナイト系・・・・・グリコラン、メトグルコ
主として肝臓での糖の新生を抑制し、また、末梢での糖の利用を促進し、消化管からの糖の吸収を抑制します。

・インスリン抵抗性改善薬・・・・・アクトス
インスリンの感受性を改善し、筋肉・脂肪組織でのブドウ糖の取り込みを促進し、肝臓での糖の新生を抑制します。

・食後血糖改善薬(α―グルコシダーゼ阻害薬)・・・・グルコバイ、ベイスン
小腸にある二糖類をブドウ糖に分解する消化酵素(αグルコシダーゼ)の働きを抑え、ブドウ糖の吸収を遅延させることで食後血糖の上昇を抑制します。

・DPP-4阻害薬・・・・・ジャヌピア
インスリンの分泌促進とグルカゴン(血糖値を上昇させるホルモン)の抑制で血糖を改善します。

・SGLT 2阻害薬・・・・・スーブラ
細尿管からの糖の再吸収を抑制して、尿への糖の排出を促進します。体重減少が起こります。

直接インスリンを補充する自己注射もあります。
・超速攻型インスリン・・・・・ノボラピット、ヒューマログ
・速攻型インスリン・・・・・ノボリンR、ヒューマログR
・中間型インスリン・・・・・ノボリンN、ヒューマログN
・混合型インスリン・・・・・ノボリン30R、ヒューマログ3/7
・持続型溶解インスリンアナログ製剤・・・・・ランタス、レベミル

糖尿病薬には、副作用があり、低血糖の副作用は、どの血糖降下薬でも起こりえます。低血糖の主な症状は、高度の空腹感・脱力感・発汗・動悸・手足の震え・頭痛・意識障害などで、重症の場合は痙攣を起こすこともあります。

 上記のような症状が出た場合は、砂糖を摂取するようにします。軽い時は、あめをなめるように説明しますが、手っ取り早いのは砂糖水か甘いジュースを飲んでいただくことです。
 食後血糖改善薬は、砂糖の分解を抑える効果がありますので、この薬で低血糖を起こした時は、ブドウ糖を摂取します。ブドウ糖は、薬局で投薬時に、必ず、薬に付いてきます。

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コラムニスト紹介

藤澤 節子

NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長
NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事

プロフィール

薬剤師。北里大学薬学部薬学科卒。調剤薬局を経営するかたわら、訪問薬剤師として在宅医療に従事。現在、NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長、NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事を務める。

著書・出版

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