へるぱ!

知って得する薬の話!

第7回 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)

「いつまでも元気に過ごしたい、血圧も血糖も高くないし、コレステロールにも気をつけている。私はまだまだ元気!」そう思っている高齢者が、ちょっとした転倒で思わぬ骨折を招き、運動機能を失って寝たきりになることがあります。その根底には骨粗鬆症(こつそしょうしょう)があります。

骨粗鬆症とは骨がスカスカでもろくなっている状態、転倒せずとも骨の中で小さな骨折が起きている状態です。骨も生きているので代謝が行われています。骨が溶けて、血液中に流れ出ると同時にまた再生し、骨を形成するのを繰り返しています。そのバランスが崩れ、骨が再生する量より血液中に流れ出てしまう量の方が多くなると骨粗鬆症になります。骨の再生バランスが崩れる原因には、加齢によるもの、服薬中の薬の副作用によるもの、女性の場合は、閉経後のホルモン低下によるものがあります。誰にでも起きる可能性があるため、日頃から食事や運動で予防する意識が必要な疾患といえます。また骨粗鬆症は骨折の痛みや骨の変形がないと自覚できないため、骨の状態を調べる検査が必要です。検査をして骨粗鬆症の診断基準を満たした場合は、骨折の危険が高いとみなし服薬治療が開始されます。

骨粗鬆症の治療薬は大きく分けて二つの作用の薬があります。骨の再生を助ける薬と骨が溶け出すのを防ぐ薬。ここ数年、いくつかの新しいタイプの骨粗鬆症治療薬が開発されました。最近はそのうちのひとつ、骨の再生を助けるビスホスホネート製剤がよく処方されます。週に1回服用する方法、月に1回服用する方法などがありますが、どちらも同じくらいの効果が得られます。毎日服薬しなくて良い反面、飲み忘れに注意しましょう。さらに、ビスホスホネート製剤は、服薬する際に注意が必要なポイントがいくつかありますので、介護者も知っておいたほうがよいでしょう。

① 起床時に多めの水で服用する。
ビスホスホネート製剤は、お茶やコーヒー、ジュースなどの飲み物、食べ物の影響を受けやすく、水以外で服用すると薬の効果が十分に発揮できません。起床時に服薬するのは空腹の状態であるからです。起床してすぐに服薬し、服用後30分以上たってから朝食にしましょう。また水とはいえ、硬水といわれるミネラルをたくさん含んだミネラルウォーターも効果が下がってしまうので注意が必要です。

② 30分座位または立位を保つ。
内服するビスホスホネート製剤は、服用後に横になると食道に炎症や潰瘍を起こす副作用を起こすことがあります。介護者は、患者さんが座位または立位を保てるよう(横になれないような)環境を整える必要があります。

③ 抜歯の予定がないかの確認。
歯科受診されている患者さんには、あらかじめ歯科医師にビスホスホネート製剤を服用中であることを伝えましょう。抜歯後に顎の骨が壊疽を起こす副作用があります。歯の治療を優先させるか、骨粗鬆症の治療を優先させるか、よく医師とも相談する必要があります。

骨粗鬆症薬は、ビスホスホネート製剤のほかにもビタミンD3製剤、ホルモンバランスを整える薬と合わせて処方する場合があります。また注射剤もあります。骨粗鬆症は、薬の効果が実感しにくいため自己判断で中断してしまう方も少なくありません。カルシウム摂取のために牛乳や乳製品を摂取することも大切ですが、骨粗鬆症の方にはそれだけでは不十分です。高齢者が骨折してしまったら運動機能を失うだけでなく、意欲低下、社会性までも失いかねません。骨粗鬆症と診断されたら、骨折の危険信号。いつまでも健康で長生きできるよう気長にお薬を飲み続けましょう。

一覧へ戻る

コラムニスト紹介

藤澤 節子

NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長
NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事

プロフィール

薬剤師。北里大学薬学部薬学科卒。調剤薬局を経営するかたわら、訪問薬剤師として在宅医療に従事。現在、NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長、NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事を務める。

著書・出版

トップページへ