へるぱ!

知って得する薬の話!

第6回 排尿障害治療薬

インフルエンザ流行の時期がやってきました。インフルエンザの予防接種は済まされましたか?特に高齢者が多い介護支援施設では、様々な予防策に努められていることと思います。

よく高齢者の方から「トイレに行く回数が多いから外出は控えている」「漏らさないよう水分の量を控えている」「家族に尿とりパッドを使うように言われた」などの排尿障害の悩みについてお聞きすることがあります。特に尿漏れは、高齢者の80%以上にみられる症状。「恥ずかしくて人には話せない」などの理由から、人知れず悩んでいる高齢者が数多くいます。

正常な排尿とは1日4~8回、1回につき200~400ml(1日で1000~1500ml)といわれます。夜間でも0、1回ぐらいしかトイレに起きません。排尿障害は、尿が漏れる「尿失禁」、尿が出づらい「排尿困難」、1日の尿の回数が8回以上(夜は2回以上)ある「頻尿」のことを言います。

蓄尿と排尿は複雑な仕組みによって起きているので、1つでも障害を受けると排尿障害が発生します。腎臓で作られた尿は尿管を経て、膀胱に送られます。尿が送られると膀胱は緩み、およそ300ml以上の尿を溜めることができます。さらに、膀胱が広がると同時に尿道は締まり、尿を漏らさないようにします。これが蓄尿状態です。逆に尿が溜まり、排尿可能な状態になると、膀胱は収縮し尿道が緩み、排尿されます。

蓄尿と排尿の仕組み

自律神経の命令で膀胱、尿道の収縮と弛緩を相互に協力し合って排尿、蓄尿の働きをします。ですから、排尿障害の原因は、加齢による臓器機能の低下(前立線肥大など)によるもの、基礎疾患の持病(パーキンソン病など)によるもの、心因性ストレスによるものなど、多岐にわたります。また、自律神経の支配は全身に及び、排泄も自律神経によって支配されているため、呼吸器、消化器など一見、排尿器官とは関係しないような疾患に使われる薬のすべてが、副作用として排泄に影響する可能性があります。

排尿障害の治療には膀胱訓練やリハビリ体操をして良くなることもあれば、薬の力を借りる場合もあります。排尿障害の治療薬は大きく「膀胱に作用する薬」と「尿道に作用する薬」に分けられ、基礎疾患を持つ多くの高齢者が、何かしらの薬を服用しています。それらの薬が排尿に影響を与える場合があります。

【排尿障害治療薬の種類】

排尿筋を収縮させることで尿失禁になる薬 副交感神経作用薬…胃薬
排尿筋を弛緩させることで排尿困難になる薬イナビルラピアクタM2蛋白イオンチャネル阻害 副交感神経作用薬…胃薬
副交感神経遮断薬…花粉症薬、風邪薬
抗精神病薬
β刺激薬(交感神経)…気管支拡張
尿道を収縮させることで排尿困難になる薬 α刺激薬(交感神経)…昇圧薬
β刺激薬(交感神経)…気管支拡張薬
抗うつ薬
尿道を弛緩させることで尿失禁になる薬 α遮断薬(交感神経)…降圧薬
筋弛緩薬
抗てんかん薬
睡眠薬、抗不安薬

排尿障害の薬が基礎疾患に影響する場合もあるため、治療薬は慎重に選ぶ必要があります。排尿障害を含め基礎疾患をお持ちの方は安易に一般薬を服用せず、医師・薬剤師に相談しましょう。排尿障害は、「恥ずかしい」「仕方がない」と思わず、気軽に相談できることが解決の一歩になるのかもしれません。

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コラムニスト紹介

藤澤 節子

NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長
NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事

プロフィール

薬剤師。北里大学薬学部薬学科卒。調剤薬局を経営するかたわら、訪問薬剤師として在宅医療に従事。現在、NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長、NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事を務める。

著書・出版

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