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知って得する薬の話!

第3回 不眠症

今年の夏は、「熱帯夜」が続き、眠れない高齢者が多くいらしたと思います。そして、逆に季節が変わった今は、急に寒さを増し「夜間頻尿」で眠れない高齢者を見かけます。
このように、不眠の原因には、色々あります。

不眠を起こす可能性の要因には、下記の内容が挙げられます。

・日中ウトウトしていて夜中に目覚めてしまう、昼夜逆転。
・寝床や騒音、振動、温度、湿度などの環境。
・心配ことや悩みごとなど心の問題。
・入院や引越など生活様式や環境の変化。
・疼痛、頻尿、かゆみや呼吸器疾患(呼吸困難・咳など)などの身体的苦痛。
・カフェインやアルコールなどの摂取や興奮させる薬物の服用。
・統合失調症や躁病、うつ病などの精神疾患。
・夢中遊行や睡眠時無呼吸症などの夜間異常現象。

現代社会において、国民の5人に1人が上記に挙げたような睡眠に何らかの問題を抱えているといわれています。

不眠症とは、睡眠に問題があることが原因で、昼間に体や気分の不調や疲労感、集中力の欠如などを伴い、日常生活に支障をきたすことを言います。
高齢になると、夜中に何度も目が覚めたり、朝早く目覚めてしまうという方が多くいらっしゃいます。不眠を考える時、夜間の不眠が、日中の生活にどう影響しているかを考え、また、日中の生活が夜間の睡眠にどう影響しているかを考えます。

不眠症は主に「入眠障害」「中途覚醒」「熟眠障害」「早朝覚醒」などのタイプにわけられます。

「入眠障害」 いわゆる寝つきの悪いタイプです。布団に入っても、中々眠れず、寝ようとすると返って目が覚めてしまうタイプです。朝はなるべく決まった時間に起き、明るい太陽を浴びるようにします。
「中途覚醒」 夜中に何度も目が覚めるタイプです。加齢と共に、昼の活動量も減り、体が必要とする睡眠時間も減ってきます。必要以上に長く床に入っていると、眠りが浅くなり何度も目が覚めてしまうタイプです。早寝早起きを心がけ、昼間に運動する習慣をつけることなどが大切になります。
「熟眠障害」 ぐっすりと寝た気がしないタイプです。
必要な睡眠時間を十分にとっているのに、いつも寝たりない感じがするタイプです。
やはり、日中の適度の運動習慣を身につけるようにします。
「早朝覚醒」 朝早く目が覚めて、夜は早い時間に眠くなってしまうタイプです。年をとると、体内時計のリズムが変化し、早朝に目が覚めるようになり、夜に遅くまで起きているのがつらくなるタイプです。朝は、雨戸や遮光カーテンで太陽光線を遮り、ゆっくり寝ているようにし、夜も遅くまで起きているようにします。

ほとんどの場合、不眠に陥る原因が必ず存在します。この原因を特定し除去するのが、睡眠障害治療の基本的な考え方ともいえるでしょう。このような要因を除去しても、日常生活に支障をきたすような睡眠障害がある時にはじめて、その種類を特定し、睡眠薬を決定します。
睡眠薬には、さまざまな作用時間のものがあります。また、睡眠障害にもいくつかのタイプがあり、タイプ別に使い分けがされています。

睡眠薬のタイプ 特徴 睡眠薬名
1.
超短時間作用型
(超短時間型)
睡眠薬を飲んだ後15分位で効果が現われ、作用時間が2~4時間ほどの睡眠薬です。入眠障害のある方に使われます。作用時間が短いため、翌朝、眠気やふらつきなどの「持ち越し効果」が残ることもありません。「睡眠導入剤」とも呼ばれます。 アモバン
ハルシオン
マイスリー
2.
短時間作用型
(短時間型)
効果が現れるまでの時間が短く、作用時間が7~8時間程度の睡眠薬です。入眠障害のある方や、一度は眠ったものの途中で目が覚めてしまう中途覚醒の方に用いられます。「持ち越し効果」があまり生じることがありません。 エバミール
デパス
リスミー
レンドルミン
3.
中間作用型
(中間型)
作用時間が7~10時間ある睡眠薬です。明け方早くに目が覚めてしまう早朝覚醒の方に使われます。作用時間が長いため、時に「持ち越し効果」が生じます。 ベンザリン
ロヒプノール
ユーロジン
4.
長時間作用型
(長時間型)
起床後もかなりの時間に渡って薬が作用するものです。日中、抗不安薬として作用するため、うつ病や統合失調症(精神分裂病)など、精神的な疾患があり、それが原因で不眠の症状がある方に用いられます。 ソメリン
ダルメート
ドラール

日本では、他の国に比べると、睡眠薬は怖いという風潮があって、積極的には使用されない傾向にありますが、高齢者で医師から薬が処方されている方の3人に1人が睡眠薬を飲んでいます。睡眠障害と薬の効果があっていないと、かえって睡眠を妨げたり、転倒などの事故原因になったりしますので、注意が必要です。

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コラムニスト紹介

藤澤 節子

NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長
NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事

プロフィール

薬剤師。北里大学薬学部薬学科卒。調剤薬局を経営するかたわら、訪問薬剤師として在宅医療に従事。現在、NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長、NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事を務める。

著書・出版

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