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知って得する薬の話!

第9回 高血圧      2020/7/17

 日本人の食事は塩分が多いことで知られています。

 長い食習慣から、高血圧は日本人に最も多い疾病で推定では4300万人いると言われています。原因のはっきりしない本態性高血圧が9割で、残りは原因のはっきりしている二次性高血圧です。世界を恐怖に陥れているコロナウイルスの2020年6月の情報では、重症化のリスクにあげられている明確なものは「高齢者、糖尿病、高血圧」です。今回は、その高血圧についてお話しします。

 高血圧とは、勢いのついた血液が血管内を流れて、血管の壁に強い圧力をかけている状態のことをいいます。そのため、高血圧が長く放置されると心臓や血管に負担がかかり、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病といった様々な疾病を引きおこします。

 血圧が高くても、肩こりや頭が重いなどの軽い症状以外はほとんど自覚症状がありません。健康診断などで高血圧症であることがわかります。血圧の数値は、自宅で測った場合と医療期間で測った場合と差異があることがあります。医療機関で測ると緊張のため血圧が上がってしまう「白衣高血圧」のためです。

(高血圧の判断基準)

・医療機関で測った血圧が

収縮期140mmHg以上、または拡張期90mmHg以上

・家庭で測った血圧が

収縮期135mmHg以上、または拡張期85mmHg以上

 高血圧の主な原因は「加齢」「体質」「生活習慣」です。

 高血圧が見つかると、薬を長期にわたって服用することになるので、検診などで高血圧の診断を受けた後、服用について目的を理解してもらい、きちんと服用し続けてもらうことが大切です。

 しかし、血圧が高いといってすぐに薬を服用するわけではありません。まずは塩分を減らした食生活の見直しや肥満の改善、ウォーキングなどの軽い運動の開始、飲酒・喫煙といった嗜好品の制限などを試みたあと、血圧が下がらない場合に薬の服用を開始します。薬をのみ始めてからも、生活習慣の改善を試みていく必要があります。高齢者の中で、脳卒中の後遺症や心臓病のために余儀なく要介護状態になった患者もいます。高血圧治療薬を高齢者独居であったり、高齢者二人世帯であったり、認知症であったりの理由から、きちんと服用できていない患者も多くいます。治療薬の作用点をよく理解して、医療職と連携し患者の服薬支援に役立てて下さい。

 高血圧治療薬は、多方面から働きかけて血圧を下げます。1種類で効果が出ない場合は作用の違う薬をいくつか組み合わせることもあります。高齢者の場合、医師は血管に直接作用して血圧を下げる薬(カルシウム拮抗薬やACE阻害薬)を最初に選びます。これらは、内臓が弱りほかの疾病(糖尿病・脂質異常症)などをもつ高齢者にも比較的安心して使える薬です。

介護コラム

・利尿薬・・・・・フルイトラン、ラシックス

尿量を増やし、循環血液量を減らすことによって血圧を下げます。

・中枢性交感神経抑制薬・・・・・カタプレス、アルドメット

血圧上昇作用のある交感神経を抑制し、血圧を下げます。

・末梢性交感神経抑制薬・・・・・アポプロン

末梢性の交感神経を抑制し、血圧を下げます。

・β遮断薬・・・・・アセタノール、インデラル、テノーミン、ミケラン

心臓に作用して、心拍数や心拍出量を減少させることで、血圧を下げます。

・α,β遮断薬・・・・・トランデート、アーチスト

交感神経のα,β受容体を遮断することにより血圧を下げます。

・α遮断薬・・・・・カタプレス、ミニプレス

交感神経のα受容体を遮断することにより血圧を下げます。

・ACE阻害薬・・・・・レニベース、タナトリル

血管を収縮させて血圧を上げるアンギオテンシンⅡ(ホルモン)の生成を
阻害して、血管を拡張させ血圧を下げます。

・AⅡ拮抗薬(ARB)・・・・・ニューロタン、プロプレス

強力に血管を収縮させて血圧を上げるアンギオテンシンⅡの受容体を遮
断して、血管を拡張させ血圧を下げます。

・カルシウム拮抗薬・・・・・アダラート、ノルバスク

血管の収縮をおこす、カルシウムの細胞への流入をブロックして、血管を
拡張させ血圧を下げます。

・血管拡張薬・・・・・アプレゾリン

末梢血管に直接作用し、血管を拡張させ血圧を下げます。

・直接的レニン阻害薬・・・・・ラジレス

血管を収縮させて血圧を上げるアンギオテンシンⅡ(ホルモン)の生成に
関与するレニン酵素を阻害し、血管を拡張させ血圧を下げます。

・選択的アルドステロン拮抗薬・・・・・セララ

アルドステロンの血管収縮作用を阻害して血圧を下げます。

・その他(合剤)・・・・・作用の違う降圧薬を組み合わせます。服薬錠数を減らすことができます。

① ARB+利尿薬
② ARB+Ca拮抗薬
③ ARB+Ca拮抗薬+利尿薬

 高血圧治療薬の副作用にはふらつき、めまい、立ちくらみ、脱力感、頭痛、眠気などがあります。服薬開始時には、このような副作用が起きやすくなります。介護者は利用者の転倒などのリスクを充分に考慮して支援していきます。

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コラムニスト紹介

藤澤 節子

NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長
NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事

プロフィール

薬剤師。北里大学薬学部薬学科卒。調剤薬局を経営するかたわら、訪問薬剤師として在宅医療に従事。現在、NPO法人DANKAIプロジェクト副理事長、NPO法人在宅医療・緩和ケアカンファレンス理事を務める。

著書・出版

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