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サービス提供責任者ってどんな仕事?

第3回 訪問介護の 『基本取扱方針』 を考えよう

指定訪問介護の基本取扱方針については、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の第四節中に詳しく書かれています。その内容は以下の通りです。

『指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 』
(指定訪問介護の基本取扱方針)

第二十二条
1) 指定訪問介護は、利用者の要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう、その目標を設定し、計画的に行われなければならない。
2) 指定訪問介護事業者は、自らその提供する指定訪問介護の質の評価を行い、常にその改善を図らなければならない。

文中の「資する」とは役に立つという意味です。これによれば、訪問介護とは必ず「要介護状態の軽減や悪化の防止に役立つような目標」の下に計画をたてなければならず、その計画にそって援助を実施し、結果を評価することが求められています。

人の暮らしは様々な要素で組み立てられており、内容も多岐にわたっています。自分で自由に暮らしている時は生活行為の内容について深く考えることもなく、無意識の状態で洗面や排泄、食事などを行っています。これらの行動は、どれも幼児の頃に修得した技術をくり返すことで磨き上げられます。心身ともに健康で体の自由が利く私達にとってはごく当たり前で自然にできることのように思えますが、本来は複雑な行為の集まりなのです。

ところが、高齢や病気になってしまうと、これまで難なくできていたことが徐々に負担となってきます。今までのやり方ではうまくいかない事柄が増え、それまでごく当たり前だった日常生活までもが難しくなってしまうのです。それを支援するのが介護職員の役割です。しかし、ここできちんと考えておきたいのが「どう支援をしていくか」ということです。

利用者にとって「良い介護」なのか、「悪い介護」なのかは、援助内容によって決まります。自由に動いていた利用者の世界が崩れ始めた時、介護職員が行う援助内容がどういう方向をむいているかは非常に重要です。なぜなら、利用者のその後の生活内容や生活力が大きく違ってくるからです。

良かれと思って手を差し伸べ過ぎれば、利用者側は受身に慣れてしまいます。これはで利用者の自主性がなくなってしまいます。そうならないように、介護職員は利用者自身が生活の主人公として目的を持ち、それを達成するための力を引き出す支援を選ばなくてはなりません。

自分の生活を切り廻す事は相当のエネルギーを要します。考えるにも要求するにも力が必要です。この生きるための力を、利用者から奪ってしまうような援助内容であってはいけないのです。

利用者の自主的な生活を少しでも長く維持し、小さなことであっても利用者自身が考え行動に移せるように「要介護状態の軽減や悪化の防止」という目標を日々の暮らしの中に実現させて、希望ある暮らしを利用者と共にマネジメントし、それをサポートしていくことが肝心なのです。

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コラムニスト紹介

田中 典子

NPO法人東京ケアネットワーク・けあねっと研修室長。
介護福祉士、介護支援専門員指導者、介護技術講習会主任指導者。

プロフィール

1970年から2000年まで約30年間、東京都葛飾区役所にてホームヘルパー職として勤務。

2000年 退職後『ohashi式』発案者の故大橋佳子氏と「NPO法人東京ケアネットワーク」設立に参加し、理事として介護相談および研修事業に携わる。

ヘルパー研修の他、訪問介護計画書の作成演習など多数の研修講師を担当し、ヘルパー業務支援の為の研修にも携わる。

田中典子先生は平成28年7月12日、享年77歳にてご逝去されました。
心より哀悼の意を表するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

著書・出版

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