へるぱ!

今回のヘルパーさん

第75回 野尻美加代さん

神奈川県横浜市港北区、新羽駅より徒歩10分『有限会社はぁもにぃ』でサ責として働く、野尻美加代さんにお話しを伺いました。

訪問の仕事に就くきっかけ

心と心を繋げていかなければいけない、そんな気持ちに駆られました。

―野尻さんが介護職に就いたきっかけは?

友人の死で死生観が変わったからです。若くして亡くなった友人の死を前に、自分の在り方を見つめ直したのがきっかけです。自分に恥じない生き方を、人の役に立つ仕事を、と思うようになって、病院のケアワーカーを始めました。

―その出来事が野尻さんの生き方をも変えるターニングポイントだったのですね。その後、病院でのお仕事はどんな?

病院といっても老人ホームのようなところで、一晩70人ぐらいのおむつ交換、排泄介助を2人ペアでしていました。考えるより、まず手を動かす、そんな忙しい現場で驚いたのは、私より若い子が多く働いていたこと。こんなに大変な仕事を彼女たちが頑張っているのだから、私も負けていられないと働く原動力になっていましたね。

―そこはどれぐらい?

6年ぐらいいました。

―その後はどこへ?

デイサービスに。

―なぜ転職先にデイを選ばれたのですか?

その病院では社会的入院の方がほとんどでした。何かしてあげたいと思ってもできないことの方が多く、進展も見られずで…。今思うと、経験を積んで、手が慣れてきて、ぬるま湯に浸かっていた感じだったのだと思います。そんななか、少し自分の位置をずらしたいな、と思うようになりました。

―少し目線を変えて、ということでしょうか?

そうですね。そんな感じです。そう強く思うようになったのには、あるきっかけがありまして…。

認知症と断定されその病院に入院していた女性の方がいらして、その方は「私はしっかりしているからここに来るはずじゃなかった。だからトイレはポータブルではなく一緒に連れて行って」と言うんです。でも看護師さんの申し送りには「認知症で暴れてしまう。ポータブルトイレで」とあります。でも、本人がそう言うので、何度か夜勤の際にトイレに連れて行ってあげたりしました。「家に電話したい」と言うので、できるように取りはかったり。結局その方はご家族に電話されて、後日退院されたんですよ。その後自宅でしっかり生活をされているというのを聞いて、あ~良かったなって。

どんな事情で入院されたかは分かりませんが、こういう方が他にもいらっしゃって、これが氷山の一角だとしたら、とても辛いなぁと。それぞれに心があるのだから、それを繋げていかなければいけない、そんな気持ちに駆られました。それで在宅に関わろうと思った時にデイを見かけて…。

―たまたまデイの募集が?

いえ。病院を辞めたのを機に引っ越しをしたのですが、家の周りを自転車でさーと見て周った時に、目に留まったのがそのデイです(笑)。飛び込みで「働かせてください」と施設長に。でも、スタッフは足りているから車の運転員でと言われ、最初はデイの送迎をしていました。

―なんという行動力! でも、それまでの経験があるから運転員だけというわけにはいかないのでは(笑)?

そうですね(苦笑)。お風呂介助に人が足りないと聞けば「じゃあ私がやります」と言って手伝っているうちに、スタッフとしても働いていました。

―病院との違いを何か感じたりは?

みんなで何か作ったり、楽しみ方が全然違いましたね。そのデイは、半年に一度バスハイクをして桜を見に行ったり、食べ放題に出掛けたり。企画をしっかり立ててみんなで進めていくやり方がとても良かったです。病院にはなかった目線というか。

―そこではどれぐらい?

3年弱働きました。保険制度が変わるH12年のタイミングで介護福祉士の資格をとり、大手の訪問介護へ転職しました。

「有限会社はぁもにぃ」について

私達の立ち位置は、たくさんある輪のなかの1つだと思っています。

―デイから訪問へ。どんな想いをもって転職を?

デイを利用している方のご自宅でお仕事ができるならやってみたい、そして今まではいちヘルパーとして、「こうしてほしい」と会社や上司に声をあげる側でしたが、今度はヘルパーたちの意見や声をすくい取って、仕事が円滑にまわるよう、立ち回る側になりたいという想いがありました。ですので、最初からサ責として応募を。

―転職する目的がとても明確ですね。芯が通っていらっしゃるというか。

行動に移す際は、必ず自分なりの根拠があるんですよ。

―ところで、野尻さんはここ「はぁもにぃ」の立ち上げメンバーでもいらっしゃいますよね。

はい。そもそも、デイから訪問に転職する前、有志を募って訪問を立ち上げることを前提で動いていました。デイで知り合ったケアマネと夫と私の3人で。でも介護保険がはじまった当初、どこも混乱状態で、ひとまず立ち上げまで各自準備しつつ、それまで別々で頑張ろうかという話に。であれば『私も他の訪問事業所を見ておこう、まずは下積みだ!』という感じで就職したんですね。

―それで、訪問でサ責として働きはじめたわけですね?

はい。でも、どの事業所も一斉の走り出しで現場はゴタついていましたよね。私が働くところの環境もなかなか整わないまま1年が過ぎ…。その間、仲間がH13年に『はぁもにぃ』を一足先に立ち上げ、折を見てそこに移ったという経緯です。

―『はぁもにぃ』の立ち上げのコンセプトは?

『人との関わりの中で、互いの心が響きあうと心地よく暮らせます。1人では作れない和音(はぁもにぃ)。あたなをとりまく人々と共に心地よい暮らしを応援します。』が、『はぁもにぃ』の目指すべき介護です。

1対1のサービスとはいえ、決して1人ではなく、多くの方と関わりながら作っていく事業所であり、私達の立ち位置はたくさんある輪のなかの1つ、そんな意味を込めています。設立して15年ですが、何かあるたびにこの考えに立ち戻るようにしています。今も昔も変わらない私の根幹です。

サ責として、はぁもにぃの今後を想って

お互いに妥協せず話し合いながら進めていくことでいい仕事ができるのだと思います。

―『はぁもにぃ』は今年で15周年ということですが、今までどんな変化がありましたか?

最初の5年は、サ責の仕事が訪問業務に追い付かず必死。そして次の5年はご利用者さんの記録がやっと整理でき、働く環境がようやく整ってきたかなという段階。そして、もう5年でサ責業務を一生懸命こなしていたらあっという間に今、という感じです。

―サ責として、スタッフ指導の面で何か心がけていることはありますか?

確実なレスポンスをすることです。例えば、「ご利用者さんの体調が悪いように見えた」という報告があれば、翌日そのスタッフに「通院したら脱水症状だったので、薬をもらって今は落ち着いていますよ」と伝えます。同時に他のスタッフにも。報告に対して、「分かりました」だけではなく、1人1人が納得できる返答を心がけています。また、スタッフ個々の癖みたいなものを把握して、その人に合った伝え方をするようにしていますね。

―スタッフのことをよく理解していないとできないことですよね。

うちの事業所が小規模だからこそできているのだと思いますし、逆に言えば、そこを理解してくれるメンバーが残って続けてくれています。

―長く働かれている方も多いみたいですが…。

そうですね。10年選手の方も。でもこの業界、長い人も新人もご利用者さんのお宅に行けば、皆同じ目線で働くことに変わりはありません。ご利用者さんに対して「こうしたい、ああしたい」という計画があるなかで、たまたまが手がついていかないというだけで。そこをフォローできる先輩でいてほしですし、そうであるようスタッフに指導しています。今は、フォローし合えるのが自然とできる職場だと思うので、みんなで和気あいあいとやっていますよ。

―では、ご利用者さんと接する時に心がけていることは?

近すぎない距離感です。

「わ~Aさん、これこれ。」ではなくて、「Aさんこんにちは。」ということなのですが。私達はボランティアでもなく、隣のおばさんでもありません。介護保険内で来ているヘルパーであり、あくまでも仕事としてサービス提供していることを時にきちんと伝えなければいけない場面があります。その時、適度な距離感がないと対応しずらくなってしまうんですよね。

また、私としては、「ヘルパーさんの方が良くしてくれる」とご利用者さんに言っていただく方が嬉しいです。「やっぱり野尻さんだよね」と言われるのは良くない。その時は、近すぎたのかな、ともう一度距離感を改めます。

―心地よい距離感というのはそれぞれに違うので見極めも大事ですね。

傾向と対策ではないですけれど、常に調整です。

―今後『はぁもにぃ』をどんな事業所にしていきたいですか?

15年経って、ここまでできたから、はい次! ではなくて、まずは現状維持。この地域にしっかり根付いてやっていくのが第一です。昨年(2015年)事務所を移転して心機一転。前は2F だったのが1F に、スペースも広くなり、空きスペースができたので、そこに介護ベッドを入れ、実習や勉強会もまめにしていきたいなと。
あとは、常にケアマネに相談しつつ、サービス提供を見直していきたいです。ご利用者さんそれぞれに様々な方法があって、できることは何でもトライするつもりで。そうすることで、少しでもその方のプラスになればいいですよね。また、ただサービスを増やせばいいというわけでもなく、時に減らす必要性もあります。どんな場面でもケアマネやスタッフにきちんと相談して説明して、お互い妥協せず話し合いながら進めていけば、本当にいい仕事ができるのかなと感じています

編集後記

働く現場、現場で何かを吸収し、疑問に思ったことや、自分がやってみたいと思ったことを、次のステップアップの場でしっかり昇華してきた方なのだろう、と感じた今回の取材。とても力強い信念を持って介護という仕事に向き合っていらっしゃる野尻さんですが、その大胆な行動や想いの強さとは裏腹に、物腰柔らかく、とてもしなやかな印象も持ち合わせた方でした。また、立ち上げメンバーの1人である旦那さまとは、毎日同じ職場で働いているわけですが、お互いを尊重し合い、とても仲が良さそうで、羨ましい限りです。こんな夫婦の形もあるのだな~と別の意味でも勉強になりました。新オフィスでの新たなスタート、20周年を迎える時にはどんな風に変化しているのでしょうか?

今回、取材にご協力いただいた野尻美加代さんをはじめ、『はぁもにぃ』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。

「へるぱ!」運営委員会一同

事業所紹介

◆有限会社はぁもにぃ

〒223-0056
神奈川県横浜市港北区新吉田町3256-14

TEL.045-548-8090
FAX.045-548-8109
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事業所紹介

野尻 美加代さん

有限会社はぁもにぃ
サービス提供責任者

勤務年数:約15年/介護歴:約20年

趣味

ドライブ&ショッピング

ドライブ好きな夫と一緒に遠方にまで足を運ぶことも多いです。この間は、「ネットで見かけたこれを買いに行きたい」と言う夫と群馬まで。私は物選びに対するそこまでの情熱はないですが(笑)、その土地の美味しいものを食べて、一緒にウィンドウショッピングをして、と楽しんでいます。

 

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