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第2回 介護給付費分科会における介護人材確保対策②       2017/11/20

今回のテーマは前回の介護給付費分科会の「介護人材確保」の議論の続きとさせていただきます。

介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)については、当該区分の取得率や報酬体系の簡素化の観点を踏まえ、そのあり方についてどのように考えるかが論じられました。減算された単位数とはいえ、要件の一部を満たさない事業者への加算であり、取得率も0.8%と極めて少なく、制度の簡素化という観点からも廃止はやむを得ないと私も思います。

また、介護職員処遇改善加算の対象職員・費用の範囲拡大についても論じられました。

平成28年12月の給付費分科会においても、対象職員の拡大については「介護事業所で働く様々な職種の職員のチームワークの向上に資する」との意見があった一方で、「介護職員のみに限定した処遇改善を実現すべき」との意見もありました。

また、対象費用の拡大については、「介護職員の職場定着を図るため、賃金改善以外の、仕事と子育ての両立支援や教育・研修・職場環境の改善へ活用できることとすることが必要である」との意見があった一方で、「現在でも必ずしも賃金改善に直接結びついていない面がある」、「賃金改善の効果が弱まりかねない」との意見もあったことから、「慎重な対応が必要である」とまとめられております。

介護職員がキャリアアップしていく中で生活相談員やケアマネジャー専従になった場合、この加算がつかなくなり、逆に給与が下がるという事態も考えられ、確かに悩ましい部分はあります。私はこの部分関しては、現行の制度では多少給料が下がっても、資格手当や職種手当でカバーして、納得感を高めるのが最良だという考え方です。(もちろん、顧問先の介護経営者様との打ち合わせの上で決めることになりますし、場合によっては、生活相談員やケアマネジャーには処遇改善加算以上の資格手当や職種手当を出す介護事業者様もいらっしゃると思います。)

次に「介護ロボット」についてですが、平成28年12月9日の介護保険部会において、「介護ロボットやICT化に関する実証事業の成果を十分に踏まえた上で、ロボット・ICT・センサーを活用している事業所に対する、介護報酬や人員・設備基準の見直し等を平成30年度介護報酬改定の際に検討することが適当である」との内容が盛り込まれています。

また、厚生労働省と経済産業省が連携して、数年前から重点的に開発等の支援を行う分野が定められ(移乗介助、移動支援、排泄支援、認知症の方の見守り、入浴支援)、平成25年度以降、延べ133件の開発支援、並びに約5,000の導入支援等の実績を積み重ねてきました。また、更なる効果検証を行うべく、40の介護施設等の協力の下、見守り及び移乗介助の分野において実証事業が展開されたところです(実証事業は平成29年8月で終了)。

この実証事業の評価というものが公表されることによって議論が大きく変わってくると思いますが、平成30年8月の介護給付費分科会では介護ロボットに対してあくまで一部ですが、以下のような意見が出ました。

  • ・「介護ロボットを活用する際に欠かせないのは、介護サービスを利用する側の立場からの評価である。ロボット等を活用することが利用者にとってどのようなメリットがあるのかということも、しっかり打ち出す必要がある。介護負担の軽減を否定するつもりは全くないが、ロボットの活用や評価が人材確保対策に偏ることがないようにしていただきたい」
  • ・「ロボットを導入したからといって、人員が減らせるのかというと、決してそうではないと感じている。ロボット導入により軽減される業務の反面、新たに発生する安全管理や業務フローの管理の負担もあるので、それらのことを検証できるデータを提示していただいた上で、人員基準をどうするのかという検討はあるのかと思うが、拙速な判断にならないようにしていだきたい」
  • ・「身体的な介護を代替えするような大がかりなロボットもあるが、例えば見守りとか、そういった部分でセンサー等を活用した代替ということもポイントだと思う。声かけだったりとか、温度が上がったらエアコンのスイッチが入るとか、そういった環境因子にアジャストしていくようなこともポイントになるのではないか。そういったことを駆使しながら、人材の効率化とか在宅生活の支援ということを、効果と安全性をあわせて検証していくことも重要ではないか」等です。

私自身、期待という部分も含めて多少前のめりになっておりましたが、介護給付費分科会では、実証事業の結果も示されていない状況も含めて、そこまでの雰囲気にならなかったようです。とはいえ、どの提言も至極ごもっともと言える尊い議論であり、私自身も大変勉強になりました。

結局のところ、まだまだ検証段階が多いので、報酬上の評価や配置基準の緩和については、時期尚早ではないかと思います。とはいえ、「開発が必要なことは明らかなので、基金等を使った開発ができるように制度を作っていくことが必要ではないか」などの意見もありました。また、平成29年度においても、介護ロボット開発等加速化事業には3.0億円の予算も計上されており、時期の問題はあるにせよ、介護ロボットの導入は業界を挙げて取り組むべきテーマではないかと個人的には感じています。

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コラムニスト紹介

吉澤 努

よしざわ社労士・社会福祉士事務所、特定社会保険労務士

プロフィール

社会保険労務士として独立するまでに、介護老人保健施設、通所リハビリ、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター等を経営する医療法人に約12年在籍し、法人全体の人事・労務管理に携わる。

平成26年に現事務所を開業。現場を直接見てきたという経験に、労働法・社会保険制度・助成金制度の専門家である社会保険労務士という法的な観点をミックスさせた「実践型介護特化社会保険労務士」として活動中。

<保有資格等>
特定社会保険労務士/社会福祉士/第1種衛生管理者/八王子市社会福祉審議会 高齢者福祉分科会委員/東京都介護労働安定センター 雇用管理アドバイザー/医療福祉接遇マナーインストラクター

著書・出版

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