へるぱ!

今なら語れる「障害を越えて」

第15回 自立生活への一歩は…(2)

今回も前回に引き続き、私の実体験に基づいた【公共施設と交通機関について】をお話ししたいと思います。

【公共施設と交通機関について】
① まずは、公道を外歩きする手順です。自宅を中心に徐々に歩き始め、その距離を伸ばします。近くに公園があれば、そこで歩く距離を伸ばすのもよいでしょう。

② 散歩コースを決めて繰り返し歩くと、コース環境を理解できるため、安全で上達も早いです。また、散歩コースでよく出会う人と会話することもお勧めです。この時大切なことは、自分を名乗り、かつ相手の名前も教えてもらうこと。お互いに名前が分かることで、次回からの会話も話題が豊富になります。例えば、相手が犬の散歩中であれば、犬の名前を覚え呼びかけることで関係性が和みます。こうしたコミュニケーションから、障害者に関連する市町村の連絡会合など、有益な情報を教えてもらうこともあります。

③ 市役所・公民館・図書館・美術館・博物館など公共施設は、受付で自分が視覚障害者であることを伝え、目的に合った案内をお願いしましょう。普段は自立を目的に行動しますが、公共的な施設では手助けを依頼した方がいいと思います。美術館・博物館では、絵画や展示物の前に立つと解説してくれる「イヤホン付き音声器具」のレンタルも場所によってはあります。そうした器具を利用するのも得策です。

④ 電車の利用について。ガイドヘルパーの同行がなく1人で行動をする時は、駅員さんに目的の駅を伝え、乗り継ぎ駅での介護を依頼しましょう。手助けを受けながら、十分に安全な行動を。最近は、駅員さんだけでなく乗客の方々からも積極的に手助けの声かけをいただきます。素直に、親切を受けてくださいね。

乗車券も昔と違い、パスモやsuicaで改札を通過、最終目的駅で「身体障害者手帳」を提示すれば精算できます。以前は、券売機で乗車料金が見えないため、通行人に金額を教えてもらいましたが、カードの登場で視覚障害者にとっては本当に便利になりました。バス、地下鉄、JRなど交通機関会社により「身体障害者手帳」の提示で乗車料金の割引適用もあるので、外出には手帳の携帯を忘れないことが大切です。

今後、障害者にとって大きな施設改善を期待しているのは、「東京2020パラリンピック」です。開催までに完成予定の「バリアフリー東京」。1日の平均的な利用者数が3,000人以上の旅客施設において、100%バリアフリー化が計画されています。東海道新幹線は現在、16両編成に車椅子スペースが2台分しかありませんが、2020年までに1両に付き2台の確保を予定していることを皆さんご存知だったでしょうか? 2021年以降もバリアフリー設置の法令化が検討されているそうです。また、一見、障害者として確認できない人を対象に、希望者には「ヘルプマーク」(JIS規格にする予定)バッチの配布予定があります。昨今、ホームからの転落事故が多く発生したこともあり、東京の地下鉄では、ホームドア完全設置を2020年までに完了することを発表。完成までの期間、一般乗客の方々からの声かけが定着してきたことは大変嬉しく、今後とも宜しくお願い致します。

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コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

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