へるぱ!

今なら語れる「障害を越えて」

第13回 待つ力

このコラム連載がスタートして6年ほどが経過しました。その時々の話題を中心に書いてきましたが、世の中の移り変わりが早く、取り上げた話題を改めて読み返してみると、変化があり、我ながら驚かされます。

生活水準を高めてくれる便利グッズに電化製品がありますが、新発売のサイクルの早さにはいつも驚かされます! 多機能な製品仕様になり、1つか2つは必ず新機能が追加されている…そんな製品の初期代表作には、電子計算機があります。最近では計算する目的だけでなく、時計機能、温度・湿度の表示もプラスされています。

そして近年、最も多機能な製品の代表は携帯電話です。パーソナルコンピュータ(PC)の発売当時、一家に一台は欲しいと思っていましたが、最近発売のタブレット型携帯電話機は、1人一台のペースを軽く超えています。本体は軽く、小型化され、持ち運び自由でどこへでも携帯できる生活必需品となりました。この進化は留まることを知らず、末恐ろしいものがあります。携帯電話が新発売されるたびに機能がレベルアップされ、その説明を受けるたびに、人間能力をダメにしないか不安さえ抱くほどです。

便利であることがメリットな点に、質問・検索に対する回答のスピードアップがあります。利用者は、どの製品が検索機能に長けているかを機種選択時の一番条件とし、そのスピードに慣れてしまいます。ところが待つことに時間を要する高齢者介護をはじめ、視覚障害者などは、これまで同様、健常者と同じ早さでは動けませんし、介護サービスは質、量、スピードではないのが現状です。迷惑をかけないよう、自分なりに努力して行動していますが、焦れば焦るほど、動きは鈍くなるから大変です。

ドンドン処理速度が早くなる製品を使用しての日常生活になっていく一方で、行動が遅くなる高齢者介護ですから、介護職の方はストレスあるトラブルを抱えてはいないでしょうか? また、このギャップに解決策はあるのでしょうか??

時代についていけない人がいるこの現状を把握し、「待つ力」を養いながら、弱者がいることを忘れずに行動するのが介護福祉に携わる皆さんなのだと思います。

さて、今日もお仕事へ出かける時間がまいりました。好きな音楽CDを聞きながら、ゆっくりと、大きく深呼吸をして出かけましょう。きっと自分のペースでの良い仕事が約束されるでしょう。

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コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

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