へるぱ!

今なら語れる「障害を越えて」

第9回 視覚障害者サポーター(Supporter応援団)

 信号が赤に変わったと同時に、私の横で自転車に乗った中学生5人が止まりました。 そのうち1人が信号を無視して渡ろうとしたらしく、他が「おい! 赤だぞ!」と言葉遣い悪く注意をしています。青になるまでの待ち時間、帰宅後の遊びについて話しているようですが、内容はよく分からず、会話している言葉遣いもあまりよくありません。これが現代っ子なのか・・・と信号が青になるのを待っていました。

 信号が青になれば、おそらく彼らは黙って我先に渡るのだろう、そう思い込んでいたところ…予想ははずれ「青ですよ」と会話の中でも一番言葉遣いの悪い親分肌の中学生が声をかけてくれました。驚きましたが、「ありがとう」とお礼をして信号を渡り始めました。

 生徒4人が自転車をこいで渡りきった気配を感じた時 親分肌の一声、「ちょっと待てよっ」と小さい声で話すのが聞こえました。私が信号を渡り終えたことを確認し、「大丈夫ですね! では気をつけてください。失礼します」と言葉をかけてくれたのです。他の優しそうな4人より、その声をかけてくれた彼をずっと悪ガキ生徒、と疑っていた私。ところが実は立派な「視覚障害者サポーター」だと知りました。ごめんなさい!

 最近、視覚障害者のホーム転落事故防止のため、声かけをしてくださる「視覚障害者サポーター」が多くなり、ありがたく思っています。特に駅構内での事故防止対策として、「JR駅改札口で視覚障害者を見かけた際は、駅員が声かけを義務づけている」とのことですが、乗降客が多い駅においては、完全に実行されていないのが現状です。しかし、事故防止に駅員の皆様が一丸となって取り組んでいることは大変心強く、「視覚障害者サポーター」として大いに期待しているところです。

 先日ラジオで「視覚障害者を見かけて危険を感じた時は、危険な場所にいることを知らせる声かけをお願いします」と構内放送をする駅があると話していました。東京オリンピック・パラリンピックまでに日本国民一人一人が思いやりのある「視覚障害者サポーター」になっていることを期待します。

 昨年、徳島市内で「自動車バック時における警報音装置のスイッチが切られていたことで、盲導犬と視覚障害者が被害者になった」という事故が起こりました。その事故を受け、徳島市長は交通関係整備に努め、車両に後退や接近を知らせる警報音装置が付いている場合、「警報音装置使用義務付け」の条例を成立させました。

 また、国土交通省でも電気自動車やエコなハイブリット車に走行を知らせる警報装置の設置義務を発表。世界でも警報音の統一をはじめ、警報装置取り付けの義務化が始まっていると聞き、多種多様な「視覚障害者サポーター」に改めて心強さを感じています。不幸にして犠牲となった方々の死が無駄にならないよう、「視覚障害者サポーター」の底辺が広がることを心より願っております。

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コラムニスト紹介

山田 猛

ガイドヘルパー(視覚障害者)

プロフィール

1941年 中国・元満州国安東省生まれの引揚者。

1969年 立正大学経済学部を卒業後、運輸会社へ入社。航空貨物部門で海外宅配便と新規事業開発で書類宅配便クーリエサービス業務の立上げの責任者となる。のち、ISO品質管理室長として全国支店を飛び回り指導に励む。また会社品質向上を担当。

2000年9月 定年半年前に角膜移植手術を受けるが、移植に失敗。強度の視力障害を持つ中途失明者となる。
定年後、第二の人生設計を立てていたところに抱えた大きな障害。生きる希望をも見出せず失望の淵に立たされた時期を乗り越え、現在、同じ境遇の人たちを救うため介護福祉について勉強中。

介護を受ける立場にかかわり、介護をされる皆様に何を求め、また考えているかを視覚障害の症状、環境変化がありすべての方の問題とか解決策とはなりませんことをご理解頂き、あくまでも私個人として利用者が感じた点を記述してみたいと思います。

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