介護を受けるプロ
第27回 広くて深いケアの世界 2017/4/20
ヘルパーの仕事について書きつづってきたが、ヘルパーの仕事は、家事、身体、送迎など幅広い。近年は医療ケアまでもしなければ、介助は追いつかない状態である。
夜中に突然暑くなり、背中がかゆくなる。まつ毛が目に入ると痛くなる。我慢しようかな、頼もうかな、と今日の泊まりのヘルパーさんが誰だったかを考えてしまう。そのうち目が覚めてきてしまう。
2016年4月にイースト新書から出版された『セックスと障がい者(坂爪真吾著)』を読み、ケアの奥深さと、どこまでがケアなのかを考えさせられた。彼は男性の自慰行為もケアするべきだと語っている。これだけ聞くと目を背ける人や顔をしかめる人もいるだろう。でも、普通の男性は手が使えるので、秘密のことができる。秘密のことは決して汚くも間違ってもいない。健康な証拠なのだと思う。
私は若いとき、恋人ができてシーツを汚してしまった。それがヘルパーさんにばれて叱られた。結婚、妊娠、出産となると、もっと首をかしげるヘルパーさんたちがいた。でも、だまってシーツや下着の汚れを洗ってくださる方もいた。私がごめんなさいと謝ると「いいのよ、私も若いときいろいろありましたよ」と言ってくださったヘルパーさんがいた。心のケアからセックスのケアまでヘルパーさんが行わなければいけないのかどうかは、これから長い時間をかけて解決していかなければいけないことだろう。黙っていては何も変わらない。私たちはひげの生えた赤ちゃんではないのだ。
背中がかゆい。心が痛い。セックスをしてみたい。そういうことはみんな同じであり、ケアは必要なのだと思う。この本を読み、ぜひ深く考えてみてください。身体と心が楽に美しくなれたとき、人間は働くことができる。心が生きる。と書いてある。希望という宝物をみんな持っている。希望を叶えるためには、ヘルパーさんのあたたかな手が必要なのである。
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小山内 美智子
障害者自立生活センター 札幌いちご会 理事長
前社会福祉法人アンビシャス施設長
プロフィール
1953年生まれ。
障害者自立生活センター 札幌いちご会 理事長。前社会福祉法人アンビシャス施設長。
自身、脳性麻痺で「ケアを受けるプロ」を自認。
2008年 悪性リンパ腫を発病したが、半年の闘病生活を経て、社会復帰を果たす。
北海道大学医学部作業療法学科で教鞭をとるなど、介護教育に力を入れている。
また、著書『わたし、生きるからね』(岩波書店)などほか多数あり。