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介護から学んだこと

第18回 サービス行為ごとの区分?       2017/3/1

 上原三郎さん(81歳、仮名、男性)は妻が特養に2年前に入所して以来、ひとり暮らしです。数年前に患った膝関節症により、歩行や立ち上がりが困難な状態に。若い頃には家事手伝いをしていたようですが、現在は掃除や調理、洗濯などは不自由となり、訪問介護サービス(生活援助)を週3回利用しています。

 上原さんはその日によって体調に差があり、様子を見ながらの支援です。体調の良い日は、一緒に調理をしながら翌日に自分で調理ができるように下準備もします。買い物は定期的な配達やネットを利用。冷蔵庫にあるものを見て献立を考え、栄養バランスにも配慮していますが、いつも同じになりがちなので、できそうな献立を提案し、書いて渡します。すると後日、自分で作ってみた感想を言ってくれます。

 はじめは「できない、無理だよ」と言っていましたが、回を重ねるうちに「食べるのは楽しみのひとつだから」とテレビやネットで情報を得て、「こんなものを作ったよ、美味しかったよ」と写真を見せてくれるようになりました。体調の悪い日は、リビングの椅子に座り「今日はなんだか痛くて動けない」となります。「では、これから作りますから、アドバイスしてくださいね」と言うと、「うまそうな匂いだね」「そんなふうに切るんだ」などと、一緒に動くことはしませんが、会話や味見で調理に参加してくれます。これが上原さんへの調理サービス内容で、サービス区分は生活援助になります。

 生活援助は本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるもので、本人の代行サービスとしての位置づけになっていますが、解釈に幅がありすぎて、混乱するなか行われているのが現状です。上原さんは膝関節症で調理ができないため、生活援助で調理サービスを提供、つまり、できないことを補完しています。動ける時は、体調の観察をしながら有する能力を活用、一緒に調理をして、自分で作ったと実感できるように配慮しています。できない日は作る動作はしませんが、調理への参加はしています。

 生活全体を見ながら日常の不都合さを理解し、自立支援するという長期目標に向かってその日できることを把握・支援していますが、訪問介護計画にはそのあたりがうまく表現できていないように感じます。訪問介護計画の目標に至るまでの根拠であるアセスメントの結果から、具体的に可視化しないとサービス区分が曖昧になってしまいます。

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コラムニスト紹介

是枝 祥子

大妻女子大学 名誉教授

プロフィール

昭和39年東洋大学社会学部応用社会学科卒業後、児童相談所、更生相談所、特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、ヘルパーステーション等、数々の現場勤務を経験。

1998年より大妻女子大学人間関係学部人間福祉学科教授で同学部の学部長も務め、現在は同大学名誉教授。

介護職員の研修をはじめ、多くの介護人材育成に携わる。

著書・出版

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