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知りたい!介護サービス

第14回 訪問介護における実地指導への対応ポイント(1)

 介護保険の指定事業所への実地指導が定期的に行われるようになりました。介護保険制度の内容を知っておくことは大変重要なことです。報酬算定の誤りや法令の理解不足が、時には監査において多額の返戻に結び付いてしまうことがあるためです。そこで実地指導への対応ポイントについて、数回に分けてご紹介します。

■指導と監査の区分

 事業者などのサービスの質の確保・向上を図ることを主眼とし、計画的に実施される「指導」と、入手した情報(通報・苦情・相談等に基づく情報/介護給付費適正化システムの分析から特異傾向を示す事業者など)から、指定基準や不正請求が認められる、またはその疑いが認められる場合に機動的に実施される「監査」とは、明確に区分されています。
 「実地指導」は、指導の中の1つ(ほかに「集団指導」があります。)で、事業者の制度管理の適正化とよりよいケアの実現(健全な育成)の支援を目的としています。したがって、「実地指導」において直接的に介護報酬返還を指示することはありません。(報酬請求に誤りが確認された時は、過去に遡り自主点検のもと過誤調整により返還を行う場合はあります) しかし、著しい運営基準違反や悪質な請求が認められる場合は、監査に変更し行政対応することになります。

■実地指導にあたり、心に留め置くこと

 居宅サービス事業所への実地指導は、概ね3年~4年に1回の定期的なものです。そして、「実地指導」についての実施通知は、東京では検査日の概ね10日~2週間前ですが、検査日の前月はじめに通知するところもあれば、2カ月以上も前に通知するところもあるといった具合で、行政ごとに様々です。都市部に比べ、地方の方が、事業所が実施通知を受けてから検査日までの間が長いようです。
 査日までの間が短いところは、事業所の運営状況を素のまま(修正を加えられ整形される前の姿)を検査し、日々行われている業務について、しっかりと指導していきたいという意向が感じられ、本来はそうあるべきだと思います。然るに事業所は、訪問介護事業であれば、管理業務に携わる管理者やサービス提供責任者を中心に、法令に関する理解度を高め、提供しているサービスについて運営面からも報酬請求面からも適正であることへの確信がもてるようにしておくことが、何より大切になります。
 しかし介護現場では、トラブルや苦情、利用者等からの急な要請、予定していなかったヘルパー交代・代行などその日その場の対処に追われ、法令についての理解を深める機会が不足していることも事実です。そんな状況から、適切な業務への正しい判断基準が身に付いていないままに、日常業務はもちろんのこと、実地指導にも臨んでいるサービス提供責任者が少ないように思えます。そこで、実地指導の具体的な対応ポイントをお話する前に、そのような事業所(サービス提供責任者等)への警鐘事項として、次のような“心に留め置くこと”が考えられます。

①利用者が満足するサービスの提供だけをもって、居宅サービス費を算定するための必要十分条件とはならないこと。
②ケアマネのケアプランは、訪問介護費算定を保障したものではないこと。
③指導監査も法令遵守:行政も事業者同様に法令に基づいた対応であること。

『次回は、サービス提供責任者が”心に留め置くこと”とその注意ポイントについてご紹介します。』

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コラムニスト紹介

堀口 直孝

シルバーケア・サービス豊住 顧問
経営コンサルタント

プロフィール

看護婦家政婦紹介所の上部団体である(社)日本臨床看護家政協会の管理者として家政婦の職場確保を支援するための事業の開発推進にあたる。

平成6年 健康保険法の改正により病院の付き添い介護が廃止されたため、家政婦たちの職場を在宅へシフトするためのモデル事業の実施会社を同協会内に設立。同社において在宅介護サービスを立ち上げ、東京都11区よりホームヘルプ事業を受託、介護保険制度施行後、指定事業者として管理、運営を行う。

平成14年 (株)ふれんどりーホームサービスを設立し、東京都千代田区を中心に訪問介護、居宅介護支援事業を実施するかたわら、同事業のコンサルタントも行う。平成30年より現職。

著書・出版

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