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第17回 訪問介護における実地指導への対応ポイント(4)       2015/7/14

実践的な検証ポイント!!
~ 介護報酬算定基準等に関すること ~

 第16回に引き続いて、実地指導への対応ポイントについて掲載いたしました。そして今回は介護報酬算定に関する具体的な検証ポイントについてです。報酬返還にも繋がりかねない大切な点です。法令に照らしながらしっかりと、そして正確に報酬算定に関する基準や留意事項を理解しておく必要があります。

検証事項
介護報酬算定基準に関すること
1.指定基準(人員基準・設備基準・運営基準)との関係について
 所定の介護報酬を算定するには、前提として人員基準、設備基準が満たされ、そして運営基準に沿って事業が適切に運営されていること
 介護報酬(訪問介護費)とは、指定訪問介護が適切に提供された場合に、その対価として支払われるサービス費用であることから、指定基準を満たしていない事業所が提供するサービスは指定訪問介護とならず、介護報酬の支払の対象とはならない
 例えば、
→もし、サービス提供責任者の配置基準を満たしていなかったら、満たすことができなくなった時点に遡り介護報酬を返還することになる
→訪問介護計画が作成されてなかったりしたときは、当該事例の介護報酬について返還を求められてもしかたないことになる
2.介護報酬算定基準における検証ポイント
① 所要時間について
■ 介護計画に位置づけた内容の指定訪問介護を提供した場合、実際に提供にかかった時間ではなく、介護計画に明記された所要時間にて所定単位数を算定していること
■ そして、その所要時間は適切なもの(標準的な時間)となっていること
※ 個別行為の所要時間を示し、積算根拠が介護計画に明らかにされてこと
■ 前回提供して概ね2時間未満の間隔で指定訪問介護行われた場合には、それぞれの所要時間を合算すること
■ 主として単なる安否確認や健康チェックで、それに伴い若干の身体介護や生活援助を行ったような場合は、訪問介護費は算定できない
■ 指定訪問介護を提供するために利用者宅に向かう途中、店舗に立寄り買い物をする生活援助を行ったときの訪問介護の所要時間は、店舗で買い物に要する標準的な時間と居宅での訪問介護に要する標準的な時間を合算した時間とする
※ 店舗から利用者宅までの移動時間は、所要時間には含まない
■利用者が訪問時不在などで訪問介護開始時間が遅れ、結果、介護計画に位置づけられた訪問介護の一部を中止したような場合は、提供を行っていない部分は(所要時間に含まず)報酬算定できない
※ 提供を行っていない部分も含め、プランどおりの内容での報酬請求を行なっていないか
② 加算報酬と減算報酬について
■ 適切な取扱いが行われていること
■ 必要な事務処理が行われていること
※ 加算要件を満たすことを証す記録・減算要件の適用状況を証す記録や書類の作成できているか
■ 必要な事務手続が行なわれていること
※ 加算減算報酬は利用料に関わる重要事項であることから、利用者へ事前に加算減算内容や趣旨について説明し同意を得ているか
※ 介護報酬改定などにより、介護報酬の単位数が変わったり新たな加算報酬等が設定されたりした場合に、重要事項説明書や運営規程などの書類変更ができているか(特定事業所加算を取得した場合は変更届の提出も含む)

≪加算報酬≫■ 早朝・夜間・深夜の加算
※ サービス開始時間が加算となる時間帯ある場合に算定するが、加算対象の時間帯でのサービス提供時間が全体の割合のごくわずかである場合は、当該加算は算定されない
■ 特定事業所加算
※ 所定要件が満たせなくなった場合は速やかに必要な届出を行い、当該加算算定は行なわない(行った場合は不正請求となる)
※ 当該加算の算定要件は複数にわたり、特に厳しく検証される
■ 初回加算
■ 緊急時訪問介護加算
※ 同月内に同一事由で頻繁に当該加算事例が発生しているような場合は、居宅サービス計画の変更を視野に見直し検証が必要となる(次月も同一事由での当該加算の算定が繰り返されていないか)
※ 訪問介護員訪問時における緊急対応等は、当該加算対象とはならない
■ 生活機能向上連携加算
■ 介護職員処遇改善加算

≪減算報酬≫■ 2級訪問介護員のサービス提供責任者配置の減算
※ 1日でも配置した月があれば、その翌月に提供された全ての指定訪問介護に適用(全ての訪問介護費が減算対象)される/平成29年度末まで経過措置がある
■ 集合住宅に居住する利用者へのサービス提供に係る減算
※ 利用者数は1月(暦月)の平均値で判定する
※ 当該建築物の管理運営法人が異なっている場合も当該減算の対象となる
③ 加算減算報酬以外で算定要件が特に必要とされるケースについて
算定要件が満たされ、適切な取扱いができているか
■ 生活援助
※ 算定要件に照らし、提供が可能か適切なアセスメントが必要とされる
※ 保険利用の取扱いにおいて保険者ごとで違いが大きいケースなので、保険者ごとの情報をしっかり収集して対応すること
■ 2人介助
※ 算定要件に照らし、提供が可能か適切なアセスメントが必要とされる
■ (頻回の訪問による)20分未満の身体介護
※ 頻回の訪問を含む20分未満の身体介護の訪問介護費は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護費(Ⅰ)(訪問看護サービスを行わない場合)を上限とする
■ たん吸引等の実施
※報酬上の区分は身体介護にて取り扱う(登録基準を満たした事業者に所属する介護福祉士及び一定の研修を受けた介護職員等が、一定の条件の下に実施されることが前提)
④ 訪問介護計画並びにサービス提供記録と訪問介護費の算定について

≪訪問介護計画≫
■ 適切なアセスメントによる判断により、必要なサービスや必要な提供量が適切に訪問介護計画に位置付けていること
※ 特に“生活援助”“2人介助”“通院介助(院内介助)”などについて、しっかりしたアセスメントができているか
■ 居宅サービス計画の内容に沿った訪問介護計画が作成され、当該訪問介護計画に沿った指定訪問介護が提供されていること
※ 訪問介護計画に位置付けていないサービスを行ない訪問介護費として請求していないか
※ サービス提供実績ありきで後付けによる報酬請求となっていないか

≪サービス提供記録≫
■ 提供した具体的なサービスの内容等の記載がされていること
※ サービス提供の記録漏れがないか
※ 訪問介護計画と違うサービス内容(提供日時も含め)となっていないか
3.ケース選定されやすい事例
■ 加算・減算の内容
■ 夫婦プランで訪問介護を利用しているケース
■ (同居親族等のいる)生活援助の利用
■ 2人介助
■ 通院介助
■ 以前に比べ(指導時の)サービス量に大きな差がみられる事例 「身体1→身体3」
■ 提供量の多い(長い時間の)身体介護 「身体5など」

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コラムニスト紹介

堀口 直孝

シルバーケア・サービス豊住 顧問
経営コンサルタント

プロフィール

看護婦家政婦紹介所の上部団体である(社)日本臨床看護家政協会の管理者として家政婦の職場確保を支援するための事業の開発推進にあたる。

平成6年 健康保険法の改正により病院の付き添い介護が廃止されたため、家政婦たちの職場を在宅へシフトするためのモデル事業の実施会社を同協会内に設立。同社において在宅介護サービスを立ち上げ、東京都11区よりホームヘルプ事業を受託、介護保険制度施行後、指定事業者として管理、運営を行う。

平成14年 (株)ふれんどりーホームサービスを設立し、東京都千代田区を中心に訪問介護、居宅介護支援事業を実施するかたわら、同事業のコンサルタントも行う。平成30年より現職。

著書・出版

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