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知りたい!介護サービス

第20回 平成30年度の見直し改定の内容から社員研修などを通してしっかりと対応できるようにしておきたいこと ①       2018/6/5

 平成30年度の改定は、「団塊世代が75歳以上となる2025年に向けて、国民1人ひとりが状態に応じた適切なサービスを受けられるよう、質が高く効率的な介護の提供体制の整備を推進」していくことが掲げられています。その中で訪問介護サービスにおいては、「自立支援」「重度化防止」に向けた対応を強く求められています。
 訪問介護員としての専門性を再認識し、社内外の研修などを通して事業所全体(管理者やサービス提供責任者も含め)で「自立支援」「重度化防止」に関する理解を深め、次の「自立生活支援・重度化防止見守り的援助」についてしっかりと対応できるようになることが大切なことになります。

「自立生活支援のための見守り的援助」の明確化

 生活援助のうち、訪問介護員が代行するのではなく、安全を確保しつつ常時介助できる状態で見守りしながら行う「自立生活支援のための見守り的援助(見直しで、“自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助”となる。)は、利用者の自立支援の機能を高める観点から身体介護に該当します。
 しかし、「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」が訪問介護に従事する者(特にサービス提供責任者)や介護支援専門員等に十分な周知、理解ができているとは言えないことから、訪問介護におけるサービス行為ごとの区分及び個々のサービス行為の一連の行為の流れを例示した次の通知において、当該援助の事例を多く示すことで自立支援・重度化防止に資する援助ついての理解を深めてもらうとともに、このサービス区分が身体介護に該当することを明確にしました。

訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について

(平成12年3月17日 老計第10号 厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長通知:該当部分のみ抜粋)

※今回、見直し修正された部分は、赤い字で表示しています。

 身体介護とは、①利用者の身体に直接接触して行う介助サービス(そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)、②利用者のADL・IADL・QOLや意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス、③その他専門的知識・技術(介護を要する状態となった要因である心身の障害や疾病等に伴って必要となる特段の専門的配慮)をもって行う利用者の日常生活上・社会生活上のためのサービスをいう。(仮に、介護等を要する状態が解消されたならば不要※となる行為であるということができる。)

※例えば入浴や整容などの行為そのものは、たとえ介護を要する状態等が解消されても日常生活上必要な行為であるが、要介護状態が解消された場合、これらを「介助」する行為は不要となる。同様に、「特段の専門的配慮をもって行う調理」についても、調理そのものは必要な行為であるが、この場合も要介護状態が解消されたならば、流動食等の「特段の専門的配慮」は不要となる。

1-6 自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助(自立支援、ADL・IADL・QOL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)

  • ❖ベッド上からポータブルトイレ等(いす)へ利用者が移乗する際に、転倒等の防止のため付き添い、必要に応じて介助を行う。
  • ❖認知症等の高齢者がリハビリパンツやパット交換を見守り・声かけを行うことにより、一人で出来るだけ交換し後始末が出来るように支援する。
  • ❖認知症等の高齢者に対して、ヘルパーが声かけと誘導で食事・水分摂取を支援する。
  • ❖入浴、更衣等の見守り(必要に応じて行う介助、転倒予防のための声かけ、気分の確認などを含む)
  • ❖移動時、転倒しないように側について歩く(介護は必要時だけで、事故がないように常に見守る)
  • ❖ベッドの出入り時など自立を促すための声かけ(声かけや見守り中心で必要な時だけ介助)
  • ❖本人が自ら適切な服薬ができるよう、服薬時において、直接介助は行わずに、側で見守り、服薬を促す。
  • ❖利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う掃除、整理整頓(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)
  • ❖ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別をしてゴミ出しのルールを理解してもらう又は思い出してもらうよう援助
  • ❖認知症の高齢者の方と一緒に冷蔵庫のなかの整理等を行うことにより、生活歴の喚起を促す。
  • ❖洗濯物を一緒に干したりたたんだりすることにより自立支援を促すとともに、転倒予防等のための見守り・声かけを行う。
  • ❖利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行うベッドでのシーツ交換、布団カバーの交換等
  • ❖利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う衣類の整理・被服の補修
  • ❖利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う調理、配膳、後片付け(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)
  • ❖車イスでの移動介助を行って店に行き、本人が自ら品物を選べるよう援助
  • ❖上記のほか、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うもの等であって、利用者と訪問介護員等がともに日常生活に関する動作を行うことが、ADL・IADL・QOL向上の観点から、利用者の自立支援・重度化防止に資するものとしてケアプランに位置付けられたもの

☞ 【当該援助を行うにあたって】

✐ 専門的な援助の“身体介護”であるという認識をしっかり持つこと

「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」は家事代行サービスとは異なり身体介護サービスであることをしっかりと理解すること

✐ 対応ポイント

<気づき・洞察・工夫>

  • ◎ “できること”と“できないこと(「していないこと※」ではない)” をしっかりと把握(気づき)・情報収集する
  • ※[していないことの例]
  • (特に、男の方が)家事一切をずっと人(奥さん)任せで、したことがないのでできないと決めつけているようなこと
  • ◎自分でできる方法を見つける(探す)
  • ◎工夫してできる環境を見つける(探す)
  • ◎リスク管理(ケガ・事故の予防・予測)の観点から環境整備をする

<介護職としての心構え>

  • ◎結果を急ぐような無理な対応はしない
  • ◎利用者の心身状況や個別性などを十分踏まえ、アプローチ(誘導)し支援する
  • ◎疲労の状況やサービス提供中の身体状況(体調の変化)などを確認しながら支援を進める
  • ◎できることを利用者に感じ(体験)てもらう
  • ◎体験の数を増やせるようにする

✐ より効果的な支援をするための(サービス開始後の)対応

  • ◎利用者の身体状況に変化がみられるときは、サービス提供責任者に随時報告する
  • ◎目標の達成度の様子や利用者や家族からのサービスへの声(満足度や不満等)は、しっかりと報告し事業所に届ける
  • ◎報告内容を踏まえ、サービス提供責任者が担当ケアマネジャーと連携しながら、必要に応じて介護計画や支援方法・内容の見直しを行う
  • ◎支援方法に不安があるなどの場合は、事業所に相談して、助言や指導を仰ぐ

 財政の逼迫から、いつも社会保障費の抑制を求める声があがります。平成30年度の介護保険制度の見直し審議においても“軽度者への生活援助外し”等のサービス抑制が議論にあがっていました。
 今回は生活援助等の取扱いについて大きな見直しはありませんでしたが、しかし、未だ継続審議事項となっていて、今後サービス抑制が予測される中で、特に、家事代行的な生活援助の介護保険利用は、これからはかなり厳しい方向にあると考えられます。
 訪問介護事業者としては、この“自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助”にしっかりと対応できるかどうかが、今後生き残っていくためのバロメーターの1つとなりそうです。

✐ 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会が実施する研修セミナーでは、指摘事例も取りあげながら詳細に解説しております。

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コラムニスト紹介

堀口 直孝

シルバーケア・サービス豊住 顧問
経営コンサルタント

プロフィール

看護婦家政婦紹介所の上部団体である(社)日本臨床看護家政協会の管理者として家政婦の職場確保を支援するための事業の開発推進にあたる。

平成6年 健康保険法の改正により病院の付き添い介護が廃止されたため、家政婦たちの職場を在宅へシフトするためのモデル事業の実施会社を同協会内に設立。同社において在宅介護サービスを立ち上げ、東京都11区よりホームヘルプ事業を受託、介護保険制度施行後、指定事業者として管理、運営を行う。

平成14年 (株)ふれんどりーホームサービスを設立し、東京都千代田区を中心に訪問介護、居宅介護支援事業を実施するかたわら、同事業のコンサルタントも行う。平成30年より現職。

著書・出版

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