介護職が抱える問題
若い子の居場所がなくなると感じる瞬間があります。
事業所横にある台所付きスペース。打ち合わせや介護技術&新人研修、交流会などに使われる。
―外崎さんの事業所では、ヘルパーさんが200人ほどいらっしゃるとのことで、人手不足が騒がれる介護業界のなかでは、人員の多い方だと感じましたが、その点どうですか?
うちの事業所は重度訪問介護がメイン事業なので、困難事例も多く、実はこれでも足りないぐらいなんです。
ヘルパーの新人には、ご利用者さん宅で食事を作ること想定した料理研修なども実施。
―というと実際に稼働している人はもっと少ない?
そうですね。実稼働しているのはその人数の1/3もいないぐらいでしょうか。それにアルバイトの場合、3年以内に辞めてしまう方がほとんどです。もう少し定着してほしいとは思うんですけれど、なかなか難しい問題です。
ヨガマットを常備。これを敷いてみんなでストレッチしたり、マッサージをし合うことも。
―辞めてしまう人が多いのは何が原因だと思いますか?
一つは、介護が人材不足の業界と分かっていて、いつでも働ける最終手段の場所として捉えている人が多いことでしょうか。腰掛け程度の気持ちだったり、お金稼ぎの手段として選んでいる人も少なくありません。あとはセクハラ問題もありますね。
ケアの参考になる、家事や料理の本も置かれている。
―セクハラですか!
介護は女性が多い職場。特に若いヘルパーに対して、水商売との見境がつかない感覚で、セクハラまがいの要求をしてくるご利用者さんもなかにはいらっしゃいます。自分であれば、今までの経験値からうまく受け流せても、この職業に就いたばかりの人だと、うまく対応できず、受けるショックも大きい。そういうことがあって、辞めたくなる気持ちも分かるんですよね。介護職に若い子が必要だって言われる反面、若い子の居場所がなくなる時があると実感するのはそういう瞬間でもあります。私としては、そうした事態が起きないように、最善の注意を図るのはもちろん、起きてしまった時のフォローは徹底していきたいなと思います。
―なるほど。外崎さんの事業所に限らず、離職などは介護職全体が抱える問題でもあるわけですものね。では、今後どうしていけばこうした問題が改善していくと思いますか?
まずは、自分の個性とうまく合致するご利用者さんと出会った時には、本当に楽しい職場なんだということを伝えていきたいです。あと先にも話したように、介護はそのご利用者さんにとって「自分しかダメ」なので、そこに「やりがい」を持ってもらえるよう、会社として努力していくことが必要ですね。また、介護者の健康管理について、もっと突っ込んで見ていく必要もあると思います。長く働いてもらうためには、健康な体があってこそ。この仕事は肉体労働でもあるので、体のメンテナンスは必須です。ジムに通って鍛えるなど、本人の努力はもちろん、事業所側での配慮も今まで以上に必要だと感じています。