医療と福祉の接点
ほとんどの介護職員が、接点ともいえるべきケアができるようになりました。
デイサービスのなかは天井も高く上のほうには色鮮やかなステンドグラスが!
―デイサービスを5年勤められたあとは、また医療へ戻られたとか?
デイサービスで働く一方で、実は夜間で訪問のアルバイトもしていました。そこで、リウマチの方の介護を経験させていただいたりと、自分のなかで納得のいくまで介護と向き合えたので、今度は医療の現場を勉強しよう! と。医療も徐々に進歩するので、薬のことや最新の医療状況を把握しておきたいという気持ちがありましたね。例えば、ご利用者さんが飲んでいる薬にはどんな効果があって、どんな副作用があって・・・というのを知っているのと知らないのとでは、見逃してしまう変化もあると思うんですよ。
―本当にすごいバイタリティと行動力ですね。医療から介護へ、また医療に戻られて何か感じることってありましたか? 看護師と看護助手としての蒔苗さんの立場の違いについてなど・・・。
「おむつ交換」「清拭」「トイレ介助」「食事介助」「移乗」といった部分は、看護師も看護助手も対等になれる接点だと私は思っています。その接点に関しては、立場が違えど伝えるべきことは看護師の方にもきちんとお話ししていました。それ以外の部分は、自分たちの得意分野で頑張ればいい、そういうスタンスでしたね。
ところが次に総施長さんから「介護職員の指導をしてほしい」とお呼び立ていただいた国立病院(療養施設)では、その医療と介護の接点ともいえるべきケアのすべてが看護師のお仕事という環境でした。介護職員の仕事といえば、食事配膳・掃除・洗濯といった家事援助がメイン。おむつ交換すらできない状況に「これは介護じゃないぞ!!」とかなりショックを受けましたね。介護職員も『これは全て看護師の仕事』と自分から一線をひいてしまっている節があって。指導をするにも、そういう意識が根底にあると当然反発もあったり・・・。何かを変えなくちゃという気持ちがある一方で、変えていくには難しい環境であることにだいぶ思い悩みました。
ご利用者さん全員で発生の練習中。真剣にみなさんお手本を聞いています。
―何かを変えていくには、看護師、介護職員の方それぞれに理解を得られないと難しいですものね。実際、蒔苗さんは何か行動を起こされたんですか?
まずは指導をするのでなく、私自身が看護師の方のおむつ交換を手伝うことから始めました。私が手伝う姿に興味を持った介護職員がいれば、その方にイチからやり方を教えて…と、その繰り返しです。それが徐々に広がって、出来る人が増えていった感じですね。3年経ったときには、ほとんどの介護職員が接点ともいえるケアが出来るようになっていました。ただ、私のなかには、3年かけてやっとか…という思いもありまして(苦笑)。出来上がった体制を変えていくことの大変さを身に染みて感じた経験でもありました。その後、また福祉に戻り、グループホームや高齢者専用住宅、訪問介護を経て、今のグローブに来ました。
今日のメニューの一部。さといもの煮物にはよく味が染みてて美味しそう。
―グローブにはどんな経緯で?
実は、主人の転勤先に行く予定だったのですが、前職のご利用者さんを通してここの施設長さんに出会いまして。まだヘルパーステーションを立ち上げたばかりで、ヘルパーの教育をしてほしい…というお誘いを受けたんです。先ほどの病院のようにすでに体制や特徴が固まってしまった環境を変えていくのとは違い、色々教えながら自分たちでカラーをつくっていけるところは面白そうだなぁと興味を惹かれましてね。それに、常々介護現場で働く若い子達の接遇をみていて、私の中でただならぬ危機感があったんです。「自分が介護される時にこんな風にされてしまうのは困る!!」という(苦笑)。介護の知識や技術は勉強すれば誰でも身につきますが、接遇の部分はそういうわけにはいきません。その点において、私にお手伝いできることがあればとお引き受けすることにしました。